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新幹線静岡空港新駅 山梨県知事が前向き 発言詳細、経緯は

 東海道新幹線の静岡空港新駅設置について、山梨県の長崎幸太郎知事がリニア中央新幹線建設促進期成同盟会で議論する考えを示しました。「実現」を念頭に置いた前向きな姿勢です。静岡空港新駅構想のこれまでの経緯、長崎知事の発言を1ページにまとめます。

長崎知事「沿線地域全体の利益になる」と強調

 山梨県の長崎幸太郎知事は7日までに静岡新聞社のインタビューに山梨県庁で応じ、静岡空港(牧之原市)に東海道新幹線新駅を整備する静岡県の構想について、リニア中央新幹線の沿線自治体でつくる建設促進期成同盟会の中で実現に向け議論する考えを明らかにした。意見がまとまれば、国土交通省やJR東海に同盟会の総意として設置を要望する。長崎知事は静岡空港新駅について「リニアと東海道新幹線の沿線地域全体の利益になる」と強調した。

リニア建設促進期成同盟会として静岡空港新幹線新駅実現を目指す考えを示す長崎幸太郎山梨県知事=6日、山梨県庁(写真部・小糸恵介)
リニア建設促進期成同盟会として静岡空港新幹線新駅実現を目指す考えを示す長崎幸太郎山梨県知事=6日、山梨県庁(写真部・小糸恵介)
 長崎知事は8月、静岡県のリニア期成同盟会加盟を受けて開かれた臨時総会で鉄道、道路、空港など高速交通体系の研究会設立を提案し、了承された。今後、研究会の議題に静岡空港新駅を取り上げ、ほかの自治体の了承を取り付けた上で国などに提言したいとした。早ければ、10月下旬に予定される同盟会幹事会でほかの自治体に提案する。
 長距離高速移動のニーズが東海道新幹線「のぞみ」からリニアに移り、「ひかり」「こだま」の増発が想定される中、長崎知事は静岡空港新駅について「高速交通体系の整備に有効な手だてだ」と指摘。「静岡県にも他のリニア沿線自治体にも大きなメリットがある」と強調した。
 静岡県の川勝平太知事は現在、リニア工事に伴う大井川水問題の解決を優先させ、新駅設置の要望活動を停止している。長崎知事は「水問題は科学的な議論が行われている最中で、交通体系の議論とは別問題だ」との認識を示した。(政治部・尾原崇也)

静岡県にも利益必要 山梨県知事一問一答

 長崎幸太郎山梨県知事との主なやりとりは次の通り。
 ―リニアの建設促進期成同盟会で静岡空港新幹線新駅について考える理由は。
 「リニアの駅がない静岡県にとっても、大きなメリットが出るような仕組みを考えないといけない。静岡空港新駅はリニアと東海道新幹線の沿線全体の利益にもつながる」
 ―どう議論していくのか。
 「(期成同盟会の中に設立した)研究会は山梨県が事務局機能を持っているので議題に上げる。できるだけ早く提案したい」
 ―静岡県内では大井川水問題を議論しているが、関係性は。
 「空港新駅はリニア開通後の高速交通体系に関する議論であり、水問題とは全く別の話。(水問題解決と引き替えに新駅を造る)取引などあり得ない」
 ―リニアの部分開業に関する考えは。
 「まずは品川―名古屋間を、次に品川―大阪間の全線開通を目指すことが最も重要。ただ、技術的に難しい南アルプストンネル工事に時間がかかるようなら、品川―甲府間を先に動かしてはどうか。JR東海も早く資金回収ができ、山梨県にもメリットがある」
 ―川勝知事が主張する神奈川―甲府間の部分開業をどう思うか。
 「研究していないので論評は避けたい」
 ―リニアのトンネル工事で発生する残土処理に関する懸念は。
 「山梨県の残土の行き場所はだいたい決まっている。受け入れ能力をさらに広げることもできると発生場所の町長から聞いている」
 〈2022.10.08 あなたの静岡新聞〉

