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停止から11年 浜岡原発の再稼働 議論の行方は

 中部電力浜岡原発が全炉停止してから11年が経過しました。国内の電力需給がひっ迫する中、原発再稼働の議論はどうなっているのでしょうか? 参院選でも原発・エネルギー問題は争点の一つになっています。中電や地元首長の考えや受け止め方をはじめ、参院選候補者の主張をまとめました。
 〈キュレーター:編集局未来戦略チーム 寺田将人〉

中電社長、早期再稼働へ意欲 審査「着実に進捗」

 中部電力は28日、定時株主総会を名古屋市内で開いた。新規制基準に基づく再稼働の適合性確認審査が長引いている浜岡原発(御前崎市佐倉)について、林欣吾社長は「着実に進捗(しんちょく)している。安全を大前提に、早期再稼働へ取り組む」と強調した。株主からは、子会社トーエネック(名古屋市)が函南町で進める大規模太陽光発電所(メガソーラー)事業に関し、グループ全体の法令順守姿勢を問う意見が出た。

中部電力の株主総会に参加する株主=28日午前、名古屋市東区
中部電力の株主総会に参加する株主=28日午前、名古屋市東区
 適合性確認審査の重要なポイントとなる基準津波の考え方などへの質問が相次いだ。一部の株主からは「再稼働していれば、電力不足の不安が解消されるのでは」と進展がないことへいら立つ声も。伊原一郎専務は「津波発生要因の調査を実施し、十分に余裕を見た評価をしている。津波が防波壁を越えても建物内に海水が浸入しないよう対策している」と説明した。
 函南町でのメガソーラー開発を巡り、地元では反対運動が起きている。株主からは「地元の意思に反して事業を強行しないでほしい」との要望があった。水谷仁副社長は「グループの経営戦略会議で、地元の声を尊重し誠実に対応するよう重ねて指導している」と述べた。
 株主総会後の定例会見で林社長は「昨年、一昨年に続いて意見があったことを重く受け止めている。地元の意見を大切にしながらグループを挙げて再生エネルギーの普及拡大に努めたい」と語った。
 総会には185人が出席した。原子力事業の撤退を求める株主議案など5議案は否決された。
 〈2022.06.29 あなたの静岡新聞〉

再稼働容認は今年もゼロ 周辺11市町の首長

 中部電力浜岡原発(御前崎市佐倉)が政府要請で全炉停止してから14日で11年が経過するのに合わせ、静岡新聞社は浜岡原発から半径31キロ圏の緊急防護措置区域(UPZ)内に位置する11市町の首長を対象にアンケートを行った。浜岡原発が原子力規制委員会の審査に「合格」した場合、再稼働を容認すると回答した首長は今年もいなかった。

浜岡原発が新規制基準を満たしたと判断されたら、首長として再稼働はしてもよいと考えるか
浜岡原発が新規制基準を満たしたと判断されたら、首長として再稼働はしてもよいと考えるか
 脱炭素社会実現の必要性や世界的なエネルギー価格の高騰を背景に原子力利用を求める声もある中で、UPZ内の各首長が地元の原発には依然、厳しい見方を保っていることが浮き彫りになった。
 アンケートは4月に実施し、全首長から回答を得た。規制委の審査で新規制基準を満たした場合、首長として再稼働してもよいと考えるか尋ねたところ、島田、磐田、藤枝の3市が「いいえ」と回答した。他の首長は賛否を明言しなかったが、「広域避難の実効性や使用済み核燃料の処理などの課題がある」(菊川市)、「想定される震源域の真上にあり、安全性に疑問を感じる」(吉田町)など慎重な考えを示した。
 脱炭素社会の実現に向けた原子力エネルギーの位置付けを問うと、立地市の御前崎市のみ「実現に欠かせない」と回答。他の首長はエネルギー政策が国策であることなどを理由に言及を避けたが、「将来的には原子力に頼らない電源手段を確立し、積極的に再生可能エネルギーに転換すべき」(袋井市)、「温室効果ガス2050年実質ゼロを達成するために原子力発電はある程度必要」(森町)など一部で見解が分かれた。
 〈2022.05.14 あなたの静岡新聞〉

参院選候補者の考えは 浜岡原発の再稼働に賛成ですか?

■舟橋夢人氏(56歳 N党新)
反対。電力が逼迫(ひっぱく)している時は稼働するのはいいが、それ以外は停止し主電源として稼働するのは反対。順次廃炉とし、次世代の安全で効率の良い核融合炉に切り替えていく。

■鈴木千佳氏(51歳 共産新)
反対。南海トラフ巨大地震の震源域に建つ世界一危険な原発。「世界最高水準の安全基準で安全が確認された原発は再稼働」と言うが、「新基準」は、福島原発事故の原因究明もないまま、再稼働を急ぐために「スケジュール先にありき」で決定したもの。事故が起きた場合の住民の避難対策は自治体任せで、実効性の保証もない。

■山本貴史氏(52歳 諸派新)
反対。浜岡原発は震源域に存在している。安全対策工事を行ったが、南海トラフ巨大地震などは人間の想定を超えてくる可能性がある。

■山崎真之輔氏(40歳 無所属現① 国民推薦)
電力需給の逼迫(ひっぱく)回避、カーボンニュートラルの目標達成のためにも、原子力に代わるエネルギー源が確立されるまでは、安全基準を満たした上で避難計画の作成と地元合意を得た原発は稼働させるべきだ。ただし、原発への武力攻撃を想定し、自衛隊によるミサイル迎撃態勢を可能とする法整備を検討する必要もある。

■若林洋平氏(50歳 自民新 公明推薦)
賛成だが、原発の依存度を低くする方向に進んでいる現在の方向性にも賛成。原発再稼働は、人の命や暮らしを守るため、安いコストで環境に負荷をかけず、安全に安定して電力を供給することが重要なので、浜岡原発再稼働については、原子力規制委員会により安全性が確認されたならば、稼働させてよいと考える。

■平山佐知子氏(51歳 無所属新①)
地元合意が取れれば賛成。温暖化防止に向け世界と足並みをそろえながらも、エネルギー資源に乏しいわが国が持続的に発展していくためには、他国に追従するだけでなく、エネルギーの選択肢を広く持つ必要がある。ただ、浜岡に限らず再稼働には地元の合意が必要だと考える。

■堀川圭輔氏(48歳 N党新)
エネルギー不足になるくらいなら。

■船川淳志氏(65歳 無所属新)
条件付き賛成。ソーラー(太陽光)、地熱、風力の組み合わせと現代のスマートグリッドの需給マッチをうまくやれば「浜岡原発がなければ生活が壊れる」という状況には至らないと思う。
 〈2022.06.29 あなたの静岡新聞「立候補者アンケート③ 原発・エネルギー」より一部抜粋〉
地域再生大賞