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静岡県立高再編案 揺れる横須賀・池新田

 静岡県教委は2022年度、県立高校の再編案を再検討するため、新たに「県立高の在り方検討委員会」を設置します。県立校の再編を巡っては、横須賀高(掛川市)と池新田高(御前崎市)の統合が検討されている小笠地区で、地元から根強い反発があります。地元の反対理由や現状をまとめました。
 〈静岡新聞社編集局未来戦略チーム・石岡美来〉

県立校再編 最適な在り方は 静岡県教委、検討委設置へ

 静岡県教委は2022年度、県立高の再編案を盛り込んだ第3次長期計画(18~28年度)を再検討するため、新たに県教委内に「県立高の在り方検討委員会」を設置する。同計画で新構想校への再編対象校がある小笠、沼駿の2地区と、少子化が顕著な賀茂地区に「地域協議会」を設ける。再編協議が難航している小笠地区などでの地域協議会を通じて、県教委は地域の高校の将来像について市町の代表や地域住民の意見を聞く方針。

静岡県庁
静岡県庁
 24日に県庁で開かれた「地域自立のための『人づくり・学校づくり』実践委員会」で明らかにした。
 再検討に着手する理由に、少子化による生徒数の減少や地域連携の必要性、新型コロナウイルス下で進んだ教育環境の急速な変化などを挙げた。在り方検討委は学識経験者や教育関係者、保護者代表などでつくり、地域協議会のほか実践委、総合教育会議の議論を踏まえ、22年度内に基本方針をまとめる。議論の状況次第では、県教委が18年3月に策定した長期計画の再編案を見直す可能性もある。
 地域協議会は、長期計画で再編対象となった学校周辺の市町の首長をはじめ、地域住民の代表などに参加を呼び掛ける予定。22年度は3地区に先行設置し、意見を検討委の基本方針に反映する。23年度以降には他の地域にも協議会を置いて、将来的には地域別の実施計画策定を目指す。
 県教委は「変化の激しい時代を生きる生徒の資質能力を育むには、多様で自由な教育環境が求められる」として、人口減少に対応した学校の在り方として再編以外の選択肢も検討するとした。

 <メモ>県立高第3次長期計画(ふじのくに魅力ある学校づくり推進計画) 全日制の適正規模を1学年6~8学級と設定し、4学級以下で推移する見込みの学校を中心に、分校を含む4地区8校を対象に再編案をまとめた。このうち田方地区では、新構想校の伊豆伊東高(伊東市)が23年4月に開校する。志榛地区では金谷高(島田市)が24年度に単位制定時制課程の高校に改編される予定で、藤枝東高と島田商高の定時制課程が募集を停止する。

横須賀・池新田で協議難航

 静岡県立高の再編案では、2026年度をめどに小笠地区で予定されている横須賀高(掛川市)と池新田高(御前崎市)の新構想校への統合を巡って地元の根強い反発があり、準備に遅れが生じていた。

静岡県立高第3次長期計画の再編案
静岡県立高第3次長期計画の再編案
 掛川市では、横須賀高と地域の関係性や両校の距離などを理由に市をまたぐ統合に反対する声が強く、再編案が判明した17年から地域住民らが存続運動を続けてきた。市も存続を求める姿勢を示し、21年12月には市議会で全議員発議の意見書が可決された。
 一方、御前崎市では市内唯一の高校の維持や魅力ある高校づくりを求め、官民の代表者が協議会を立ち上げて新構想校の誘致活動に取り組んでいた。県教委は21年度中に新構想校の設置場所や設置学科などを決める予定だったが、地元との合意形成に至らなかったため候補地案の提示を見送った。
 計画ではほかに、沼駿地区の沼津西高(沼津市)と沼津城北高(同)も27年度をめどに新構想校へ再編するため、22年度から設置準備を進める予定だった。

両校の統合に意見515件 地域の活力消失を懸念

 ※2018年3月7日 静岡新聞朝刊より

 静岡県教委は6日の定例会で、10年後の2028年度を見通して県立高7校を「新構想校」として3校に統合することなどを定めた「魅力ある学校づくり推進計画」(県立高第3次長期計画)を決めた。定例会後に記者会見し、統合再編などに計570件の県民意見があったと発表。寄せられた意見を踏まえ、地域への配慮や、地域の支援を得ながらの学校づくりの趣旨を盛り込んだと説明し、不安解消に努める姿勢を示した。
  県教委によると、17年11~12月の県民意見募集で寄せられた570件のうち、統合再編関連が541件だった。このうち、横須賀、池新田の統合に関する意見が515件と大半を占め、多くが地域の活力が失われることなどを懸念する存続要望だったという。
  各統合新校の設置場所に関し、小野田裕之高校教育課長は開校の5年前をめどに決定する意向を示し、横須賀、池新田の統合新校についても「現時点では白紙。地元と調整し、子どもにとって最適な場所を総合的に考えたい」と説明した。
  計画では、全日制の適正規模を1学年6~8学級と設定し、1学年4学級以下で推移する見込みの学校のうち、伊東、同校城ケ崎分校、伊東商を23年度、横須賀、池新田を26年度、沼津城北、沼津西を27年度をめどに統合する。金谷は24年度に向け、単位制の定時制課程の高校へ改編し、これに伴って藤枝東、島田商の定時制課程は募集を停止する。
  実学の奨励やグローバル人材育成などに向けた専門学科設置の検討、普通科のキャリア教育、進学指導、学習支援の充実なども基本方向として定めている。

今後は? 「候補地 地元同意が前提」 県教委が明言

 横須賀高(掛川市)と池新田高(御前崎市)を統合する静岡県教委の再編計画で、掛川市は29日、地元の同意なしに候補地選定を行わないとする県教委の姿勢を確認したと発表した。当初のスケジュールでは候補地の決定時期を2022年3月までと定めていて、再編計画の遅れは避けられない見通し。

 市は同日、非公開で28日に開催した県教委と地域代表との意見交換会の議事録を公表した。議事録によると、地元の了解なしに計画を進めないことへの確約を求めた掛川市の久保田崇市長に対して、県教委の長沢由哉教育部長が「地元の理解をいただくことが前提」と応じた。
 県教委幹部からは、新型コロナウイルス感染拡大の影響で再編に向けた調整作業が滞ったとして「26年4月の開校予定も遅れる見込み」との説明があった。掛川市の官民代表でつくる南遠地域教育環境整備推進協議会のメンバーは、横須賀高が地域連携や伝統文化継承の中核を担っているとして、存続を強く要望した。
〈2021.10.30 あなたの静岡新聞〉
地域再生大賞