知っとこ 旬な話題を深堀り、分かりやすく。静岡の今がよく見えてきます

サクラエビ資源量 どこまで回復?

 今年の駿河湾産サクラエビの春漁が3月27日解禁と決まりました。サクラエビの主な産卵場となる富士川沖などが昨年に引き続き、本格操業しない「保護区」になります。2017年秋漁以降、記録的な不漁が続いていますが、漁獲規制を継続した結果、資源量回復の兆しを指摘する声も出てきました。最新の情報をまとめました。
 〈静岡新聞社編集局未来戦略チーム・尾原崇也〉

漁業組合の自主規制は5年目に

 静岡県桜えび漁業組合は25日(※2月25日)、静岡市清水区由比の由比港漁協で会合を開き、駿河湾産サクラエビの春漁の漁期を3月27日~6月8日(昨年は3月29日~6月4日)とすることを決めた。自主規制案も決定し、主産卵場の富士川沖などの湾奥を「保護区」にするなど2021年春漁を踏襲した。同組合は18年秋漁の自主規制導入以降、春漁主漁場の湾奥で本格操業をしていない。

サクラエビ
サクラエビ
 保護区内では、県水産・海洋技術研究所(焼津市)に事前連絡した上で、資源状況を把握するための「試験操業」のみを可能とした。由比・蒲原地区(静岡市)と大井川地区(焼津市)を合わせた駿河湾全域の操業隻数と投網時間については21年秋漁と同じ1日最大80隻、投網20分に制限。投網前の試験網による採取で「頭黒(あたまぐろ)」と呼ばれる産卵間近の親エビが3分の1以上含まれた場合は操業しない方針を継続する。
 任期満了に伴う役員改選では蒲原地区の実石正則組合長(65)の再任が決まった。副組合長には由比地区の原剛氏(60)、大井川地区の鈴木光豊氏(63)を再選した。任期はいずれも3年。
 〈2022.2.26 あなたの静岡新聞〉

昨年の春漁は水揚げ140トン いまだ回復途上

 駿河湾産サクラエビの春漁期が4日(※2021年6月4日)、終了した。水揚げ量は昨年秋漁に比べ1・4倍の約140トン(出漁計19日)。極度の不漁に見舞われている近年の中では漁が上向いたかに見えるが、十数年前までは春漁だけで千トン以上を水揚げしており、宮原淳一由比港漁協組合長(80)は「いまだ回復の途上だ」と述べた。

2021年の駿河湾産サクラエビ春漁の初競り=同年3月31日、静岡市清水区の由比漁港
2021年の駿河湾産サクラエビ春漁の初競り=同年3月31日、静岡市清水区の由比漁港
 静岡県桜えび漁業組合は主産卵場を保護するため事実上の禁漁区としていた富士川沖について、ことしの春漁では新たに操業可能な「保護区」に設定して臨んだ。1日夜の資源調査で群れが見られ、数回の産卵調査でも卵が確認されたが、依然として全漁期を通じて群れは薄く不安定だった。
photo01
駿河湾産サクラエビ漁の水揚げ量推移(最近5年間)

 漁期終盤の5月20日以降に700~千杯程度(1杯=15キロ)の漁獲が集中した。全漁期通じての累計平均価格は昨年春漁に比べ15%以上安い7万2700円程度だった。
 宮原組合長ら複数の漁業関係者によると、5月下旬には富士川沖でも群れが確認され、最終的に保護区内で85杯の水揚げがあった。しかし、同月中旬までは群れがほぼ見られない状況。主漁場は同漁協と三保の中間地点の沖合3~5キロだった。
 富士川下流部では、採石業者による長年の不法投棄が原因とみられる粘着性の高分子凝集剤入りポリマー汚泥が蓄積し、生態系への影響が甚大だ。県はサクラエビを含め多様な生物に影響している可能性があるとして、山梨県と協力した汚泥の拡散状況の科学的な調査に乗り出す方針。
 〈2021.6.5 あなたの静岡新聞〉

資源量「回復の初期段階」 静岡県報告

 記録的な不漁が続く駿河湾産サクラエビについて漁業関係者や学識者らが話し合う「サクラエビ漁に係る情報連絡会」が17日(※2月17日)、静岡市清水区由比の由比港漁協で開かれた。県水産・海洋技術研究所(焼津市)の担当者は資源状況について昨年を振り返り「引き続き回復期の初期段階のまま」だと報告。漁獲規制の継続を求めた。

