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茶業復興の切り札 有機茶って?

 世界的な健康意識の高まりを背景に緑茶の輸出が拡大する中、国内の生産現場では、農薬や化学肥料を使わないで栽培する有機茶に注目が集まっています。静岡県は、県内の栽培面積を倍増する目標を打ち出し、茶業復興の切り札の一つに位置付けました。最新の情報をまとめました。
 〈静岡新聞社編集局未来戦略チーム・尾原崇也〉

欧州中心に需要増 既存茶畑から切り替え進むか

 静岡県は茶業振興計画案(2022~25年度)で、県内の有機茶栽培面積を20年の約2倍の400ヘクタールとする方針を示した。目標到達に向け、農家の生産意欲向上につながるような生産・販売戦略づくりが求められる。

県内の有機茶栽培面積の拡大に向け、農家の生産意欲向上につながる戦略が求められる
県内の有機茶栽培面積の拡大に向け、農家の生産意欲向上につながる戦略が求められる
 県が目標設定の参考としたのは、国が21年に策定した「みどりの食料システム戦略」だ。有機農業は化学的に合成された肥料や農薬を使わず、生物多様性の維持や環境負荷軽減につながる期待がある。国は現状1%未満の有機農業の国内耕作面積を、50年までに全体の25%まで広げる構想を掲げる。
 県が有機栽培の重点品目に茶を選ぶ背景には、海外輸出の好調さがある。国内リーフ茶需要の減少傾向に歯止めがかからず、生産量・販売価格の両面で低迷が続く一方、海外での健康意識の高まりにより、輸出は右肩上がりだ。21年の輸出量は前年比17・1%増の6178トン、金額ベースは26・1%増の204億1824万円と過去最高を更新した。
 有機栽培茶は、農産物の農薬基準が厳しい欧州を中心に需要が上向いている。県は有機茶栽培と並行し、県産茶の輸出額を20年比70・0%増の58億円に引き上げる目標を示す。  有機茶生産に取り組む動きは鹿児島、宮崎などの産地でも活発で、県内の製茶問屋の中には、他県産も仕入れて輸出する企業が多い。県茶商工業協同組合の佐々木余志彦理事長は「需要の高まりから、世界的に有機茶が足りなくなる未来も考えられる。有機茶作りは静岡茶の輸出増につながる」と期待する。
 行政が奨励する一方で、既存の茶畑を有機栽培向けに切り替える費用や、化学肥料を使わない茶づくりに不安を感じる農家は多い。川根本町の茶農家は「農薬を全く使わないと病害で茶樹がやられてしまう。有機栽培は簡単ではない」と話す。
 県は茶業研究センターなどで、有機茶の品質や収穫量の安定に向けた施肥や害虫対策といった研究を進めている。JAなどと連携し、農家の実情に合った有機栽培の在り方を調査し、具体的に提案していく取り組みが求められる。
 海外出張による商談機会が少なくなる中、外国の新規顧客獲得に苦戦する製茶会社もある。生産者の利益につながるよう、ウェブ商談会開催など販路開拓支援も並行して積極的に進めることを期待したい。
 〈2022.2.20 あなたの静岡新聞「解説・主張しずおか」〉

緑茶輸出好調 有機茶増産が継続の鍵

 緑茶の輸出拡大が続いている。財務省が28日(※1月28日)発表した貿易統計によると、2021年の輸出量は前年比17・1%増の6178トン、金額ベースは26・1%増の204億1824万円といずれも過去最高を更新した。新型コロナウイルス感染症の流行を背景に、世界各国で健康への意識が高まっていることが要因とみられる。

