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静岡県 荒茶生産量 日本一を死守

 新型コロナ禍の巣ごもり需要を背景に昨年、静岡県の「荒茶」の生産量は3年ぶりに増加に転じ、全国シェア首位を死守しました。荒茶とはどんな物か、荒茶を巡る最近の動きとは。1ページにまとめました。
 〈静岡新聞社編集局未来戦略チーム・鈴木美晴〉

「巣ごもり需要」で二番茶が急伸

 農林水産省が18日発表した2021年産茶の生産統計によると、静岡県の荒茶生産量は前年比17・8%増の2万9700トン、全国シェアは2ポイント上昇の38%で首位を守った。ティーバッグやペットボトルに使用される二番茶が「巣ごもり需要」などで大幅に伸びて3年ぶりに増加に転じた。ただ、3年連続で大台の3万トンを割り込み、ピーク時の1975年の5割強にとどまる。

静岡・鹿児島両県の荒茶生産量推移
静岡・鹿児島両県の荒茶生産量推移
 前年に1300トン差に詰め寄られた2位鹿児島県は10・8%増の2万6500トンと差が拡大した。全国的に気象条件に恵まれ、国内の荒茶生産量は11・8%増の7万8100トンと増産傾向だった。
 本県の荒茶生産量を茶期別でみると、主力の一番茶が前年比2・7%増に対して、比較的安価な二番茶以降は26・8%増と急伸した。掛川市内の製茶問屋によると、高級茶が中心の一番茶は需要が限られたが、二番茶は新型コロナウイルス禍による健康志向の高まりを背景に、通販用などの原料として引き合いが強かったという。
 JA静岡経済連の推計によると、1キロ当たりの平均単価は一番茶が18・5%高の2085円、二番茶は44・1%高の800円、三番茶12・5%高の360円など。価格が安定したことで、農家の生産意欲が上向いたとみられる。
 県茶業会議所の伊藤智尚専務理事は「多様化する消費者の嗜好(しこう)に合った商品づくりを進め、静岡茶の魅力をアピールしていく必要がある」と語った。
 生産統計調査は昨年12月、主要生産地8府県の597カ所を対象に行い、486工場から回答があった(回答率81・4%)。
 〈2022.02.19 あなたの静岡新聞〉

荒茶とは取引用の半製品のこと

 荒茶とは、摘採後すぐに茶工場で蒸し、揉み、乾燥された取引用の半製品のこと。茶産地での取引もあるが、静岡県内では大半が静岡市葵区の問屋街に集められ、製茶されて全国へ発送される。

荒茶と生葉の販売額合計「産出額」も首位奪還

 農林水産省は24日(※2021年12月)、2020年の農業産出額を発表し、静岡県の茶は2年ぶりに首位に返り咲いた。前年比19・1%減で203億円だったものの、前年に初めて静岡県を抜いて全国1位となった鹿児島が21・4%減の198億円に落ち込んだ。

静岡県と鹿児島県の茶産出額と荒茶生産量の推移
静岡県と鹿児島県の茶産出額と荒茶生産量の推移
 茶産出額は、生葉と、生葉を製品の前段階に加工した荒茶の販売額の合計。本県は生葉が118億円(19・7%減)、荒茶85億円(18・2%減)に対し、鹿児島は生葉130億円(20・2%減)、荒茶68億円(23・5%減)だった。
 20年は新型コロナウイルスの感染拡大時期と新茶シーズンが重なり、急須で入れるリーフ茶の需要減退に追い打ちをかけた。製茶問屋は仕入れをストップし、減産に踏み切る茶農家も多かった。全国の生葉産出額でも21・6%減の409億円と落ち込んだ。
 静岡県の茶産出額は1992年の862億円をピークに下降基調にある。生産量では全国トップを維持しているものの、19年は251億円に終わり、252億円の鹿児島に1970年から続いた首位の座を明け渡した。
 首位奪還を果たしたが、生産者の収入に直結する産出額の落ち込みに県は危機感を隠さない。お茶振興課の小林栄人課長は「消費者のニーズに合った茶づくりに向けて努力していきたい」と話す。
〈2021.12.25 あなたの静岡新聞〉

ベンチャー企業の若手 製造を承継

 水野嘉彦さん(26)と池崎修一郎さん(29)が所属する茶販売を展開するベンチャー企業TeaRoom(ティールーム、東京都)が、静岡市内の製茶問屋と提携し、同市葵区の大河内北茶農業協同組合の事業を承継した。2人は新天地で、荒茶製造を始めた。水野さんは「日本文化を未来につなぐ仕事をしたかった。お茶の持つ精神性にひかれた」と振り返る。

製茶工場を運営し、新たな発想で商品開発に取り組む水野さん(中央)と池崎さん(左)、梶原さん=静岡市葵区渡
製茶工場を運営し、新たな発想で商品開発に取り組む水野さん(中央)と池崎さん(左)、梶原さん=静岡市葵区渡
  移住当初、山間地の気候や農作業に苦労したが、夢中で働いているうちに地元の住民は受け入れてくれた。製茶工場は20年に事業体「THE CRAFT FARM(ザ・クラフトファーム)」として独立。菓子店や蒸留所などと協業し、ケーキと合う香り高いブレンドティーや、茶葉を使ったジンなどを開発した。
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キルフェボンと連携して開発したブレンドティー。ケーキやフルーツタルトと合うように風味を工夫した

  静岡発祥の菓子店「キルフェボン」(東京都)と連携して10月(※2021年)に開発したのは、バニラやハーブの香りを加えた2種類の煎茶。日本茶とフルーツタルトの組み合わせを考え抜いた。冬以降もユズなどを使った商品を投入していく。
  今年から新たに梶原康太さん(26)が仲間に加わった。保険会社に勤務していたが、心機一転、お茶の世界に入ることを決意した。「加工方法で商品ががらっと変わる、お茶のビジネスに魅力を感じる」と話す。
  有機栽培茶の海外輸出や、ウーロン茶など発酵茶の開発。販路拡大に向けて予定しているプランはたくさんある。水野さんは「お茶本来の可能性を考えれば未来は明るい。新たなビジネスモデルを提案し、本山地域を盛り上げていきたい」と意気込みを語る。
〈2021.11.26 静岡新聞朝刊〉