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静岡県、リニア期成同盟会加入へ これまでの経緯は

 東京都、山梨県、愛知県など、リニア中央新幹線沿線の9都府県で構成する建設促進期成同盟会に、静岡県が加盟する方向です。川勝知事は、たびたび言及してきたルート変更の可能性について、今後は主張しない意向を示しました。同盟会の加入で、リニア問題は解決へ向かうのでしょうか。これまでの経緯をまとめました。
〈キュレーター:編集局未来戦略チーム 石岡美来〉

「課題解決へ国と協力」 静岡県の意向受け正式加盟へ

 リニア中央新幹線建設を巡り、静岡県が建設促進期成同盟会へ加入を申請していた件で、同盟会の会長を務める大村秀章愛知県知事は29日の記者会見で、加入を認める方針を示した。静岡県が同日「現行ルートでの整備を前提に、スピード感を持って課題解決に向けて国と協力して取り組む」との意向を文書で示したことを受け、正式な加盟に向けて調整するとした。

大村秀章愛知県知事(右)にリニア期成同盟会への加盟申請書を手渡す川勝平太知事=2022年6月2日、三重県多気町
大村秀章愛知県知事(右)にリニア期成同盟会への加盟申請書を手渡す川勝平太知事=2022年6月2日、三重県多気町
 川勝平太静岡県知事は同日の定例記者会見で、文書を同盟会側に送ったことを説明し、「国と一体となって県民の(大井川水問題などに対する)不安を解消する」と述べた。
 大井川流量問題や南アルプス環境保全問題が解決していないとしてトンネル工事の着工を認めていない静岡県に対し、同盟会側が建設推進の意向確認を求めていた。静岡県は回答書で現行の南アルプスルートでの整備を進める立場を明確にした上で「品川―名古屋間の2027年開業、大阪までの全線開業37年を目指すとの立場を共有する」と記した。
 〈2022.6.30 あなたの静岡新聞〉

川勝知事「ルート変更、今後は主張せず」表明

 川勝平太知事は29日の定例記者会見で、リニア中央新幹線建設促進期成同盟会に「現行ルートでの整備を前提に取り組みを進める」と県の姿勢を示したことを踏まえ、自身がたびたび言及してきたルート変更の可能性について今後は主張しない考えを明らかにした。

「現行ルートでの整備を前提に取り組みを進める」との文書をリニア中央新幹線建設促進期成同盟会に送ったことを説明する川勝平太静岡県知事=29日午後、静岡県庁
「現行ルートでの整備を前提に取り組みを進める」との文書をリニア中央新幹線建設促進期成同盟会に送ったことを説明する川勝平太静岡県知事=29日午後、静岡県庁
 川勝知事はこれまで「大井川流域住民の理解が得られない」として南アルプストンネル工事の中止とルート変更の可能性にたびたび言及してきたが、今後は「(ルート変更議論を)先導することはない」と述べた。
 同盟会は3日に都内で開催した総会で、静岡工区での工事について「水資源、自然環境への回避・軽減とリニアの早期実現を両立」「地元自治体の理解を得ながら早期着工を図る」と決議した。川勝知事はこれに加え、南アルプスの生態系について議論する国の専門家会議が立ち上がったことも踏まえ、現行ルートを前提に協議する環境が整ったと判断したとみられる。
 川勝知事はルート変更について「事業者が考えることで、(県側は)言える資格も義務もない」と説明した上で「JR東海が(国の)専門家会議でルート選定(理由)についてしっかり答えられれば、何も問題ない」と強調した。
 一方で、同社が南アルプスルートを選定した過程に不透明な点があるとして、同社と同ルートを採択しリニア工事実施計画を認可した国土交通省に対し、今後も説明や情報公開を求めるとした。(政治部・尾原崇也)
 〈2022.6.30 あなたの静岡新聞〉

川勝流? 2019年、会長の大村知事に直接加盟を申請

大村秀章愛知県知事(左)にリニア期成同盟会の加盟申請書を提出する川勝平太知事(同2人目)。突然の行動で周囲を驚かせた=静岡市清水区
大村秀章愛知県知事(左)にリニア期成同盟会の加盟申請書を提出する川勝平太知事(同2人目)。突然の行動で周囲を驚かせた=静岡市清水区
 ※2019年6月6日 静岡新聞朝刊から
 リニア中央新幹線建設促進期成同盟会への本県の加盟について、川勝平太知事は5日(※2019年6月)、静岡市清水区で開かれた本県など9県1市による中部圏知事会議の会合で、同盟会会長の大村秀章愛知県知事に直接申請したと明らかにした。本県内には南アルプストンネル工事に伴って大井川の流量減少を懸念する声が根強いが、川勝知事は同盟会への加盟を通じ、他の都府県に本県の立場への理解を求め、不必要に工事を遅らせているとの見方を払しょくする狙いがあるとみられる。
 同盟会は9都府県で構成し、リニア中央新幹線の早期全線開通を目指している。川勝知事は「リニアは静岡県を通るが、プラス効果が見当たらず、非常に困っている。明日の総会で仲間に入れてもらい、知恵を借りたい」と述べた。「リニア(開通)のメリットは共有している」とも語り、整備自体には賛成していると強調した。6日に都内で開かれる同盟会総会で承認されれば、本県の加盟が正式に決まる。
  ただ、川勝知事は大井川の流量減少問題の解決を前提とし、JR東海が掲げる2027年という開業目標について「考慮すべき特段の理由はない」との姿勢を崩していない。早期開業を求める同盟会の趣旨とそぐわず、どこまで理解が広がるかは見通せない。(政治部・宮嶋尚顕)
 ※表記、内容は当時
地域再生大賞