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スズキ、インド進出40年 今後の展望は

 スズキがインドでの事業開始40周年を迎え、記念式典が開かれました。インドの著しい経済成長を背景に、市場を切り開いてきたスズキ。これまでの飛躍を振り返り、今後の見通しをまとめます。
〈キュレーター:編集局未来戦略チーム 石岡美来〉

乗用車販売トップシェア 現地で式典「研究開発力を強化」

 【インド・ガンディナガル=浜松総局・山本雅子】スズキは28日、インドでの事業開始40周年の記念式典をグジャラート州で開いた。人口約14億人の同国で、乗用車販売トップシェアを築き上げた歴史を祝うとともに、持続的成長に向けて前進する姿勢を強調した。インドにスズキ100%出資の研究開発拠点を設立したことも併せて発表した。

スズキのインド事業40周年を記念して開かれた式典。中央はモディ首相=28日午後、インド・グジャラート州ガンディナガル
スズキのインド事業40周年を記念して開かれた式典。中央はモディ首相=28日午後、インド・グジャラート州ガンディナガル
 式典にはスズキの鈴木修相談役、鈴木俊宏社長、現地子会社マルチ・スズキ幹部と、鈴木相談役らと親交が深いモディ首相も出席した。鈴木社長は「インドはグループにとって最も重要な国の一つ」と言葉に力を込め、モビリティ関連の新領域における技術開発を進める考えを示した。その上で「インド市場のみならず、グローバルの競争力と研究開発力を強化する」と述べた。
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スズキの主な四輪事業

 式典内で、グジャラート工場北側で26年に稼働を予定する電気自動車(EV)車載用電池の新工場と、四輪生産能力増強のため国内4カ所目の生産拠点としてハリヤナ州カルコダに設ける25年稼働予定の新工場予定地をオンラインで結び、定礎式も実施した。
 スズキは同国政府の国民車構想に協力し、1982年に国営企業マルチ・ウドヨグ社(現マルチ・スズキ)と四輪の合弁生産で基本合意した。83年にアルトをベースにした現地車「マルチ800」をハリヤナ州のグルガオン工場で生産開始し、同州マネサール、グジャラートの3工場体制で生産規模拡大を図った。2021年度生産台数は約166万台で、日本を含む世界生産の約58%を占めた。同国市場を切り開いた鈴木相談役は「いろいろなことがあったが、成功の道をたどったことに満足している」と振り返った。
 インドでは政府の電動化推進政策を受けて自動車メーカーの動きが活発化している。スズキはグジャラート工場の既存ラインを活用して25年にEV生産を開始するほか、資本提携を結ぶトヨタともインドでの協業関係を強化する方針。
〈2022.8.29 あなたの静岡新聞〉

インド西部グジャラート工場 四輪生産200万台 最速で達成

 スズキは22日、インド西部のグジャラート工場(グジャラート州ハンサルプール)の四輪生産が20日に累計200万台を超えたと発表した。2017年2月に稼働し、5年6カ月での200万台達成はスズキの国内外の生産工場で最も早い。現在はグジャラートの3工場でインド国内向けとアフリカなどへの輸出モデルを生産。主力のインド市場の旺盛な需要に対応している。

累計生産200万台を達成したスズキのインド・グジャラート工場(スズキ提供)
累計生産200万台を達成したスズキのインド・グジャラート工場(スズキ提供)
 19年1月に第2工場、21年4月に第3工場が稼働し、各工場は生産子会社スズキ・モーター・グジャラートが運営する。年間生産能力は計75万台。「バレーノ」「スイフト」「ディザイア」に加えて、協業するトヨタのOEM(相手先ブランドによる生産)モデルを手掛ける。節目の200万台目は「バレーノ」の南アフリカ向け車両だった。

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スズキの四輪生産拠点

 スズキの主力市場インド国内の21年度生産実績はグルガオン、マネサールの両工場(マルチ・スズキ運営)分と合わせて約166万台。このうちグジャラート工場の生産は約54万台を占め、港に近い同工場は輸出モデルの生産拠点としても存在感が高まる。
 スズキは21年度から5年間の中期経営計画で、同国市場の成長に合わせて生産能力を増強し、競争激化が見込まれる市場で乗用車シェア50%以上の確保を掲げる。同社は約1500億円を投資し、グジャラート工場の既存ラインを活用して25年に電気自動車(EV)を、敷地内に新工場を設けて26年にEV用車載電池の生産をそれぞれ開始する計画を公表している。
〈2022.8.23 あなたの静岡新聞〉

