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ウーブン・シティの玄関口 JR岩波駅周辺どう変わる?

裾野市は、トヨタ自動車が建設中の実証都市「ウーブン・シティ」と連動し、JR岩波駅周辺地区の20年後を想定したまちづくり基本計画を公表しました。同駅周辺の街づくりについて、これまでの経緯をまとめます。
 〈静岡新聞社編集局未来戦略チーム・村松響子〉

小型モビリティーや道路など整備へ 裾野市、基本計画を公表

 裾野市が公表した基本計画では、2022年度からの10年間で、小型モビリティーが走行できる道路や駅前の交流施設などの基盤整備に取り組む方針を示した。

JR岩波駅周辺整備のイメージ(裾野市提供)
JR岩波駅周辺整備のイメージ(裾野市提供)
 
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 実証都市最寄り駅の立地を生かし、まちの将来像として「岩波らしい自然と未来技術でつながるまち」を掲げた。駅前には都市機能を誘導する。メーカーの工場などが建つエリア付近は職住近接の住居ゾーンとして定住人口拡大を目指す。
 31年度までの短期整備計画では、駅と実証都市との間に、小型モビリティーや歩行者が安全に往来できる道路空間を整備するとした。実証都市開業に伴う関係・交流人口の増加をにらみ、駅前には黄瀬川の景観を楽しめるカフェなどが入る複合施設や、小型モビリティーレンタル拠点の整備を推進する。
 交通結節点の機能を強化した新たな駅前交通広場として、バス、タクシー、自家用車が共存できるロータリーや駐車場、駐輪場を設ける。短期整備の総事業費は130億~170億円を見込み、財源には企業版ふるさと納税制度や国の補助金を活用する方針。
〈2022.3.31 あなたの静岡新聞〉

未来都市と融合したまちづくり 市民ら参画

 裾野市は(2021年6月)27日、トヨタ自動車が建設する先進技術の実証都市「ウーブン・シティ」に絡み、最寄りとなるJR岩波駅周辺のまちづくり基本計画策定に向けた第1回ワークショップを同市内で開いた。岩波地区の住民をはじめ、近隣の深良、富岡、須山各地区や周辺企業の関係者ら約45人が参加し、まちの将来について話し合った。

「ウーブン・シティ」の玄関口となるJR岩波駅周辺のまちづくりについて話し合う参加者ら=裾野市内
「ウーブン・シティ」の玄関口となるJR岩波駅周辺のまちづくりについて話し合う参加者ら=裾野市内
 市はウーブン・シティと地域の融合を目指し、玄関口となる同駅周辺に都市機能を集約化するとしている。ワークショップは本年度中に策定する基本計画に住民の意見を反映しようと企画し、11月までに計6回開催する。
 今後のまちづくりの構想として、市は同駅と裾野駅の2拠点を中心に市街地のコンパクト化を進めると説明。これを受けて今回は構想に対する疑問点などを話し合った。
 参加者からは「まちづくりに先端技術を取り入れるだけでなく、裾野市らしさも生かしてほしい」との要望や、岩波駅周辺の整備にかかる期間や予算について質問が寄せられた。高村謙二市長が「整備費は企業版ふるさと納税などを活用する。現時点では予算枠の中で何ができるかではなく、まちの理想像をどんどん提案してほしい」などと答える場面もあり、参加者と行政が地域の将来に対するイメージの共有化を図った。
〈2022.6.28 あなたの静岡新聞〉
 

スマートシティー化 鍵握る規制緩和

 裾野市が、トヨタ自動車が同市で着工した先進技術実証都市「ウーブン・シティ」と連動したまちづくりに乗り出している。「双子のスマートシティー」(高村謙二市長 ※当時)として、自動運転技術やドローンなどを活用した豊かな暮らしを目指す。実現に向けて立ちはだかるさまざまな規制の壁を打ち破るため、国政への期待を寄せている。

