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準高地トレーニングするなら裾野で 合宿誘致加速

 裾野市は標高千メートル以上に位置する公園や民間施設を、心肺機能を鍛える「準高地トレーニング」の拠点に位置付け、実業団や大学、高校の陸上チームの合宿誘致に取り組んでいます。裾野市のこれまでの取り組みと成果を1ページにまとめました。
 〈静岡新聞社編集局未来戦略チーム・安達美佑〉

誘致の実績は? 4年で経済効果4・7倍

 裾野市スポーツツーリズム推進協議会は15日までに、2021年度のスポーツ合宿誘致実績を発表した。市内で合宿したのは35チーム、経済波及効果は4500万円でいずれも過去最高だった。経済波及効果は前年度を9・8%上回り、本格的に誘致活動を始めた18年度以降の4年間で4・7倍に増えた。

合宿誘致のチーム数と経済波及効果
合宿誘致のチーム数と経済波及効果
 首都圏から近い準高地トレーニングの適地として陸上競技を中心に知名度が広がり、チーム数は前年度より3団体増えた。鈴木啓久会長は「ラグビーなど他競技の誘致も進め、地域をさらに活性化させたい」と話した。
 一方、コロナ禍で前年度の18チームに続き、15チームが合宿をキャンセルした。夏期に予約が集中し、宿泊施設や練習場所の確保も今後の課題になっている。
 同協議会は関係団体と市で組織する。22年度は宿泊と飲食に加え、整体や交通事業者にも経済波及効果を広げる方針。
〈2022.04.16 あなたの静岡新聞〉

標高千メートル以上の公園や民間施設 拠点に位置付け

 裾野市が2018年度から、市北部の標高千メートル以上に位置する公園や民間施設を、心肺機能を鍛える「準高地トレーニング」の拠点に位置付け、実業団や大学、高校の陸上チームの合宿誘致に取り組んでいる。職員の地道な営業努力や市幹部のトップセールスとさまざまな手段で魅力や利点をアピール。陸上の実業団3チームや県内を含む8高校の合宿誘致にこぎ着けた。

フジヤマリゾートゴルフ場跡地、水ケ塚公園
フジヤマリゾートゴルフ場跡地、水ケ塚公園
 誘致活動の中心は、市の担当者が都内を中心に開催されている陸上の記録会に出向き、参加する実業団や大学への売り込み。市は、標高1200~1400メートルのフジヤマリゾートゴルフ場跡地、標高1500メートルの水ケ塚公園を準高地トレーニングの拠点として誘致を進めている。
 市内のホテルや旅館、ペンションの13の宿泊施設も協力し、選手のニーズに応え、練習に集中できる環境づくりに取り組む。
 今夏実業団チームを受け入れた旅館「大野路」は、チームのリクエストに応え、2台の洗濯機を新設した。食事も通常の2食を、昼食を入れた3食を提供した。津田裕之営業部長は「今後継続的に選手を受け入れていくために決断した」と語る。
 準高地トレーニングの合宿誘致は長野県の白樺湖周辺や岐阜県の御嶽山周辺も積極的に展開している。市の担当者は「富士山麓というロケーション、首都圏からの近さは他に負けない要素」と語る。
 高村謙二市長は「合宿地のブランドイメージを定着させた上で、選手だけでなく市民ランナーにもすそ野を広げ、『スポーツの聖地』として誘客を図っていきたい」と意気込む。
 〈2018.09.03 静岡新聞夕刊〉

トレーニング効果は? 無酸素性運動のパフォーマンス向上

 裾野市スポーツツーリズム推進協議会は(2021年6月)30日、準高地トレーニングの効果を検証する実証実験の中間報告会を市生涯学習センターで開いた。日帰りの準高地トレーニングで、数日後に無酸素性運動のパフォーマンスが向上することを確認した。

準高地トレーニング実証実験の成果を発表した中間報告会=裾野市生涯学習センター
準高地トレーニング実証実験の成果を発表した中間報告会=裾野市生涯学習センター
 プロジェクトリーダーの杉山康司静岡大教育学部教授が成果を発表した。実験は、同大の学生が標高1450メートルの水ケ塚公園周辺と平地に分かれ、インターバル走など同じ内容の高強度トレーニングを実施。3日後と7日後に自転車を30秒間全力でこぐテストを行った。
 その結果、いずれも準高地でトレーニングをした学生の方が自転車をこぐ力が高まっていたという。杉山教授は、筋肉を動かす乳酸系エネルギーを高める因子が低酸素の環境下で増加したとし、「陸上の中距離走や、ダッシュを繰り返すサッカー、バスケットボールなどの球技で、レース・試合直前のコンディション調整に準高地を役立てられる」と説明した。
 実証実験は2019~21年度の3年間。21年度は長期合宿の効果を検証する。同協議会は実証実験の結果を準高地トレーニング合宿の誘致に生かす方針。
〈2021.07.02 あなたの静岡新聞〉

公認の陸上2大会新設 合宿誘致につなげる狙い

 裾野市と市陸上競技協会は2022年度、正式記録が残る公認の陸上大会を二つ新設する。県内の小中高生に加え、箱根駅伝常連校の大学生や実業団選手も多数出場する予定。競技力の向上とスポーツを通じたまちづくりにつなげる。

練習に励む地元の陸上選手。裾野市などが公認大会を増やし、選手を後押しする=同市運動公園陸上競技場
練習に励む地元の陸上選手。裾野市などが公認大会を増やし、選手を後押しする=同市運動公園陸上競技場
 会場はトラックやフィールド、観客席のある市運動公園陸上競技場で7月に「富士裾野トラックミート」、12月に「富士裾野ディスタンスチャレンジ」を初開催する。市内の公認記録会は10月の陸上競技選手権大会だけだったが、大会数の少ない小学生を中心に出場機会を求める声が多く年間3大会に増やす。
 「トラック―」は駒沢、明治、国学院など関東の5大学がコロナ禍で中止になった出雲駅伝に代わり、20年に同競技場で開いた記録会が原型。高レベルの熱戦が期待される大学生中心の大会に、小学生も一緒に参加する。「ディスタンス―」は小中高生、大学生、一般、同市で合宿を行う実業団の選手らが一堂に集う。
 市陸上競技協会の山口直樹理事長は「一流選手の走りを間近で見ることで、小中高生は刺激を受けてほしい」と呼び掛ける。準高地トレーニングの最適地として、市を挙げて合宿誘致を進める中、練習成果を確認できる公認記録会が増えれば、誘致の促進にもつながると期待する。
〈2022.04.14 あなたの静岡新聞〉
地域再生大賞