2025年にEV生産ライン、26年に電池工場稼働計画

 スズキは20日(※2022年3月)、インドの電動化対応で計約1500億円(約1044億ルピー)の新規投資を行う計画を正式に発表した。2025年に同国西部グジャラート州の乗用車工場で電気自動車(EV)の生産ラインを、26年に同工場隣接地でEV用車載電池工場をそれぞれ稼働させる。同社は19日、同州政府と脱炭素の実現に向けた投資の覚書を締結した。

現地州政府高官と覚書を交わす鈴木俊宏社長(左)=19日午後、インド・ニューデリー
現地州政府高官と覚書を交わす鈴木俊宏社長(左)=19日午後、インド・ニューデリー
 EV、電池の生産規模は明らかにしていない。25年には同州で同国内2カ所目となる車両解体・リサイクルの工場も新設する。EV生産に約445億円(約310億ルピー)、車載電池工場建設に約1049億円(約730億ルピー)車両解体工場に約6億円(約4億ルピー)を投資する。
 同国ニューデリーで岸田文雄首相、モディ印首相が出席した日印経済フォーラムで覚書を締結した鈴木俊宏社長は「小型車でカーボンニュートラルを実現することが今後のスズキの使命。積極投資を継続し、インド政府が掲げる『自立したインド』の実現に貢献する」と語った。
 同社はこれまでに日印両市場で25年をめどにEVを投入する方針を示していた。自社単独での電池工場設置は今回が初めて。インドでは東芝、デンソーとの合弁で建設した車載電池工場で21年末から、ハイブリッド車(HV)向けに出荷を始めている。
〈2022.3.21 あなたの静岡新聞〉

創立100周年 修会長、改めて「インドさらに開拓」

次の100年を見据えた成長戦略について語る鈴木修スズキ会長=3月上旬、浜松市南区のスズキ本社
次の100年を見据えた成長戦略について語る鈴木修スズキ会長=3月上旬、浜松市南区のスズキ本社
 スズキは15日(※2020年3月)、1920年の創立から100年を迎える。織機から二輪、四輪メーカーに転換し数々のヒット車を送り出し、インド市場など国内外の市場も開拓して小型車の雄として飛躍を続ける。鈴木修会長は同日までの取材に「次の100年も車そのものは残る。生き残るために社会の変化に順応し、時代を先取りしていく」と述べ、電気自動車(EV)や自動運転技術など次世代技術の開発に注力していくとともに、成長市場のインドでさらなる需要開拓を進める考えを強調した。=関連記事9面へ
 2018年からインドで50台規模の走行実験を続ける新型EVについて、現地のインフラ整備の進展状況を見ながら、市場投入を目指し開発を急ぐとした。次世代技術関連では、19年に資本提携したトヨタ自動車との間で技術者の相互交流が進む。鈴木会長は「先生と生徒の関係ではなく、ギブアンドテイクの関係で協力し合う」と小型車開発で長年培った強みを生かして連携効果を高めていくとした。今後の自動運転技術の研究開発には200億円程度の資金を確保済みで、トヨタとの早期協業に意欲を示した。
  今後は相良工場(牧之原市)を拡張し、国内での次世代技術の研究機能強化も目指す。
  現在シェア5割を占めるインド市場の開拓では、10年後の2030年もシェアトップを堅持する構え。現在同国内で約3千店ある販売店網を、将来的に約3倍の9千店態勢に拡充する販売強化戦略を掲げ、郊外や商用車向けの出店にも力を入れるとした。
  生産体制についても、今年7月をめどにグジャラート州の第3工場を稼働させる方針で、拡大が見込まれる同国市場で一層の供給能力強化に努める。東芝などとの合弁会社で同国内に建設したリチウムイオン電池工場も生産開始に向け準備を進めている。
  (浜松総局・高松勝)

  スズキ 1920年3月創立。本社は浜松市南区高塚町。四輪、二輪、船外機などを製造。国内工場は湖西、磐田、相良、大須賀、浜松の県内5カ所で、国内従業員数は本社など含め約1万5000人。海外では18カ国・地域で生産。2019年3月期の連結売上高は3兆8715億円。
地域再生大賞