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新東名開通10年 これまでの歩みを振り返ります

 2022年4月14日に開通から10年を迎える新東名高速道路の静岡県内区間。東名高速道路とともに、物流の円滑化や企業立地の促進に寄与してきた一方、トンネル工事難航により全線開通の時期は見通せていません。開通10年を迎えるにあたり、新東名高速道路の歴史を1ページにまとめました。
 〈静岡新聞社編集局未来戦略チーム・安達美佑〉

物流の円滑化、企業立地に寄与 全線開通は見通せず

 新東名高速道の静岡県内区間が14日、開通から10年を迎える。東名高速道とともに首都圏と中京圏を結ぶ大動脈として、物流の円滑化や企業立地の促進に寄与してきた。一方、全線開通の時期は見通せず、経済効果はなお限定的だ。

新東名高速道の開通効果を説明する松井保幸支社長(右)=7日午前、県庁
新東名高速道の開通効果を説明する松井保幸支社長(右)=7日午前、県庁
 新東名は2012年4月14日に御殿場ジャンクション(JCT)―浜松いなさJCT間の162キロが先行開通した。交通量が東名と分散され、渋滞は約7割減少。6車線化により最高速度が120キロに引き上げられ、御殿場JCT―三ケ日JCT間の所要時間は開通前の138分から東名が115分、新東名が101分に短縮された。累計利用台数は約3億2千万台に上る。
 7日に県庁で記者会見した中日本高速道路の松井保幸東京支社長は地域経済への貢献として、津波被害を受けにくい内陸部の開発が進み、企業立地が進展したことを挙げた。東名の迂回(うかい)路としての役割を担い、観光振興や地域の防災機能強化にも寄与していると説明した。
 23年度には自動車メーカーなどと自動運転の実証実験も実施する。建設中の区間を活用し、路上の障害物の情報を検知して後続車に伝えたり、路面の状況や走行環境に応じた最適な速度情報を検証したりする。
 新東名は今月16日に神奈川県の伊勢原大山インターチェンジ(IC)―新秦野IC間が開通予定で、計画区間のうち90%が開通することになる。一方、新秦野IC―新御殿場IC間の約25キロはトンネル工事が難航し、23年度に予定していた全線開通は延期された。松井支社長は22年度中に開通時期を公表する考えを示した。
 この日、松井支社長は県庁に川勝平太知事を訪ね、開通10周年を迎えることを報告した。川勝知事は「交通量が増え、渋滞もなくなった。無事に全線開通できるよう強い期待を持っている」と話した。

 ■新東名高速道路を巡る主な歴史
2012年 御殿場JCT―浜松いなさJCT間が開通
2016年 浜松いなさJCT―豊田東JCT間が開通
2017年 新静岡IC―森掛川IC間で試行的に最高速度を110キロに引き上げ
2018年 海老名南JCT―厚木南IC間が開通
2019年 厚木南IC―伊勢原JCT間が開通
2020年 伊勢原JCT―伊勢原大山IC間が開通
      御殿場JCT―浜松いなさJCT間が全線6車線化。最高速度を120キロに引き上げ
2021年 新御殿場IC―御殿場JCT間が開通
2022年 伊勢原大山IC―新秦野IC間が開通(4月16日予定)

 〈2022.4.8 あなたの静岡新聞〉

2012年4月開通 当時を振り返ります

新東名高速道路 第1次開通区間(2012年4月14日)
新東名高速道路 第1次開通区間(2012年4月14日)
 ※2012年4月14日 静岡新聞朝刊から
 新東名高速道路が(2012年4月)14日午後3時に開通する。御殿場ジャンクション(JCT)―三ケ日JCT間の162キロ。20年以上の歳月と2兆6千億円の費用をかけて建設された。1969年に全線開通した東名高速道以来、県内で43年ぶりに誕生した東西の大動脈。県内に高速道路2路線時代が到来し、渋滞緩和、防災力アップ、観光振興などに期待は高まる。静岡の未来を切り開く新東名。愛知、神奈川両県内の区間が完成し、全線がつながるのは2020年度になる見通しだ。