情報連絡会後に記者からの質問を受ける原剛(右)、鈴木光豊(左)両副組合長=静岡市清水区由比の由比港漁協
情報連絡会後に記者からの質問を受ける原剛(右)、鈴木光豊(左)両副組合長=静岡市清水区由比の由比港漁協
 2021年は春漁と秋漁を合わせて36回出漁し、計281・6トンを漁獲した。不漁以前に比べて依然、低水準だが、20年を上回る結果となった。担当者はエビの平均体長や群れの密度などの指標に大きな変化はないとした。秋漁時の調査で、主産卵場の湾奥に春以降、産卵期を迎える0歳エビが多く確認でき、資源回復の兆しがあるとしつつ「油断せず親エビを年々増やすことが最優先」と今後の指針を示した。
 会議後、県桜えび漁業組合の原剛、鈴木光豊両副組合長は「回復段階と聞けて良かった。漁師としてもずいぶん増えてきたなという感覚がある」「自主規制を継続しながら昨年を超える漁獲量を期待したい」と春漁への展望を語った。漁期や規制内容は3月初旬までに決めるとした。
 〈2022.2.18 あなたの静岡新聞〉

富士川の水枯れ改善へ サクラエビに好影響あるか

 駿河湾産サクラエビの不漁を契機に注目される富士川の河川環境について、国土交通省は17日(※2月17日)、渇水期でも維持すべき流量として「河川維持流量」を設定すると発表した。戦時期から続く日本軽金属の水利権が存在し、これまで調整が難しい面があった。水枯れが伝えられる富士川本流の河川環境にとって大きな転機となりそうだ。

日本軽金属塩之沢えん堤(中央)で自家水力発電用の水が大量取水され河川下流の水量が極端に少なくなっている富士川本流。右岸には波木井発電所がある=2021年8月、山梨県身延町(静岡新聞社ヘリ「ジェリコ1号」から)
日本軽金属塩之沢えん堤(中央)で自家水力発電用の水が大量取水され河川下流の水量が極端に少なくなっている富士川本流。右岸には波木井発電所がある=2021年8月、山梨県身延町(静岡新聞社ヘリ「ジェリコ1号」から)
 同日の衆院予算委員会分科会で田中健氏(国民民主党、比例東海)の質問に、井上智夫水管理・国土保全局長が答弁した。井上局長は「2022年度中には維持流量を設定する」と述べた。さらに、20年3月に水利権の更新期限を迎えた日軽金波木井発電所(山梨県身延町)について「取水を減らして河川の水を増量できないか流域自治体や日軽金と合意形成を図っている」と明かした。
 国の固定価格買い取り制度(FIT)を使って売電している波木井発電所の取水量が一定程度減ることで、維持流量の設定が可能になるとみられる。
 富士川水系には1922(大正11)年に水利権を許可された波木井発電所をはじめ、日軽金が自家発電用に使用する施設が多数ある。発電のため取水した水は基本的に川に戻らず、導水管を経て同社蒲原製造所(静岡市清水区)の放水路から駿河湾に注いでいる。このため、富士川本流の水量は慢性的に少なく、釣りやラフティングなどのスポーツを行う人たちが維持流量設定を強く望んでいた。
 上流域の濁りや不法投棄された有害物質は希釈されず、放水路からサクラエビの産卵場の湾奥に注ぎ、漁師らからも水利権を疑問視する声が出ていた。
 田中氏は「住民への説明なくFITでの売電を行うのはガイドライン違反では」と指摘。資源エネルギー庁の茂木正省エネルギー・新エネルギー部長は「違反の場合、法に基づき指導する。改めて事業者に事情を聴き、関係自治体に確認する」と答弁した。

 〈メモ〉河川維持流量 1997(平成9)年改正の河川法1条を受け、施行令10条で設定が求められている河川環境保全のための目安。1級と2級河川において策定が義務付けられた「河川整備基本方針」などの中に盛り込むよう定められている。国土交通省によると、国が管理する109の1級河川のうち、富士川を含めた1割強の14河川でいまも設定されていない。
 〈2022.2.18 あなたの静岡新聞〉