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新社長内定の浜松ホトニクス 今後の経営戦略は

 光学機器メーカーの浜松ホトニクスは、新社長に丸野正氏(61)が就任する人事を内定したと発表しました。現社長の晝馬明氏(65)は代表権を持ったまま会長に就きます。新社長の抱負や、近年の会社の状況などを1ページにまとめます。
 〈キュレーター:編集局未来戦略チーム 片瀬菜摘〉

新社長に丸野正氏 晝馬氏は会長に 代表取締役の3人体制は維持

 浜松ホトニクスは26日、晝馬明社長(65)が代表権を持ったまま会長に就き、新社長に丸野正代表取締役専務執行役員(61)が昇格する人事を内定したと発表した。12月中旬の定時株主総会などを経て正式決定する。

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丸野正氏

 丸野氏は1983年に入社し、システム設計部長などを経て2019年に常務取締役、21年に代表取締役専務執行役員に就いた。
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晝馬明氏

 晝馬氏は1984年入社で、2009年に父輝夫氏から社長を引き継いだ。光産業創成大学院大理事長、光科学技術研究振興財団理事長などを務め、光産業の発展に尽力した。
 同社は、加藤久喜取締役(65)が代表取締役副社長に就き、鈴木賢次代表取締役副社長(74)が代表権のない取締役副会長となる人事も決めた。代表取締役の3人体制は維持する。(浜松総局・白本俊樹)
​〈2022.09.26 あなたの静岡新聞〉

晝馬、丸野両氏 記者会見「モジュール製品強化を」

 社長交代人事を内定した浜松ホトニクスの晝馬明社長(65)は26日、浜松市中区で開いた記者会見で交代の理由について「各事業部の製品を組み合わせてつくるモジュールの強化が大事になる。システム事業部で培った知識や能力、海外経験を生かし、真のグローバル企業に成長させてほしい」と述べ、新社長に就任予定の丸野正代表取締役専務執行役員(61)のリーダーシップに期待した。

会見する代表取締役社長に内定した丸野正氏(右)と代表取締役会長に就く晝馬明氏=26日午後、浜松市中区
会見する代表取締役社長に内定した丸野正氏(右)と代表取締役会長に就く晝馬明氏=26日午後、浜松市中区
 同席した丸野氏は新規顧客を迅速に開拓するために、高度な特性を持つ自社製品を扱いやすくしたモジュール製品の必要性を強調。「分散するモジュール設計の部隊を統一することが重要案件。連携で生まれるアイデアを実現させ、世界一の製品を送り出したい」と抱負を述べた。
 晝馬氏は代表権のある会長に就いた上で、ベンチャー支援などを通じて光産業の拡大に注力する。光産業創成大学院大や光科学技術研究振興財団の理事長など外部の役職は継続して務める。たたき上げの丸野氏が後任に就くことには「自然の成り行きだ。将来、誰がリードすべきかを社長就任時から考えてきた」と説明した。
〈2022.09.27 あなたの静岡新聞〉

半導体拡大で最高 10~6月期連結決算 2年連続の増収増益

 浜松ホトニクスが10日発表した2021年10月~22年6月期連結決算は、売上高が前年同期比24・5%増の1517億6300万円、経常利益が80・6%増の426億1100万円、純利益が77・1%増の316億7200万円と2年連続の増収増益だった。世界的な半導体市場の拡大などで、いずれも過去最高を更新した。

 事業別では電子管が25・6%増の589億2900万円。半導体検査装置向けが国内外で好調だった。電気自動車(EV)の生産拡大や第5世代(5G)移動通信システムの普及に伴い、バッテリー検査に使うエックス線源がアジアを中心に売り上げを伸ばした。
 光半導体はエックス線コンピューター断層撮影装置(CT)向けが伸び、24・9%増の704億3800万円。画像計測機器は22・0%増の182億4千万円だった。
〈2022.08.11 あなたの静岡新聞〉

逆風の中、好業績続く理由は

※2022年1月14日 あなたの静岡新聞 新春トップインタビューより

晝馬明氏
晝馬明氏
 ―半導体不足と、長期化する新型コロナウイルス禍の影響をどうみているか。
 「半導体不足で部品の供給が滞り、大きなシステムや、センサーなどに回路を取り付けたモジュール製品の出荷が計画通りできなくなっている。予測は難しいが、半年後には解消傾向に向かうのではないか。コロナ禍については、われわれの製品はさまざまな分野で利用されているため、医用をはじめ売り上げが増えたものがあれば、空港の手荷物検査装置向けなど減ったものもある」
 ―逆風も吹く中、好業績が続く要因は。

 「イメージ機器と光源はEV(電気自動車)の生産拡大でリチウムバッテリー検査用が成長し、医用分野の光電子増倍管と光半導体素子も伸びている。特に、PCR(遺伝子増幅法)検査やエックス線CT(コンピューター断層撮影)向けが好調。世界的な半導体需要の高まりを受け、半導体製造・検査装置向けのイメージセンサーも売り上げが増加した」
 ―2022年の景況と、自社の業績をどう見通すか。

 「半導体不足やコロナウイルスの新変異株は懸念材料だが、製造業がけん引し、景気は全体として緩やかに回復するのではないか。自社はいまの成長パターンがしばらく続くとみている。EVに代表される新しい成長産業の需要を取り込み、業績をさらに伸ばしたい」
 ―今後の重点的な経営戦略は。

 「いまは電子管、光半導体、画像計測機器の3事業だが、レーザーを第4の事業の柱に育てたい。日本での手続きを経ず、現地で試作品を提案するラピッドデザインは米国と欧州に加え、新たに中国で展開する方針。コロナ禍で必要性を実感した社内のデジタル化も進める。5年後、10年後を見据えて、浜松ホトニクスを真のグローバル企業にするプロジェクトも検討を始めている」
 ―注力しているベンチャー支援の動向は。

 「大学発スタートアップを支援して、新しいニーズを見つけ出すのが大きな目的。われわれの製品を提供して投資先が成長すれば、浜松ホトニクスの顧客を増やすことにつながる。先行する米国に続き、今春をめどに欧州で本格的に投資先を探し始める。社内ベンチャーは複数の候補があり、22年度中には2、3社を立ち上げたい」(聞き手=浜松総局・杉山諭)
 ひるま・あきら 1984年入社。米国の子会社社長を経て2009年から現職。65歳。
〈2022.01.14 あなたの静岡新聞〉
地域再生大賞