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観光は電動キックボードで 沼津市が社会実験、普及なるか?

 沼津市は、電動キックボードをヘルメットなしで公道走行できる社会実験を始めました。市民や観光客の身近な移動手段として普及の可能性を探ります。現在は原則免許が必要な電動キックボードですが、道路交通法の改正で、2年以内には免許が不要に。さらに利用が広まる可能性も秘めています。次世代モビリティーとして注目を集める電動キックボード。乗り心地や注意点もまとめました。
 〈キュレーター:編集局未来戦略チーム 石岡美来〉

新たな移動手段 普及の可能性は 沼津、10月16日まで貸し出し

 沼津市は16日、市中心部や沼津港周辺で、ヘルメットなしで電動キックボードを公道走行できる県内初の社会実験の出発式を同市の中央公園で行った。実験は17日から10月16日まで。市中心部や沼津港に7カ所の有料貸し出し場所を設け、市民や観光客の新たな移動手段として普及の可能性を探る。

17日からの社会実験を前に電動キックボードの試走をする市職員=16日午前11時、沼津市大手町
17日からの社会実験を前に電動キックボードの試走をする市職員=16日午前11時、沼津市大手町
 出発式には、頼重秀一市長や実験に協力する企業「EXx(エックス)」(東京都)の青木大和最高経営責任者(CEO)らが出席し、最大15キロの速度が出る電動キックボードに実際に試乗した。頼重市長は「発進もスムーズで快適だった。多くの方に利用してもらいたい」とアピールした。
 電動キックボードは現在、原付免許やヘルメット着用だが、実験では国の特例を受け「小型特殊自動車」の扱いとなった。運転免許は必要だが、ヘルメット着用は任意となる。利用者は通話アプリ「LINE」で登録し、クレジットカードで決済する。貸し出し時間は午前6時~午後6時。料金は最初の10分は100円、長時間利用は3時間2千円など。
 市はスマートシティープロジェクトの一環として、利用者がどのエリアを周遊したか、衛星利用測位システム(GPS)を使い、解析する。
〈2022.9.16 あなたの静岡新聞〉

2年以内に免許不要に 改正道交法が可決

 性能上の最高速度20キロ以下の電動キックボードや、特定条件下でシステムが車を操作する「レベル4」相当の自動運転移動サービスの新ルールを定めた改正道交法が19日(※2022年4月)、衆院本会議で可決、成立した。電動ボードは16歳未満の運転を禁止し、免許は不要となる。電動ボードの規定は2年以内、自動運転関連は1年以内に施行される。

 20キロ以下の電動ボードは新たに「特定小型原動機付自転車」と分類。原則として車道や自転車専用通行帯を通行し、最高速度6キロ以下に制御されていれば歩道も走行できる。交通反則通告制度(青切符)と放置違反金の対象で、16歳未満の運転などに罰則を設けた。
〈2022.4.20 あなたの静岡新聞〉

乗り心地や注意点は 西伊豆のレンタルサービス、記者が実走体験

 次世代モビリティー(移動手段)として注目される電動キックボード。2年以内に施行予定の改正道交法により、時速20キロ以下の場合、16歳以上なら免許がなくても運転が可能となり、ヘルメット着用も任意となる。今秋に沼津市内で貸し出しの社会実験が予定されるなど静岡県内でも普及の動きがあるが、安全面への不安も根強い。昨年から観光用にレンタルサービスを展開している西伊豆町観光協会を記者が訪れ、実走を体験した。

電動キックボードの乗り方を教わる記者(左)と職員の鷹野純也さん=西伊豆町観光協会(松崎支局・土屋祐人)
電動キックボードの乗り方を教わる記者(左)と職員の鷹野純也さん=西伊豆町観光協会(松崎支局・土屋祐人)
 観光協会で対応してくれたのは職員の鷹野純也さん(41)。申し込むと、まずヘルメット着用義務や歩道走行の禁止などのルールを説明してくれた。「(現行法では)ヘルメットの着用が義務だと知らない人が多い」と鷹野さん。さらに動画で安全な乗り方を確認した。「人の目が無いとルールを読んでくれない。対人で指導することが大事」なのだという。
 公道走行前に鷹野さんからアドバイスを受けながら練習した。アクセルを押すと思った以上に勢いよく進みバランスを崩してしまった。スピードの調整も難しい。10分ほど練習すると感覚がつかめてきた。すぐに乗りこなす人もいれば、慣れるのに30分ほどかかる人もいるという。鷹野さんは「気が済むまで練習してもらう。本当に苦手な人には貸し出しを断ることもある」と話す。
 いよいよ公道の走行。観光協会が推奨する、交通量が少ないコースを走ることにした。練習で基本的な操作を覚えたとはいえ、段差や急カーブでは転びそうになる場面もあった。自在に乗りこなすには数時間の貸し出しでは足りない印象だ。
 体験を通し観光協会の安全対策の徹底ぶりと、その重要性を実感した。鷹野さんは「ルールが緩和されても講習は簡略化しない」と語る。電動キックボードはさらなる普及が見込まれる。人々の安全意識向上へ貸し出しを行う事業者が先導役になる必要を痛感した。

 ■ヘルメット着用 現行では義務 「特例」との混同に注意
 現行では定格出力0.6キロワット以下のモーターで走る電動キックボードは道交法上の原動機付き自転車(原付)に該当し、ヘルメットの着用が義務づけられている。一方、沼津市で行われる社会実験のように国の特例措置を受けたサービスの場合は「小型特殊自動車」の扱いとなり、ヘルメットは任意。自転車専用通行帯の走行も可能になる。
 静岡県警交通企画課の坪内大輔管理官(48)は「現行、特例、改正法施行後で異なる複雑なルールを販売店や個人に対して周知していきたい」と話す。
〈2022.8.17 あなたの静岡新聞〉