知っとこ 旬な話題を深堀り、分かりやすく。静岡の今がよく見えてきます

静岡市が整備再開 海洋文化施設って?

 新型コロナウイルス感染症の影響を受け2020年に計画が停止していた、清水港の海洋文化施設について、静岡市は整備事業の再開方針を固めました。水族館と博物館を融合した世界初の施設となる見込みで周辺地域の活性化も期待されます。一方で建設費用は膨大な額で、今後の進展を注意深く見守る必要があります。施設の概要やこれまでの経過をまとめました。
 〈静岡新聞社編集局TEAM NEXT・吉田直人〉

今春から事業者公募開始 2025年度中の完成目指す

 静岡市は26日までに、新型コロナウイルスの感染拡大でストップした清水港の海洋文化施設整備計画を再開するため、2022年度一般会計当初予算案に当初計画と同額程度の約170億円の債務負担行為を盛り込む方針を固めた。新型変異株「オミクロン株」の感染拡大が続いているものの、収束後を見据えて民間事業者の投資意欲が戻りつつあるため、事業再開にかじを切る。22年春からパートナーとなる民間事業者の公募を始め、施設の完成は25年度中を目指す。

静岡市が整備計画の再開方針を決めた「海洋・地球総合ミュージアム(仮称)」の建設予定地(赤斜線内)=2021年12月中旬、清水港(静岡新聞社ヘリ「ジェリコ1号」から)
静岡市が整備計画の再開方針を決めた「海洋・地球総合ミュージアム(仮称)」の建設予定地(赤斜線内)=2021年12月中旬、清水港(静岡新聞社ヘリ「ジェリコ1号」から)
 整備計画を巡っては、市議会が2019年10月、169億6千万円の債務負担行為を盛り込んだ補正予算案を可決したが、コロナ禍により、市は20年5月に計画の凍結を決定した。市議会は同年10月に債務負担行為の廃止を盛り込んだ補正予算案を可決、予算上は計画がいったん白紙になっていた。

 ■建設費100億円 市合併後最大
 静岡市が26日までに、新型コロナウイルス禍で凍結した整備計画の再開を決めた「海洋・地球総合ミュージアム(仮称)」。2022年度一般会計当初予算案に盛り込む方針の約170億円の債務負担行為のうち、100億円程度を建物の建設費と想定している。03年の旧静岡市と旧清水市の合併以降に完成した市長部局の大型事業の建設費を単純比較すると、同ミュージアムはJR清水駅東口の清水文化会館マリナートの約76億円を抜き、最高額になる見通しだ。
photo01
静清合併後の静岡市の大型建設事業(金額順)

 市に情報開示請求をして財産台帳に記載された市有施設の価格を調べた。一部は大型設備類の価格を含む上、物価変動もあり、統一基準で比べられない面はあるが、マリナートのほか、静岡科学館る・く・る(約68億円)やJR静岡駅北口地下駐車場「エキパ」(約45億円)が建物の建設費の上位を占める。23年1月の完成を目指して建築中の市歴史博物館は、約46億円を見込む。同ミュージアムには、これらを大きく上回る建設費が投じられることになる。
 PFIのパートナーとなる民間事業者について市は、事業を凍結して以降も水面下で10社以上とオンラインによるサウンディング(対話)を続けてきた。相手は展示を専門とする企業や建設会社、水族館運営経験のある企業などだ。昨夏の緊急事態宣言下でも対話を続けたが、市の担当者は「どこまで関心があるのか対面でないと本音が把握しきれなかった」と振り返る。
 凍結前には、PFI参画に関心を持つ企業グループとの対話がまとまりかけていたが、コロナ禍で頓挫した。ワクチン接種の広がりで、9月以降、一気に対話が加速し、再び複数の企業グループが具体的な関心を持ち始めているという。
〈2022.01.26 あなたの静岡新聞〉

世界初の「ハイブリッド式」採用 水族館と博物館を融合

 静岡市は8日(※2018年8月)、総合ミュージアムを掲げる清水港海洋文化拠点施設の基本計画を策定する委員会の初会合を市役所清水庁舎で開き、素案で水族館と博物館を融合した世界初の「ハイブリッド式」を展示手法に採用する方針を示した。デジタル技術を駆使した展示や体験型プログラムなどを通じ、海洋科学の価値を発信するという。

静岡市が素案で示した拠点施設内のイメージ図の一部
静岡市が素案で示した拠点施設内のイメージ図の一部
 海洋分野の先端研究や産業の集積、国際的な集客、同分野で世界的に活躍する人材の育成などを進めるための中核拠点と位置付ける。施設テーマに総合ミュージアムを据え、来館者が身近に広がる駿河湾の魅力の奥深さに触れながら、地球や海洋への理解を深められるよう配慮する。
 最先端の研究成果は誰にでも分かりやすいように翻訳し、外部のクリエイターなどを活用して知的好奇心を刺激する内容に再構築する。施設内のイメージ図を複数披露した。
 委員からは「総合ミュージアムとしながら科学館的な色が強い」「海洋と地域の歴史、文化とのつながりも理解できる場にしたい」「デジタル技術を多用すると、展示の更新が難しくなるのでは」といった意見が出た。
 素案は同日、市ホームページで公開され、9月にパブリックコメントが実施される。市海洋文化都市推進本部は「市民が寄せる期待や発想、創意工夫などを踏まえつつ、地域の宝となる拠点施設の基本計画を年内にまとめたい」としている。
 委員会は地域関係者や専門家ら計8人で構成。会長に水族館長経験者で博物館教育の専門家である福山大生命工学部の高田浩二教授が、副会長に東海大の川上哲太朗副学長が就いた。
〈2018.08.09 静岡新聞朝刊〉