緑茶の輸出量と輸出額の推移
緑茶の輸出量と輸出額の推移
 主要輸出国の米国は、行動制限の影響などで2月は低調だったが、個人消費が回復した3月以降は順調に数字を伸ばした。金額順でみた輸出先は、米国が22・1%増の103億90万円とトップで全体の半分を占めた。2位のドイツが20億2104万円(73・9%増)、台湾17億318万円(9・9%増)と続いた。
 菓子や健康食品の原料などに使用される粉末緑茶や抹茶など「粉末状のもの」の需要が高く、輸出額全体の65・3%を占めた。ドリンク関連やティーバッグ向けの茶葉出荷も堅調に推移した。
 緑茶輸出は健康志向の高まりや抹茶ブームなどを背景に、15年に100億円を突破して以来拡大基調が続く。リーフ茶の国内需要が低迷する中、茶業復興の打開策として、国や県は輸出向けの有機栽培茶の生産や販売の支援に取り組む。
 日本茶輸出組合によると、21年はリモートでの商談に対応し、数字を伸ばした。谷本宏太郎副理事長は「急須で飲むリーフ茶の輸出も増えた。カクテルの原料など、緑茶の用途は多様化している」と期待を寄せる。県茶業会議所の伊藤智尚専務理事は「生産者の利益につながるよう、適正価格で取引されていくことに期待したい」と話す。
 〈2022.1.29 あなたの静岡新聞〉

2025年度までに栽培面積倍増 静岡県目標

 静岡県は27日(※1月27日)、緑茶輸出額を2020年比で7割増の58億円に引き上げる目標を掲げる22~25年度県茶業振興計画の具体案を発表した。農家収入を示す産出額は、新型コロナウイルス禍で大幅な減産となった20年比41・3%増の287億円まで回復させる。

静岡県内の有機栽培茶園の面積拡大目標
静岡県内の有機栽培茶園の面積拡大目標
 拡大基調の緑茶輸出をさらに伸ばすため、安全性などの海外基準を満たす国際認証取得を後押しする。輸出に対応するため、有機栽培面積を2倍の400ヘクタールまで広げる。
 消費形態の多様化に対応した茶生産や、電子商取引(EC)による販路拡大なども支援する。ティーバッグやペットボトル飲料向けの需要の増加や、全国的な生産者減少で国産緑茶の供給が不足する事態に備え、三番茶生産などで茶畑の面積当たり生産量を増やす。
 茶業関係者のほか、観光、流通などの異業種が知見を持ち寄って消費拡大策を展開する「ChaOI(チャオイ)プロジェクト」を柱に、販路開拓や生産基盤強化に取り組む。国連が掲げる持続可能な開発目標(SDGs)や脱炭素社会に対応し、化学肥料使用の削減や、製茶工場で使う重油に代わるガスやバイオマスなどの普及を進める。
 計画案は県のホームページから閲覧できる。パブリックコメント(県民意見公募)を2月21日まで受け付けている。
 〈2022.1.28 あなたの静岡新聞〉

全国茶品評会 有機栽培の松下園(掛川)に大臣賞

 静岡市葵区の静岡茶市場で開かれた第75回全国茶品評会(全国茶生産団体連合会など主催)は最終日の19日(※2021年11月19日)、審査結果を発表し、県勢は深蒸し煎茶の部で松下園(掛川市)が最高賞の農林水産大臣賞に輝いた。一方、普通煎茶4キロの部は7年ぶりに大臣賞を逃し、埼玉県の茶生産者が受賞した。

大臣賞を初受賞した松下園の(右から)松下芳春さん、みどりさん、彰さん=掛川市満水
大臣賞を初受賞した松下園の(右から)松下芳春さん、みどりさん、彰さん=掛川市満水
 松下園は初の栄冠。県勢による深蒸し煎茶の部の大臣賞受賞は20年連続となった。入賞者が多い自治体に贈られる同部門の「産地賞」は掛川市が2年連続で受賞した。
 品評会は18都府県から8部門に831点の出品があった。本県からは149点の出品があり、16~18日にかけて茶葉の外観や香気、水色などを審査した。
 掛川市満水の松下園が大臣賞を初めて受賞した。同園は2000年に有機JAS認証を取得し、長年有機茶の生産販売に取り組んでいる。念願の受賞に代表の松下芳春さん(66)は「お茶の神様がほほえんでくれた」と語った。
 品評会への出品は次男の彰さん(32)が20歳で就農したのがきっかけ。知識を深めるとともに、掛川市が産地賞を取って地域全体が良くなるようにと続けている。生産加工を担当する彰さんは「今後も有機だからおいしいお茶を作りたい」と力を込めた。芳春さんの妻みどりさん(60)も「夫や息子たちの努力が形になった」と目を細めた。
 同園は1915年創業。18ヘクタールの茶園で有機茶を栽培し、カフェ「ティータイムまるは」を経営する。現在は緑茶リキュールの開発も進めている。
 〈2021.11.20 あなたの静岡新聞〉