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陸上界の新星 沢田結弥選手をピックアップ

 陸上女子の沢田結弥(浜松市立高)が今夏、1500メートルでU20世界選手権に出場します。静岡県新記録を出すなど、高校から本格的に始めた陸上で驚異の活躍を見せています。期待の16歳のこれまでの活躍や人柄をご紹介します。
 〈キュレーター:編集局未来戦略チーム 吉田直人〉

世界のトラックへ 8月、U20世界選手権出場

 16歳の進化が止まらない。陸上女子の沢田結弥(浜松市立高)が今夏、1500メートルでU20(20歳以下)世界選手権(8月、コロンビア)に出場する。走り始めてまだ2年。本人さえ戸惑うほどのスピードでトップランナーへの道を駆ける。

日本選手権女子1500メートルで力走する沢田結弥(手前右)。今夏、日本女子中距離のエース田中希実(左端)が初出場した時と同じ高校2年生でU20世界選手権に挑む=6月、大阪
日本選手権女子1500メートルで力走する沢田結弥(手前右)。今夏、日本女子中距離のエース田中希実(左端)が初出場した時と同じ高校2年生でU20世界選手権に挑む=6月、大阪
 中3の夏までバスケットボール部。駅伝部の練習には参加していたが、バスケを引退後に出た県大会でいきなり優勝し、秋には全国5位になった。「小1で始めたバスケは身長やセンスがある選手にすぐに抜かれたけど、陸上は頑張った分だけ結果が出る」。可能性を感じ、高校で転向した。
 あどけない表情とは裏腹に、根っからの負けず嫌いな性格が成長の原動力になっている。1年の夏は3000メートルで全国総体出場が精いっぱいだったが、秋から全国総体1500メートル3位の2学年先輩、兼子心晴(城西大)に練習から食らい付き、今季の飛躍につなげた。
 6月の日本選手権1500メートルは出場唯一の高校生で決勝進出。それだけでも十分な結果だが、決勝は経験のないペース変化と激しい位置取りに翻弄(ほんろう)されて10位に沈み、号泣した。「集団に押し込まれるくらいなら自分から出てしまえばよかった」。格上にも臆せず立ち向かう気概がにじむ。
 U20世界選手権と日程が重なり、全国総体は欠場する。決断には「まだ全国で結果を出していないのに」と葛藤もあったが、浜松市立高監督で今回、日本代表のチームリーダーも務める杉井将彦氏に背中を押されて吹っ切れた。「走るからには負けたくない。4分15秒を切って入賞したい」。世界の中長距離を席巻するアフリカ勢との勝負に挑む。
 杉井氏は「2年に1度のこの大会に2度出場できる年齢で出ることに意味がある」という。U20での活躍が五輪や世界陸上への登竜門になるのが世界の潮流。1度目で「世界」を知り、2度目で勝負する。女子中距離のエース田中希実(豊田自動織機)もたどった道だ。
 沢田は「まだ世界や五輪なんて考えたことはない」という。今は目の前のレースに全力を注ぐだけ。「一つ一つチャンスをものにした先に目標が見えてくれば」。世界のトラックで、16歳はどんな光景を目にするか。
〈2022.07.27 あなたの静岡新聞〉

走り始めてまだ2年 沢田選手どんな人?

 

沢田結弥
沢田結弥
 2006年3月1日、浜松市北区出身。浜松細江中ではバスケットボール部ながら、3年秋の全国中学生大会女子1500メートルで4分27秒68の5位に入った。浜松市立高に進み、今季は1500メートルで4分16秒90の県記録を樹立。3000メートルも全国トップクラスの9分12秒32まで記録を伸ばした。160センチ。16歳。

今季飛躍 5月に1500県新記録でV 静岡県高校総体陸上

 静岡県高校総体陸上は20日、エコパスタジアムで開幕し男女12種目の決勝を行った。女子1500メートルは沢田結弥(浜松市立)が、兼子心晴(城西大、浜松市立高出)が持つ県記録(4分17秒20)を更新する4分16秒90の県新、県高校新、大会新で優勝した。

女子1500メートル決勝4分16秒90の県新・県高校新・大会新で優勝した浜松市立の沢田(6313)=エコパスタジアム
女子1500メートル決勝4分16秒90の県新・県高校新・大会新で優勝した浜松市立の沢田(6313)=エコパスタジアム

 ■「憧れの先輩」を追い快走

 憧れの先輩の記録を追い掛け、2年生が疾走した。女子1500メートルの沢田はスタート直後に集団を置き去りにし、最後は追いすがる田島(サレジオ)も振り切った。今春、浜松市立を卒業した兼子が昨夏樹立した県記録4分17秒20を塗り替える4分16秒90。「尊敬する先輩に少しでも近づきたい。チャンスがあれば狙っていました」とはにかんだ。
 400メートルを想定より1秒速い1分7秒で入っても余力十分。今季は単独走のレースばかりだった分、田島の追走も刺激にしてハイペースを刻み続けた。
 昨夏の全国総体、兼子が1500メートルで3位に食い込む姿に「鳥肌が立った」という。自身は3000メートルで予選敗退。力不足を痛感し、「先輩に食らい付いていけば全国でも戦える」と背中を追った1年間が土台になり、今季は驚異のペースで自己記録を更新する。
 3000メートルでもピークを合わせていない地区大会で全国トップレベルの9分12秒台をマーク。今大会も前日までテスト期間で調整不足のまま迎えた初日にこの快走だ。本格的に走り始めたのは中学3年から。描き始めた成長曲線がどこまで伸びるか、頂点ははるか先にある。
〈2022.05.21 あなたの静岡新聞〉

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