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気軽に富士山 「5合目観光客」増加 人気の理由は?

 富士山御殿場口で、登頂を目的とせず新5合目周辺を楽しむ「5合目観光客」が増えています。交流拠点「マウントフジトレイルステーション(トレステ)」の利用客数は、コロナ禍前の2019年を上回り過去最多になりました。トレステの過去の取り組みを振り返り、人気の理由を探ります。
 〈キュレーター:編集局未来戦略チーム 片瀬菜摘〉

屋外レジャー注目、アクセス良好 観光客過去最多、街中誘客へ期待も

 富士山御殿場口で今夏、登頂を目的とせず新5合目周辺を楽しむ「5合目観光客」が増えている。新型コロナウイルス禍の行動の変化が一因との見方がある。5合目観光客は登山客に比べて街中に誘客しやすいとの期待が大きく、関係者は次の一手を模索する。

開山日のマウントフジトレイルステーション。5合目観光客は増加している=7月10日、富士山御殿場口新5合目
開山日のマウントフジトレイルステーション。5合目観光客は増加している=7月10日、富士山御殿場口新5合目
 新5合目の交流拠点「マウントフジトレイルステーション(トレステ)」の調査によると、開山した7月10日~8月末の5合目観光客は約3万3200人。コロナ禍前の2019年(7月10日~9月10日)の2万8721人を上回り、過去最多になった。個人客、特に子どもを含む家族連れが増えたという。
 市観光交流課は、コロナ禍で屋外レジャーが注目されたことや、開山期間を通じてマイカーでアクセスできる点などが要因とみる。
 新5合目は御来光や箱根外輪山の景観が楽しめ、付近にはハイキングコースが整備されている。市観光協会は有力な観光資源とみてPRに努めてきた。中川一樹会長(68)は「御殿場口は気軽に富士山を楽しめるという認識がようやく定着してきた」と手応えを語る。
 5合目観光客は登山客に比べ富士山での滞在時間が短く、客層は幅広い。「疲れて下山後は帰るだけになりやすい」(関係者)登山客よりも、近隣施設や店舗が「ついで」に立ち寄ってもらえる可能性が高まる。中川会長は、新5合目と市中心部の施設や店舗を組み合わせた観光コースの提案を視野に入れる。「富士山と街中を結び付け、両方楽しんでもらえるようにしたい」と先を見据える。(御殿場支局・矢嶋宏行)
 〈2022.09.02 あなたの静岡新聞〉
 

交流拠点「マウントフジトレイルステーション」 どんな施設?

※2019年7月9日 静岡新聞朝刊より抜粋

フジトレイルステーション=御殿場市の富士山御殿場口新5合目
フジトレイルステーション=御殿場市の富士山御殿場口新5合目
 新5合目の駐車場にコンテナなどを特設、午前5時から夕方までスタッフが常駐する。来訪者とコミュニケーションを図り安全な富士登山や下山後の市内回遊を後押しする。
 テーブルとベンチを増やし、富士山と向かい合うカウンターテーブルを新設した。登山の必需品を紹介するコーナーも設けた。
 企業や各種団体と連携し自転車のヒルクライムや惑星鑑賞、スカイランニング(快速登山)のイベントを実施し、富士山の多様な楽しみ方を発信する。
 トレステは御殿場口の認知度向上を目的に市と市観光協会、若手商業者らでつくる富士山ツーリズム御殿場実行委員会が運営。来訪者は年々増加している。実行委の田近義博事務局長(39)は「温かいコミュニティースペースにして、御殿場口に戻ってきてくれる人を増やしたい」と情熱を口にする。(御殿場支局・矢嶋宏行)

2014年に開業したトレステ 過去にはこんな取り組みも

※2014年7月20日 静岡新聞朝刊より抜粋

 富士山の4登山道が山頂まで開通し、初の週末を迎えた19日の御殿場口。新たな交流拠点として新5合目駐車場に設置された「マウントフジ・トレイルステーション(通称トレステ)」がにぎわった。足湯サービスもスタートし、来場者や下山者をもてなした。
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観光で訪れ、足湯につかる親子=19日午前

 足湯サービスは無料で、御殿場口下山道にある大砂走りを下った登山者らが足や手を洗える洗い場と、足の疲れをほぐす足湯を設けた。一般車用の第2駐車場から登山口に向かう階段近くのトレステ隣接地にある。8月末までの土、日曜日と祝日、お盆の混雑期の計20日間は、地元のガイドボランティア「御厨の風」がもてなす。
 トレステは、御殿場口の駐車場にはなかった観光客にも対応する休憩所として新たな需要も獲得している。
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人気アニメとのタイアップで設置された撮影用パネルで記念撮影をする来場者=19日午前、御殿場市の富士山御殿場口新5合目

 登山をテーマにした漫画が原作の人気アニメ「ヤマノススメ」とのタイアップ企画第2弾も実施中で、主要登場人物5人の写真撮影用のパネルが設置されているほか、会場の看板に設置された画像をスマートフォン(多機能携帯端末)などで読み取ると、カメラ機能用のフォトフレームが手に入る企画を目当てにアニメファンなどが来場し、楽しんでいた。