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密回避、豪華な機内✈「ビジネスジェット」に注目

 静岡空港を本拠地に、ジェット機のチャーター事業を手掛ける鈴与グループのフジビジネスジェット(FBJ)は、航続距離7410キロを誇る飛行機「ファルコン」を導入しました。目的の空港へ直接行き来することが可能なビジネスジェットは、移動時間短縮やコロナ禍の感染対策として注目度が上がっています。ビジネスジェットの市場展開について可能性を探りました。
 〈キュレーター:編集局未来戦略チーム 石岡美来〉

「ファルコン」公開 事業機として国内初、国際投入も視野

 静岡空港を本拠地にする鈴与グループのフジビジネスジェット(FBJ、牧之原市、米原慎一社長)は14日、フランス・ダッソー社製の新たな中型機「ファルコン2000LXS」を東京・羽田空港で公開した。国土交通省からの国内航空運送事業認可取得の手続きが、8日に完了した。当面は国内で運航し、将来的な国際投入も視野に入れる。

FBJが新たに運航投入する「ファルコン2000LXS」=14日午前、羽田空港
FBJが新たに運航投入する「ファルコン2000LXS」=14日午前、羽田空港
 ファルコンが事業機として国内に導入されるのは初めて。航続距離は7410キロで、日本からシンガポールやアラスカまでをカバーできる性能を誇る。豪華で快適な機内空間も特徴。10席の仕様にしてゆとりを持たせた。
 
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FBJのファルコン2000LXSの機内

 FBJによると、世界的にはビジネスジェットの市場規模が拡大している。定期便や他の輸送機関と比べて接触感染リスクが低い点も好感され、新型コロナウイルス禍の影響もほとんど受けていないという。
 FBJの保有する機材は、現在の主力となっている小型機と合わせて計4機となった。米原社長はファルコンを加えたことを契機に本格的な事業拡大を目指す考えを強調し「広く一般にも利用できるリーズナブルなビジネスジェット機を提供したい」と意気込みを示した。
〈2022.9.15 あなたの静岡新聞〉

コロナ禍、駐在員の帰国など利用増 日本での市場拡大はこれから

 新型コロナウイルスの感染拡大を機に、ビジネスジェットが注目を集めている。国際線の大幅減便が続く中、駐在員の帰国などの利用が増加。定期便に比べ3密(密閉、密集、密接)を回避でき、乗り継ぎ便を待つ必要もない。航空業界の関係者は「移動手段の選択肢として認知度を高めたい」と話す。

  「日本の市場はまだ小さいが潜在需要はある」。ANAビジネスジェットの片桐純社長は9日、東京都内で開いた事業説明会で力を込めた。
  同社の主な業務はチャーター便の手配。これまで日本から海外に定期便で渡った後の移動を手配するケースが多かったが、コロナ禍で日本と海外を直接行き来する案件が増えた。海外工場の再開に伴う技術者の現地派遣や駐在員と家族の帰国といった需要だ。一般旅客と接する回数が少なく、感染対策としての評価も高まっている。同社は2018年の設立だが、既に黒字化。22年度には売上高10億円を目指す。
  ビジネスジェットの最大の利点は、時間の節約だ。複数の都市を訪れる場合、空港の専用施設で出入国や搭乗の手続きが可能で、直接最寄りの空港まで飛べる。計画次第では数日間の日程を短縮できる。
  ただ日本での利用は欧米に比べ、桁違いに少ない。米ニューヨーク近郊のビジネスジェット専用空港の発着回数は19年で17万回超。日本の全空港の約10倍だ。国土面積の広さや鉄道網の発達、空港の施設整備など原因はさまざまだが、そもそも有効な移動手段としての認知度が低い。
  日本航空も19年にJALビジネスアビエーションを設立。路線や金額の問い合わせ件数がコロナ禍で3~4倍に増加した。紺戸隆介社長は「オンライン会議が普及する一方で、対面で話すのもビジネスで重視される」と指摘し、今後の需要は伸びるとの考えを示した。
〈2021.4.18 静岡新聞朝刊〉

東京五輪・パラ前、海外富裕層取り込む狙いも 静岡空港、駐機場拡充

静岡空港を利用するビジネスジェット。静岡県は利用拡大に向けて調査や営業活動を強化する(静岡エアコミュータ提供)
静岡空港を利用するビジネスジェット。静岡県は利用拡大に向けて調査や営業活動を強化する(静岡エアコミュータ提供)
 ※2019年9月3日 静岡新聞夕刊より
 静岡県は3日までに、静岡空港のビジネスジェット(BJ)機の利用拡大に向けて調査や営業活動を強化するため、県一般会計9月補正予算案に事業費500万円を盛り込む方針を固めた。2020年東京五輪・パラリンピック期間中に日本を訪れる海外富裕層の取り込みを図る。
  県によると、ロンドン五輪ではBJや政府専用機の発着が約2300回あり、東京五輪でも多くの不定期便の発着が見込まれている。国土交通省は東京五輪期間中、羽田、成田、中部、仙台、新千歳の5空港への乗り入れを制限し、各国政府関係者や大会役員、選手団などを優先的に受け入れる方針。
  県は制限を受けて羽田や成田に乗り入れできない富裕層のBJについて、首都圏への利便性や富士山を擁する景観などを積極的にPRして静岡空港で受け入れる考えだ。観光での県内滞在を通じた経済効果も見込む。
  県は運航計画を組む各国の企業を調査し、現地にも出向いて営業活動を行う。米国で開催される航空関連の展示会に出展し、発着先に静岡空港を選択してもらえるようアピールする。
  静岡空港は09年の開港当初、駐機スポットの不足などでBJや小型機の着陸申し込みに応じきれない状況だったが、12年にターミナル地区西側へ駐機場を拡充し、BJの駐機場や格納庫を備えた。こうした対応もあって13年度に41機だったBJの受け入れ数は、18年度には179機まで増えた。ただ、海外からの受け入れは18年度でも9機にとどまっていて、さらなる受け入れ増が期待される。