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起業家を応援するまち・浜松 取り組み続々と

 これから起業したい人やスタートアップ企業の誘致・支援に力を入れている浜松市。9月には新たに創業希望者と後継者難の企業をつなげる新事業を始めます。ものづくりのまち・浜松が行う起業家支援事業をまとめます。
 〈キュレーター:編集局未来戦略チーム 片瀬菜摘〉

創業希望者と後継者不在企業、マッチング 9月に事業開始

 浜松市は24日、事業承継を活用した創業を支援する事業「ツグはまコンシェルジュ」を9月1日に始めると発表した。創業希望者と後継者難に悩む企業をマッチングし、円滑な承継実現を図る。

「ツグはまコンシェルジュ」のイメージ
「ツグはまコンシェルジュ」のイメージ
 創業希望者と後継ぎがいない企業が、市や浜松商工会議所などが運営する「はままつ起業家カフェ」などにあらかじめ相談した上で必要な情報を登録。相談員や専用ホームページなどを通じて相手を探し、条件が合えば面談する。
 合意に達すれば、事業譲渡、弟子入り・のれん分け、後継者としての就職などに進む。実現に向けては「県事業承継・引継ぎ支援センター」などがサポートに当たる。
 市産業振興課によると、市の事業承継普及員が市内の約330社を訪問して聞き取ったところ、約40%が「後継者がいない」と回答した。経営者が後継ぎと思い定めている人に承継の意思がないケースもあり、基幹産業の製造業でも後継者難が課題になっている。
 同課の担当者は「意欲のある創業希望者の活躍の場と持続可能な企業の数を少しでも増やしたい」と話した。(浜松総局・草茅出)
 〈2022.8.25 あなたの静岡新聞〉

ファンドサポート事業は4年目 静岡県外の17社、浜松に

 浜松市がスタートアップ(新興企業)支援策として全国の自治体に先駆けて導入したファンドサポート事業が4年目を迎えた。投資会社と連動して交付金を支給し、スタートアップの資金調達を後押しする。事業を契機に成長分野のスタートアップが市内に進出したり、製造業との協業を進めたりと成果も出始めた。市はスタートアップが集積する「浜松バレー構想」の実現に向け支援を強化する。

ファンドサポート事業への採択を契機に浜松市に進出したキューボレックスの寺嶋瑞仁社長。不整地での負担軽減に向けた開発を行い、今後、海外展開も見据えている=7月下旬、同市中区
ファンドサポート事業への採択を契機に浜松市に進出したキューボレックスの寺嶋瑞仁社長。不整地での負担軽減に向けた開発を行い、今後、海外展開も見据えている=7月下旬、同市中区

 農家が使う手押し車のタイヤ部分の電動化キットなどを手掛ける「キューボレックス」(本社・東京)。2021年度のファンドサポート事業での採択を機に今年6月、浜松営業所を開設した。寺嶋瑞仁社長(29)も移り住み、ビジネスの加速を図る。
 市場拡大を目指し、ミカン農家が多い静岡か愛媛県を候補地に考えていた同社。寺嶋社長は「ファンドサポートが決め手。金額が大きく、資金調達法として魅力的」と話す。田畑や災害現場など「不整地」での作業効率向上に貢献する製品開発を進め、将来的な海外展開も見据えている。
 浜松市は同事業を始めた19年度以降、24社を採択し、7千万円を上限に計9億7146万円を支給した。このうち、県外の17社は浜松に進出して新たな雇用を創出。スタートアップと市内の製造業などが連携して技術開発に取り組む動きも見られ、21年度の連携事例は全37件に上った。
 市は実績の乏しいシード(種)の研究開発事業が採択されにくいという反省も踏まえ、22年度は一般枠(上限4千万円)に加え、創業初期の「シードR&D枠」(同1千万円)を創設した。市内企業との連携を後押しするための「協業枠」(同2千万円)も設けた。
 今後は高校、大学生の起業精神の醸成や、ものづくり企業から起業しやすい環境づくりにも取り組む。市スタートアップ推進課の担当者は「新興企業が生まれ、集まり、育つというスタートアップ・エコシステムの構築につなげたい」と意気込む。(浜松総局・宮崎浩一)

 ファンドサポート事業 浜松市認定のベンチャーキャピタル(VC、投資会社)が将来性を見込んで投資したスタートアップに対して市が審査し、VCの投資額と同額などを上限に交付金を支給する制度。有望スタートアップの誘致を目的に全国自治体で初めて導入した。現在の認定VCは41社。スタートアップは有効な資金調達法として、認定VCは投資先の資金が充実して事業が進展しやすくなり、投資リスクが軽減される利点がある。
​ 〈2022.8.17 あなたの静岡新聞〉

市の総合窓口「はままつスタートアップサロン」 相談対応幅広く

 浜松市は、革新的な技術やアイデアを持つスタートアップ(新興企業)の成長や新規事業の分社化を目指す市内企業を後押しするため、総合相談窓口「Hamamatsu Startup Salon(はままつスタートアップサロン)」を開設した。同名の専用ウェブサイトで相談を受け付け、専門家によるアドバイスなど伴走型支援を展開する。

浜松市のスタートアップ総合相談窓口のウェブサイト
浜松市のスタートアップ総合相談窓口のウェブサイト
 窓口は事業や資金、法務、知的財産など幅広い分野の相談に対応し、受け付けから24時間以内の回答を特長に掲げた。内容に応じて定期相談会や弁護士、金融機関、公認会計士など各分野の専門家による個別相談につなげる。
 このほか、企業の成長段階に合わせたテーマ別のセミナーも開催予定。相談などの実施には起業、転職支援などを手掛ける「フォースタートアップス」(東京都)のノウハウを活用する。
 市スタートアップ推進課の担当者は「新興企業が、資金調達や事業拡大といった成長の壁を乗り越えられるように支援したい」と話している。(浜松総局・草茅出)
​ 〈2022.7.2 あなたの静岡新聞〉
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