知っとこ 旬な話題を深堀り、分かりやすく。静岡の今がよく見えてきます

キッズゲルニカ知っていますか 富士宮から平和の願い

 子どもたちが平和への願いを込めて描いた作品「キッズゲルニカ」を知っていますか? ピカソ作「ゲルニカ」と同サイズのキャンバスに描く国際プロジェクトです。富士宮市では趣旨に賛同し、小中学生・高校生が制作しています。ロシアによる侵攻が続くウクライナへの祈りを込め、富士山麓で作品も展示されました。これまでの地域での活動内容を振り返ります。
 〈キュレーター:編集局未来戦略チーム 寺田将人〉

平和祈る作品、富士宮に 日本避難のウクライナの子どもたち描く

 日本に避難するウクライナの子どもらが平和を願って太陽や伝統的刺しゅうの模様などを描いた作品「キッズゲルニカ」3枚の展示が20日、富士宮市役所で始まった。制作に携わったウクライナ出身オクサーナ・ピスクノーワさん(横浜市)が同日来庁し、講演した。

自身が携わったキッズゲルニカについて説明するオクサーナ・ピスクノーワさん(左)=富士宮市役所
自身が携わったキッズゲルニカについて説明するオクサーナ・ピスクノーワさん(左)=富士宮市役所
 1996年にロシア語講師として来日したピスクノーワさんはロシアの軍事侵攻以降、避難民の支援に力を入れている。市役所に並べた3枚のうち1枚は今年7月、首都圏などで生活する避難民の子どもらが描いた。
 講演では自身が8月に滞在して見たウクライナの現状を語った。「どこにも安全な場所はない」と説明。首都近郊ブチャで自身が撮影した焼け焦げたガソリンスタンド、銃弾の跡とみられる丸い穴が空いた子どもの遊び場などを示し「それでもロシアは軍事施設しか狙っていないと言う」と非難した。駐車場に並ぶ仮設住宅についても紹介し、「エアコンはあるが雪に耐えられるか疑問」と語った。
 市役所の展示は30日まで。ほかに第四中と南部公民館で描いたキッズゲルニカが並ぶ。(富士宮支局・吉田史弥)
 〈2022.09.24 あなたの静岡新聞〉

富士宮の児童生徒も 富士山麓から平和発信

 富士宮市内の子どもたちが富士山麓から平和を祈って描く「キッズゲルニカ」制作プロジェクトで、南部公民館での作品がこのほど完成した。プロジェクトで計画した5枚すべての作品がそろった。同公民館では周辺エリアの児童生徒による合同チームが色鮮やかな列車を中心に大きく描いた作品を仕上げた。

完成したキッズゲルニカの作品を確認する参加メンバーら=富士宮市の南部公民館
完成したキッズゲルニカの作品を確認する参加メンバーら=富士宮市の南部公民館
 同公民館の作品は星陵中・高の美術部員が構図や下絵などの制作を進め、8月21、28日の2日間に公民館周辺の東小、黒田小、第一中の児童生徒とともに列車内とその周りに花や動物など思い思いに描き足して仕上げた。美術部の加藤埜乃香部長は「みんなが描きやすい構図を選んだ。列車には明るい平和な未来にみんなで進もうというメッセージも込めた」と語った。
 公民館の輿水和男館長は「高校生が自分たちの力を発揮しながら小中学生が楽しく活躍できる構図をつくってくれた。学校ではない場所で、子どもたちの縦のつながりが生まれた」と目を細めた。
 同プロジェクトではこれまでに、富士宮東高、大富士小、富士根南小、第四中で作品が制作された。イオンモール富士宮で5~9日に第四中の作品が、12~16日に南部公民館での作品が展示される。(富士宮支局・吉田史弥)
 〈2022.09.04 あなたの静岡新聞〉

東日本大震災支援で描いた作品 ウクライナから富士宮に

 ロシアによる侵攻が続くウクライナに向けた連帯を富士山麓から発信しようと、富士宮市の渡辺実さん(65)が28日までに、東日本大震災の復興支援の一環でウクライナの子どもが描いた平和を願う「キッズゲルニカ」の作品を同市上井出の草原に広げた。「あの子たちが爆撃を受けていると思うと、いてもたってもいられなかった」。渡辺さんは現地の友人と連絡を取り続けながら、反戦と無事を願い続けている。

キッズゲルニカを描くウクライナ北部スラブチチ市の子どもたち(渡辺実さん提供)
キッズゲルニカを描くウクライナ北部スラブチチ市の子どもたち(渡辺実さん提供)
 キッズゲルニカはパブロ・ピカソ作「ゲルニカ」と同サイズのキャンバスに子どもたちが平和を描く国際プロジェクト。草原に並べたキッズゲルニカの5作品は、ファッションデザイナーの故・高田賢三さんと渡辺さんらが始めた東日本大震災復興支援活動の一環などで2017年、首都キエフやソ連時代に爆発事故があったチェルノブイリ原発の作業員らが暮らす北部のスラブチチ、東部ドネツク州とルガンスク州の子どもたちが描いた。広島や長崎、福島などで展示した後、渡辺さんが保管していた。
 5枚の作品には原発事故があった福島への連帯や、平和に対する思いが描かれている。ドネツク州の子どもたちが世界の各地域を描いた作品には「ウクライナ・イズ・ヨーロッパ」と記されている。渡辺さんは「現地の知り合いのほとんどは逃げていない。人道的問題が起きていて、本当に許せない」と憤る。
 今年は日本とウクライナの外交関係樹立30周年。「ウクライナが親日ということもあまり知られていない。日本人にもっと関心を持ってもらいたい」と語る。作品は3月6日まで同市上井出の「ごとう動物病院」隣接地に展示している。(富士宮支局・吉田史弥)
 〈2022.3.1 あなたの静岡新聞〉
地域再生大賞