静岡空港新駅構想とは

 静岡空港新駅構想は、静岡県知事を会長とする静岡空港駅設置期成同盟会が1998年に組織され、要望・PR活動が本格化した。国土交通省の審議会がリニア整備による東海道新幹線の県内駅停車増や新駅設置の可能性を示したことを踏まえ、県は2014年度から6年間、調査費計4750万円を計上したが、20年度以降は計上を見送っている。JR東海は空港新駅について、適正な駅間距離がなく現在のダイヤ構成を保てなくなるなどとして「現状では不可能」との見解を示し、県と協議していない。

リニア中央新幹線計画路線と東海道新幹線路線
リニア中央新幹線計画路線と東海道新幹線路線

 ■空港新駅「リニアと水の両立が前提」 6月の静岡県議会で川勝知事答弁
 静岡空港付近への東海道新幹線新駅の設置について、川勝平太知事は実現させたいという考えは一度も変わっていないとしながら「南アルプスを守ることと、リニア整備が両立したときに可能になる」との見解を示した。山本氏への答弁。
 県は新駅の設置を目指し、2014年度から19年度まで調査費を計上していたが、リニア中央新幹線工事に伴う大井川水問題を巡るJR東海との交渉手段にしているという誤解を払拭するため、20年度からは計上を見送っている。
 川勝知事は先月死去したJR東海名誉会長の葛西敬之氏と12年に面会した際、リニアが開通すれば新幹線のダイヤが変わり、新駅設置の可能性が出てくるという話をしたというエピソードを披露。その際、葛西氏は知事に新駅整備の費用や整備期間についても言及したことを明らかにした。
 川勝知事は当時は新駅の前提がリニア開通だったとし「今はリニアだけではない。南アルプスの水を守り、かつリニアを完成させる。どう両立させるか知恵を絞ることが新駅実現の前提」と述べた。
〈2022.6.18 あなたの静岡新聞〉

静岡県「聞いていない」 担当参事「事実なら追い風」歓迎

 山梨県の長崎幸太郎知事が東海道新幹線の静岡空港新駅設置の議論をリニア中央新幹線建設促進期成同盟会の中で進める考えを静岡新聞社のインタビューで示したことについて、静岡県の羽田充明新幹線新駅担当参事は7日、「聞いていない」としつつ、「事実なら(新駅の実現に向けて)追い風になる」と歓迎する意向を示した。

 静岡県は2014年度から6年連続で計上した調査費で、静岡空港の地下を走る東海道新幹線のトンネル西側出口付近に半地下の新駅を造り、空港ターミナルビルと直結させることが技術的に可能だと確認した。羽田参事は静岡空港と東海道新幹線が接続すれば、「観光客の増加などリニアを含む沿線地域全体への経済波及効果が見込める」と期待する。
 ただ、川勝平太知事は現在、リニア中央新幹線工事に伴う大井川水問題を巡るJR東海との交渉手段に新駅設置を利用しているという誤解を払拭するため、新駅の要望活動を行っていない。本県が7月にリニアの期成同盟会に発足した後の動きのため、羽田参事は「大井川水問題への姿勢がぶれたと誤解を与えないか」と不安ものぞかせた。(政治部・尾原崇也)
〈2022.10.08 あなたの静岡新聞〉

リニア開業後、新幹線の静岡県停車増へ 岸田首相が政府関与に言及

 岸田文雄首相は7日の参院代表質問で、リニア中央新幹線開業後の東海道新幹線の静岡県内の停車本数増加に向け、政府として関与していく考えを明らかにした。「水資源や環境保全などの課題解決の取り組みを進め、早期整備を促進する」との方針も改めて強調した。自民党の牧野京夫氏(静岡選挙区)の質問に答えた。

参院本会議の代表質問で答弁する岸田首相=7日午後
参院本会議の代表質問で答弁する岸田首相=7日午後
 JR東海はリニアが東京~大阪で全線開業した場合、東海道新幹線は輸送力に余裕が生まれるとして増便などの可能性を示唆している。ただ、具体的なダイヤは示していない。
 牧野氏が「建設工事に伴うさまざまな懸念を払拭し、東海道新幹線のダイヤ充実化によって東海地域、静岡県の活性化を」と求めたのに対し、首相は静岡県の発展に資する交通利便性の向上や地域活性化のために「関係自治体、JR東海と連携して対応する」と述べた。
〈2022.10.08 あなたの静岡新聞〉
地域再生大賞