 ■技術の粋、景観の美
 主に山間地を走る新東名高速道。県内開通区間162キロのうち、橋が51・7キロ(32%)、トンネルは41・6キロ(26%)を占めている。中日本高速道路は「安全の確保、コスト削減、景観への配慮」を目標に掲げ、最先端の技術や工法を駆使して建設した。土木学会から数々の賞を贈られた橋やトンネルは、デザイン性にも優れた巨大な芸術作品。

〈圧巻のつり橋〉
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浜松浜北ICと浜松いなさJCTの間で、浜松市北区と同市浜北区に架かる都田川橋。土木学会が、橋りょう・鋼構造工学に関する優秀な業績に贈る田中賞を2000年度に受賞した(静岡新聞社ヘリ「ジェリコ1号」から)

〈ロングアーチ〉
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富士川をまたぐ日本初の鋼・コンクリート複合アーチ橋。上下線とも全長350メートルを超える=富士市(魚眼レンズ使用)

〈トンネル内に路肩〉
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新東名はトンネルが多いのとトンネル内にも路肩が設けられているのが特徴=静岡市葵区

2023年度の開通「困難」 新御殿場-新秦野IC間

新東名 新御殿場-伊勢原大山IC間の開通計画
新東名 新御殿場-伊勢原大山IC間の開通計画
 中日本高速道路は(2021年12月)16日、新東名高速道で開通工事を進めている新御殿場―新秦野の両インターチェンジ(IC)間25キロについて、予定していた2023年度の開通が困難になったと発表した。神奈川県内のトンネル掘削工事が難航しているため。
 同社によると、両IC間の開通に合わせて新設される小山スマートIC(小山町)に関しても、供用開始の時期に影響が出る可能性がある。新秦野―伊勢原大山IC間の13キロは計画通り21年度中に開通する見通し。
 新御殿場―新秦野IC間の山間地を貫く高松トンネル(神奈川県松田、山北両町)の掘削工事で、脆弱(ぜいじゃく)な地盤が出現し、掘削面の崩落や大量の湧水などが発生した。同社は「工程の精査が必要」と説明し、開通時期を現時点で未定としている。
 川勝平太知事は同日、「誠に残念ではあるが、やむを得ない。安全を最優先した上で、一日も早く開通するよう働き掛ける」とのコメントを出した。
 〈2021.12.17 あなたの静岡新聞〉

自動運転実用化視野に県内区間6車線化 最高速度120キロに

6車線化と最高速度120キロの本格運用が始まった新東名高速道。端の車線の真新しさが際立つ=22日午後2時5分、沼津市の駿河湾沼津SA付近(静岡新聞社ヘリ「ジェリコ1号」から)
6車線化と最高速度120キロの本格運用が始まった新東名高速道。端の車線の真新しさが際立つ=22日午後2時5分、沼津市の駿河湾沼津SA付近(静岡新聞社ヘリ「ジェリコ1号」から)
 ※2020年12月23日 静岡新聞朝刊から
 新東名高速道の御殿場ジャンクション(JCT)―浜松いなさJCT間の県内区間145キロが22日(※2020年12月)、全線で6車線(片側3車線)化され、最高速度規制が大型トラックなどを除き120キロになった。

 ■試行でも事故変化なし 県警、新東名の結果公表
 静岡県警は22日(※2020年12月)、新東名高速道の最高速度を120キロとした試行開始の調査結果を公表した。以前から120キロほどだった実勢速度は試行後も大きく変わらず、結果的に制限速度を実勢速度に近づけた形になった。死傷事故件数も試行前と大きな変化はなく、死亡事故の発生もなかった。

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 試行開始後1年間(2019年3月~20年2月)の状況を、試行前の1年間(16年11月~17年10月)と比較した。新静岡インターチェンジ(IC)―森掛川ICの試行区間の追い越し車線を走った車両の平均速度である「実勢速度(時速)」は、試行前は制限速度100キロに対して上り122・4キロ、下り122・6キロで、試行後は上り123・4キロ、下り123・3キロ。死傷事故件数は、上下合計で試行前44件、試行後46件。試行期間の数値は、6車線化工事に伴う速度規制をしているとして、工事前の前期半年間を1年分に換算した。
 試行区間で行った交通違反の取り締まりは3569件。追い越し車線を走り続けるなどの通行帯違反1351件、シートベルト未着用913件、速度超過774件と続いた。
地域再生大賞