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いつできる? 紆余曲折の下田市庁舎移転事業

 最初の移転計画発表から10年が経過し、足踏みが続いている下田市の庁舎移転事業。この間に市長が3人交代し、そのたびに計画が変更されてきましたが、4人目の松木正一郎市長がこのたび発表したコスト縮減の新計画で、ようやく決着を見せようとしています。これまでの経緯をまとめました。
 〈静岡新聞社編集局未来戦略チーム・尾原崇也〉

費用15~25%縮減 松木市長発表の新計画 2026年度完全移転予定

 コロナ禍での財源不足などを理由に延期された下田市の庁舎移転事業が2022年度から再び動きだそうとしている。最初の移転計画発表から10年、4人の市長が関わり、政治や社会情勢に翻弄[ほんろう]された計画は、当初のほぼ半分に規模を縮小した新築庁舎と、築40年の中学校舎を活用する形で決着を見せようとしている。

2019年に下田市が取得し、そのままの状態が続く新庁舎建設予定地(手前)。左奥が庁舎として活用する予定の稲生沢中の校舎=同市河内
2019年に下田市が取得し、そのままの状態が続く新庁舎建設予定地(手前)。左奥が庁舎として活用する予定の稲生沢中の校舎=同市河内
 「現実的な最適解にたどり着けた」。事業の延期発表から1年3カ月、松木正一郎市長は市庁舎移転方針を説明した24日の定例記者会見で安堵[あんど]感をにじませた。
 市の新計画は、伊豆急行線蓮台寺駅に近い同市河内の移転計画地に、延べ床面積2500~3千平方メートルの新庁舎を建設し、3月末で閉校する稲生沢中の校舎を改修、庁舎に活用する。最も古い棟が築65年の現庁舎は当面使用する部分を耐震補強し、一部の機能は23年度に校舎へ先行移転する。新庁舎完成後の完全移転は26年度を予定する。
 新庁舎建設は09年の計画当初、現在地建て替えを計画していた。しかし、11年の東日本大震災を受け、翌12年、当時の石井直樹市長は浸水想定域にある現在地から高台の敷根地区への移転を決定。後任の楠山俊介市長は14年、敷根地区の別の場所への移転計画を発表したが、市議会の理解を得られず、楠山氏は16年の市長選で福井祐輔氏に敗れた。
 福井氏は17年、現計画地への移転を決めたものの、庁舎内の議場の配置を巡り、議会と対立。さらに19年に県が計画地の最大2・2メートルの浸水想定を発表し、設計変更を余儀なくされた。20年の市長選で福井氏は敗れ、松木現市長が就任した。
 松木市長は「コスト縮減と洪水安全対策」を強調し、20年11月から事業を再検討した。安全面は1階を執務室とせずにクリアする考えだ。工費の総額は28億~32億円と見込み、費用縮減効果は約15~25%と概算する。縮減幅をどう見るかは、意見が分かれるだろう。
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下田市新庁舎完全移転時の配置イメージ

 一方、6億円弱をかけて改修する築40年の校舎は、松木市長も「20年が区切り」と語り、時限的な使用となる。ただ、人口急減が予測される下田市で20年後、2棟で計6千平方メートル近い庁舎は必要だろうか。機能に違いがあり、単純な比較はできないが、近隣の河津町や南伊豆町は約2千~3千平方メートルと半分の規模。新築庁舎で賄える可能性はある。
 巨費が必要な市庁舎建設の足踏みが、行政だけでなく、下田市全体の停滞につながっていた感は否めない。「ベター」な選択として、まずは再び歩みを進めることが必要だ。
 〈2022.2.27 あなたの静岡新聞「主張・解説しずおか」〉

高台移転方針、2012年に決定 東日本大震災受け判断

 下田市は19日(※2012年4月19日)、市幹部による政策会議を開き、新庁舎の高台建設に向けた最終的な協議を行い、移転の方針を決定した。会議終了後、石井直樹市長は「災害時の行政の初動体制を考えると一番メリットのある場所」と理由を説明した。市街地活性化のために跡地利用を検討する考えも示した。