トヨタのジェームス・カフナー取締役(左)が裾野市のスマートシティー整備に協力する意向を示した説明会。右は高村謙二市長(※当時)
トヨタのジェームス・カフナー取締役(左)が裾野市のスマートシティー整備に協力する意向を示した説明会。右は高村謙二市長(※当時)
 「新しい価値を生み出し、この地域を活性化させたい」。トヨタのジェームス・カフナー取締役は、市が主催した市民向け説明会で地域との共存を強調。トヨタが開発した自動運転車「eパレット」や次世代モビリティーなどの技術を、市が進めるJR岩波駅周辺整備事業に提供する方針を示した。
 市は駅周辺をウーブン・シティの玄関口と位置づけ、にぎわいの拠点や交通結節点として再整備する計画を練る。事業費は、国の企業版ふるさと納税制度を活用する方針で、既にトヨタなど数社から計7億3千万円の寄付があった。カフナー氏は「市への投資と考えている」と説明する。
 市はトヨタと連動したスマートシティー化の加速を狙うが、規制が障壁となっている。例えば、自動運転車両は私有地の実証都市内で走行できても、公道走行は道交法で制限される。別の企業から出ている医薬品のドローン配送などのアイデアも、実現には規制を緩和する必要がある。
 市は当初、複数の規制緩和を一括して講じられる国の「スーパーシティ構想」の活用を検討した。市全域の特区指定を目指したが、募集期限直前の今年2月、一転して応募の見送りを決めた。高いハードルになったのは住民の合意形成。「指定区域の住民全員がサービスを利用するのが原則。全市民の賛同を得るのは困難だ」。市幹部は吐露する。個別に規制緩和を国に働き掛けるしかない現状に「スーパーシティに限らず、地域の実情に合わせた柔軟な対応をしてほしい」と求める。
 同市など全国各地のスマートシティー推進を支援するKPMGコンサルティング(東京都)の馬場功一パートナーは「各地の取り組みを見ると、実証実験で終わるケースが多い。課題の一つは社会実装のための資金確保。スマートシティーを軌道に乗せるには、国による財政支援の拡充も必要」と指摘する。
〈2021.10.28 あなたの静岡新聞〉

トヨタ実証都市、2024~2025年に一部開業見通し

 トヨタ自動車子会社「ウーブン・プラネット・ホールディングス」のジェームス・カフナー最高経営責任者(CEO)は(2021年10月)5日、トヨタが裾野市内に建設している先端技術の実証都市「ウーブン・シティ」について、2024~25年に第1期工事を終え、一部オープンする見通しを示した。

トヨタが裾野市内に建設している先端技術の実証都市「ウーブン・シティ」のイメージ
トヨタが裾野市内に建設している先端技術の実証都市「ウーブン・シティ」のイメージ
 市が市役所で開いた市民向けのまちづくり説明会後の記者会見で述べた。ウーブン・シティは現在、建設用地の造成工事中で、カフナー氏は「来年から建物造りに入る」とした。実証都市内での主なエネルギーとして、燃焼しても二酸化炭素(CO2)を排出しない水素を活用する方針も示した。
 説明会でカフナー氏は、市のまちづくりと連携する姿勢を強調。ウーブン・シティに近いJR岩波駅の周辺整備事業の支援へ、トヨタとして企業版ふるさと納税制度を活用して市に寄付したことを明らかにした。寄付の理由を「(建設地にあった)トヨタ自動車東日本東富士工場の閉鎖に伴う税収の落ち込みを補う。市への投資」と説明した。
 今後も地域住民に情報提供の機会を持つ意向を示し「地域社会との共存が大切。よく対話し、良いパートナーシップを構築したい」と述べた。
 高村謙二市長は「最先端の技術開発を後押しするため、規制緩和など最大限の支援をしたい」と強調した。
〈2021.10.6 あなたの静岡新聞〉

 
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