ふじのくに⇆せかい演劇祭 今年の見どころは?
静岡県舞台芸術センター(SPAC)の「ふじのくに⇆せかい演劇祭2022」が開幕しました。ゴールデンウイーク期間中、さまざまな演目を繰り広げます。演劇祭の名称には「ふじのくに(静岡県)と世界は演劇を通して繋がっている」というメッセージが込められているそうです。演劇祭の狙いや、今年の見どころを1ページにまとめました。
〈静岡新聞社編集局未来戦略チーム・石岡美来〉
未知の文化に出会う祭典 8日まで多彩な演目
静岡県舞台芸術センター(SPAC)の「ふじのくに⇆せかい演劇祭2022」が29日、静岡市内で始まった。新型コロナウイルス禍で招待できなかった海外作品を3年ぶりに上演し、劇場は初日から活気に包まれた。5月8日まで。

上演後のトークでは、演出家のディアナ・ドブレバさんが、物語に込めた思いや来日に伴う苦労などをユーモアを交えて明かした。ブルガリアのアラバジエバ駐日大使が登壇し、ブルガリアの芸術を取り上げる機会への感謝を述べた。
このほかコロンビア演出家の一人劇、南アフリカ発の体験型演劇などを予定している。SPACは新作「ギルガメシュ叙事詩」など宮城聰芸術総監督演出の2作品で参加。宮城監督は「未知の文化や表現を目の当たりにできる祭典。海外の作品に負けない舞台を届けたい」と語った。
5月5日午後4時半から全作品の演出家による公開トークを駿府城公園で行う。問い合わせはSPACチケットセンター<電054(202)3399>へ。
〈2022.4.30 あなたの静岡新聞〉
今年の演劇祭 みどころは?
静岡県舞台芸術センター(SPAC)の「ふじのくに⇆せかい演劇祭2022」の開幕が29日に迫った。新型コロナウイルス禍でオンライン開催など制約が続いたが、今年は3年ぶりに海外作品の上演も予定。「ふたたびつながる。演劇で、世界と。」を掲げ、ゴールデンウイークの静岡で5作品を上演する。

同市駿河区の静岡芸術劇場で開幕を飾るブルガリア演劇「カリギュラ」は孤独な皇帝の不条理劇。最愛の妹を失い暴君と化す破滅の物語を重厚な舞台で届ける。
「私のコロンビーヌ」はコロンビア出身の演出家による一人劇。演劇に導かれた山あり谷ありの人生を、ラテンのリズムに乗せて自ら演じる。南アフリカ演出家が現地で初演した「星座へ」は同区の日本平の森に舞台を変え、アーティストたちと出会う幻想的な体験を用意する。
宮城監督の演出作品は2本。古代メソポタミアの文学に基づく「ギルガメシュ叙事詩」は、葵区の駿府城公園に特設会場を設ける。ギルガメシュ王の自然破壊を伴う冒険物語は、森を守る怪物を巨大な操り人形で再現する。3月にはフランスで先行上演し、5回の全公演が満席になった。駿河区の舞台芸術公園では唐十郎作「ふたりの女」を再演する。
5月8日までの会期中、駿府城公園内でのトークイベントや舞台芸術公園での茶摘み会、漫画家しりあがり寿が企画するステージなども実施する。3~5日には市街地の各所で、演劇やダンスなどを無料で見せるパフォーマンスイベント「ストレンジシード静岡」が開かれる。
演劇祭5作品のチケットは一般4200円、大学生2千円、高校生以下千円など。問い合わせはSPACチケットセンター<電054(202)3399>へ。
〈2022.4.21 あなたの静岡新聞〉
初開催は2011年 静岡と世界のつながり印象づける名称に
県舞台芸術センター(SPAC)は5日(※2018年4月)、6月に開幕する「ふじのくに⇆せかい演劇祭2011」の制作発表を都内で行った。宮城聰芸術総監督らが「演劇を通して広い世界に目を向けてほしい」と話し、SPAC新作と9カ国から招く演目の計11作品を紹介した。

開幕を飾るのは、野田秀樹版「真夏の夜の夢」。シェークスピアの恋愛喜劇に言葉遊びを取り入れて翻案した劇作家の野田さんは「ハッピーエンドの祝祭劇。舞台を日本に移し、日本人も親しみやすい設定に置き換えている」と紹介した。宮城監督が民族楽器を取り入れた演出を施し、SPAC新作として披露する。
〈2011.4.6 静岡新聞朝刊〉
劇場飛び出した試みも 多様な文化楽しむ好機に

今年で6回目となった県舞台芸術センター(SPAC)「ふじのくに⇆せかい演劇祭」は、ゴールデンウイーク(GW)に静岡市内4会場で上演した国内外7作品に、計約5500人の観客を迎えて閉幕した。劇場の外に目を向けると、街中での上演など新たな試みも進む。演劇を通じて文化の多様性に親しむ機会として発展させたい。
「アジアで生まれた古事記のエピソードが、実は北米大陸まで伝わっていたという仮説に立ってみました。文化の出合いを楽しんでください」。5月2日夕、駿府城公園で初演した「イナバとナバホの白兎[うさぎ]」の開演に当たり、宮城聰芸術総監督が演出の意図を語った。特設会場の500席は、4日間全て満席になった。
せかい演劇祭の原点は、国際的な舞台芸術の祭典「シアター・オリンピックス」。1999年、ギリシャ・アテネに続く第2回大会を静岡市で開き、翌年以降はSPACが独自事業の「Shizuoka春の芸術祭」として定着させた。2011年には、本県と世界の演劇を通じたつながりを強く印象付ける現在の名称に変更した。
元々は5月ごろから約2カ月、市内の静岡芸術劇場と舞台芸術公園で週末ごとに開催してきた。静岡芸術劇場が入るグランシップの改修工事が行われた14年、閉館期間の事情からGWの集中開催に変更。「いざ変えてみると、静岡が最も美しく輝く時期。好きな作品を見て、ぜひ宿泊していってほしい」(宮城監督)と滞在型の集客にかじを切る転機になった。
滞在客向けのイベントは、俳優やスタッフと触れ合う茶摘み会や交流バーなどを企画。今年は市との連携で「まちは劇場」を掲げる路上公演も実施した。有料公演にシンポジウムなどの関連イベントを合わせた来場者は、例年の3倍近い1万3千人に達した。
県出資の劇団として、有料入場者数は事業の検証に欠かせない指標になる。演劇ファンの来場は安定し、北海道や九州からの常連客も少なくない。一方で、日頃は劇場に足を運ばない地元の市民に多様な価値観を提示することは、努めて意識すべき目標になっている。
劇場を飛び出した取り組みは、協力者の手を借りて回数を重ねるごとに活発化している。市民協働で関心を高め、開催の意義を実感できる形で文化の土壌を耕していきたい。