知っとこ 旬な話題を深堀り、分かりやすく。静岡の今がよく見えてきます

コロナ感染「全数把握」見直し 静岡県の対応は

 新型コロナウイルスの発生を届け出る「全数把握」の方法を自治体判断で見直せるとした政府方針について、静岡県は当面、従来の全数把握の運用を続けます。政府の運用見直しの方針は医療機関の負担軽減が期待できる一方、感染状況の詳しい把握や感染者支援が行き届かないことがデメリットです。全数把握見直しの議論や静岡県の対応をまとめます。
 〈キュレーター:編集局未来戦略チーム 吉田直人〉

「全数把握」見直しでどう変わる

 全ての陽性者で義務づけられている発生届の提出を高齢者などに限定し、医療機関の事務負担を軽減する。届け出は対象外の人についても年代別件数で報告するため、「全数の把握」は継続される。政府は見直しを都道府県知事の判断でできるようにするとし、さらに全国一律に移行する考えを段階的に表明した。特定の医療機関を選んで定期的に感染者数の報告を求める「定点調査」への長期的な切り替えも検討されている。

〈2022.08.30 あなたの静岡新聞〉

 ■見直し、全国で4県
 「全数把握」を巡り、宮城、茨城、鳥取、佐賀の4県が、対象を高齢者らリスクの高い患者に限定する運用に見直す。国は9月2日から適用する方向で、感染者数の集計は続ける。
※2022.08.30 静岡新聞朝刊を基に作成

静岡県の対応は? 当面継続、高リスク者の「対象外」懸念

 新型コロナウイルス感染者全員について個人情報を含めて発生を届け出る「全数把握」の方法を自治体判断で見直せるとした政府方針に関し、静岡県は現行案は重症化リスクのある人の一部も発生届の対象から外れるなど懸念が多いことから、当面は従来の運用を継続する。29日までの取材で分かった。

 見直しは9月中旬にも全国一律で行い、移行前でも都道府県が独自に見直しの実施を前倒しできる。
 政府は都道府県への25日の通知で、見直し後の発生届の対象を①65歳以上②入院が必要③重症化リスクがあり、かつコロナ治療薬や酸素の投与が必要④妊婦-の4類型に限定するとした。県はこれに従った場合、発生届の提出量は従来の80~85%減少し、医療機関の事務負担は大幅に軽減されると見込む。
 ただ、③で対象外となる、重症化リスクはあるが薬や酸素の投与の必要がない人は、過去に合併症で亡くなるケースがあった。中等症以上になるリスクが接種者より高いとされるワクチン未接種者、治療薬の投与年齢外の小児も対象外。中部の診療所医師は「ただでさえ外来対応で手いっぱいの中、診断の負担と責任が格段に増す」と話す。
 行政サービスの提供面でも状況は様変わりする。発生届の対象外となる人は保健所が個人情報を把握しないたため、プッシュ型の支援ができない。当該の感染者が申し出て、健康観察や食糧支援、療養証明書の発行などを受けることになる。
 県健康福祉部の後藤幹生参事は「(発生届の)対象外の基準は医学的に説明できるものであってほしい。また、対象外となる人は感染拡大防止のため依然、外出自粛が必要なので、(自粛を)守るよう強調すべき」と指摘。全国一律の見直し方針については「(感染症法上の2類相当から)5類に落とすステップダウンの1段目なのか、単なる緊急避難措置なのかが分かりづらい」とし、政府に今後の道筋を明確に示すよう求めた。(社会部・河村英之)
〈2022.08.30 あなたの静岡新聞〉

新たな感染把握の手法「定点調査」って?

首相官邸
首相官邸
 ※2022年8月27日 静岡新聞朝刊
 新型コロナウイルスの感染状況を把握する手法として、政府が9月半ばにも、特定の医療機関を選んで定期的に感染者数の報告を求める「定点調査」を試行する方向で検討していることが26日、関係者の話で分かった。全ての感染者個人の情報を発生届で報告する従来の全数把握方法から、長期的に定点調査への切り替えも視野に入れる。
 一方、政府は全数把握について緊急避難的に都道府県判断で発生届を高齢者らに限定できる方針を打ち出し、さらに全国一律に見直す方向で検討している。当面は定点調査の試行と、発生届の対象を絞りながら感染者総数は把握する二つの仕組みが共存する見込み。
 定点調査は季節性インフルエンザでも使われている手法で、感染者や入院者の増減を効率的に調べられる利点がある。関係者によると、国立感染症研究所などが中心となって、新たな調査システムの運用に向けた検討を進めている。
 当面は感染者の総数を毎日把握できる現行の調査と並行し、試験的に導入。得られたデータの精度などを見極めながら、定点調査への移行に必要な仕組みを整える。
 調査に参加する医療機関は、主にインフルエンザの定点医療機関を想定しており、このうち新型コロナ患者の特性に合った医療機関を対象とすることを検討している。
 関係者によると、これまでの調査の継続性を担保するため、定点調査は流行時だけ活用し、それ以外では全数の把握に戻す案もある。
地域再生大賞