高台移転が検討されている下田市役所=下田市東本郷
高台移転が検討されている下田市役所=下田市東本郷
 現庁舎(同市東本郷)の本館(鉄筋コンクリート2階建て)が建てられたのは1957年で、老朽化、耐震性などが課題となっている。下田港から北に約1キロ離れた海抜2・5メートルの位置。  2009年9月から庁舎建設を検討してきた同市は、一度は現在地での建て替えを決めたが、東日本大震災を受けて高台移転を模索し始めた。
 市街地に近く利便性が高い現在地も有力候補地だったが、内閣府有識者検討会が発表した津波高推計値の25・3メートルが決め手となり庁内検討委員会は11日、現庁舎の西約1・5キロの敷根公園(同市敷根)を建設地にする方針を固めた。海抜約50メートルの同公園に建設し、震災時の防災拠点にする狙い。
 市は来月1日の全員協議会で議員に最終決定の内容を説明する方針。新庁舎の完成は15年9月を目指していたが、移転に伴う法的な変更手続きで1年半ほどずれる見込み。
 〈2012.4.19 静岡新聞夕刊〉

前市長が移転場所を現在地に変更

 下田市議会は7日(※2017年12月7日)、市役所の移転に向けた位置条例改正案を可決した。津波浸水想定区域の中心市街地に位置する現在地から、約2キロ北側で区域外の稲生沢地区へ新築移転する。国が財政支援する緊急防災・減債事業債を活用し、適用期限内の2020年度中の新庁舎完成を目指す。

 老朽化に伴う建て替え検討開始から8年2カ月。曲折を経て、移転場所が正式に決まった。2回目の審議で可決され、福井祐輔市長は「市民の関心が高い重要な施策を決めることができた。今後の手続きも慎重に進めたい」と話した。
 議員13人の採決は賛成11人、反対2人。同案を否決した9月議会で反対した5人のうち、3人が賛成に回り、特別多数議決での可決に必要な3分の2を上回った。
 9月議会では、複数の議員が市民への説明や事前準備の不足を反対理由に挙げた。このため、市は市長と住民との意見交換会やアンケートを重ね、県や警察など関係機関と諸手続きを確認。「移転場所への反対は少ない。災害時の安全性や交通アクセスを考慮すると、稲生沢地区が最適」として、12月議会に同じ案を再提出した。
 移転場所は市立稲生沢中に隣接する民有地。国道414号沿いで、伊豆急蓮台寺駅にも近い。少子化に伴う学校再編により、将来的に同校は閉校になる計画で、市は一体となった整備を進める。
 下田市役所は本館建設から60年が経過し、耐震基準も満たしていない。手狭で駐車場台数は少なく、早期建て替えを求める声が強まっていた。
 市は今後、新庁舎の用地取得や設計、開発許可申請などを進めるとともに、現庁舎の跡地利用を検討する。
 〈2017.12.8 静岡新聞朝刊〉

コロナ対応を理由に事業執行を延期していた

 下田市は5日(※2020年11月5日)、着工が延期されている市役所新庁舎建設について、新型コロナウイルス対応による財政への影響を踏まえ、2020年度の事業執行を延期すると市議会全員協議会で明らかにした。建設財源の大半を占める国の緊急防災・減災事業債(緊防債)の期限である20年度中の着工は難しくなり、延長されない場合、財源などへの影響は必至。このため21年度に事業を再検討する。

事業の執行延期が決まった市役所新庁舎建設予定地=下田市河内
事業の執行延期が決まった市役所新庁舎建設予定地=下田市河内
 市は市議会12月定例会で20年度事業費13億1100万円の減額補正案を提出する方針。全協で市当局は、20年度の市の財政は1億円超、21年度も約3億7千万円の減収が見込まれ、建設事業を進めれば「財源不足拡大が避けられない」と説明。建設計画地が稲生沢川の洪水浸水想定域に含まれたことも踏まえ、現計画地を基本に既存施設の活用も含めて「安価」「安全」「早期整備」の視点から21年度に再検討するとした。松木正一郎市長は「見直しをするからには、コストが下がることを大前提とする」と述べた。
 新市庁舎建設は17年12月に同市河内の稲生沢中隣接地に決定した。用地取得の遅れや入札不調もあり、着工が当初予定の19年秋から大幅に遅れていた。
 緊防債は期限延長の可能性があるが、先行きは不透明。既に執行した事業費2億9千万円のうち、2億2600万円を市の独自財源で繰り上げ償還する必要が生じる可能性もある。
 同市庁舎は、最も古い本館が1957年に完成。耐震基準を満たしておらず、建て替えが急務となっている。
 〈2020.11.5 静岡新聞夕刊〉