 ■経済効果は約600億円
 静岡市は15日(※2019年10月)までに、2023年度前半の開業を目指して清水区の臨海部に整備する海洋文化施設が地元にもたらす経済効果を試算して報告書にまとめた。施設の建設時3年間と開館後15年間の経済波及効果の合計を約600億円と算出した。17日までの市議会9月定例会では、総事業費242億円から入館料収入を差し引いた169億円の債務負担行為を審議中。市は報告書を巨額な税投入の妥当性を説く材料にしている。
 施設建設に伴う需要増加で生まれる直接効果は99億2400万円、間接効果は86億6400万円。開館後の運営費と来場者の支出での直接効果は226億6400万円、間接効果は188億4300万円とはじいた。
 このほか雇用や税収、定住人口に寄与する諸効果も分析。雇用面は建設時に単年度平均約千人、開館後に同230人、市内の定住人口は建設時に同2千人強、開館後に同約450人の増加をそれぞれ想定。税収は建設時約6億9千万円、開館後約21億7千万円の増加を見込んだ。
 市は水族館と博物館を融合した「海洋・地球総合ミュージアム(仮称)」の整備を港町清水の再生への投資と位置付ける。施設を拠点に区内で最先端の海洋分野の研究・教育が盛んに行われ、最新知見を求めて関連産業が近隣に集積する将来像を描く。市海洋文化都市推進本部は「報告書に盛り込み切れなかった新産業創出や臨海部の再開発促進といった経済的利点も生じる」とみている。
〈2019.10.16 静岡新聞朝刊〉

2020年に事業停止、コロナ禍受け 清水庁舎移転なども対象

 静岡市は28日(※2020年5月)までに、市役所清水庁舎の移転新築などの大型ハード事業を凍結する方針を固めた。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、計画に必須の民間参入が見通せず、事業計画を大幅に見直す必要があると判断した。6月1日に予定していた新清水庁舎の入札受け付けは無期延期する。関係者への取材で分かった。

移転計画の凍結方針が明らかになった静岡市役所清水庁舎(手前中央)=2016年12月、静岡市清水区(静岡新聞社ヘリ「ジェリコ1号から」)
移転計画の凍結方針が明らかになった静岡市役所清水庁舎(手前中央)=2016年12月、静岡市清水区(静岡新聞社ヘリ「ジェリコ1号から」)
 凍結するのは清水庁舎移転新築をはじめ、清水港で計画している水族館機能を持たせた海洋文化施設、駿府城公園近隣に博物館として建設予定の歴史文化施設の計3事業。29日にも庁内で幹部会議を開き、合意形成する。7月に予定していた海洋文化施設の入札受け付けも無期延期する。
 3事業の総事業費は約400億円(清水庁舎94億円、海洋文化施設242億円、歴史文化施設65億円)。田辺信宏市長は13日の定例記者会見で、既存事業の「聖域なき見直し」を明言していた。新型コロナウイルスに関する感染防止、経済支援の財政支出が続く中、数年かけて計画してきた主要事業も例外にはできないと判断したとみられる。
 3事業を凍結した場合、事業をいつどのように再開するか、新型コロナウイルスの収束状況や経済状況を見極めながらの難しい判断を迫られそうだ。特に清水庁舎は移転後の跡地に、独立行政法人地域医療機能推進機構が運営する桜ケ丘病院(清水区)を移転させる計画があり、事業の遅れが移転に影響するのは必至だ。
 関係者によると、市と同機構は計画見直しを含めて今後、意見をすり合わせるための場の設置を検討している。既に設計を終えている歴史文化施設は、条件が整えば、年度内に再開する可能性もあるという。
〈2020.05.29 静岡新聞朝刊〉

清水港への寄港増と周辺開発に期待感

 静岡市が26日までに新型コロナウイルス禍でストップしていた「海洋・地球総合ミュージアム(仮称)」の整備事業を再開する方針を決めたことで、官民による周辺地域の開発が進みそうだ。

静岡市が計画再開を決めた海洋文化施設整備予定地。大型クルーズ船が停泊する岸壁にほど近い場所は更地のままだ=1月中旬、清水港
静岡市が計画再開を決めた海洋文化施設整備予定地。大型クルーズ船が停泊する岸壁にほど近い場所は更地のままだ=1月中旬、清水港
 建設地は外国の大型客船などが頻繁に寄港する日の出岸壁の目と鼻の先。寄港は2017年度に過去最多の42回を数えた。関係者によると、同ミュージアムの基本構想が策定された同年6月の時点で「客船の乗客が施設を訪れることを期待する声があった」という。
 1990年2月の豪華客船「クイーン・エリザベス2」初寄港をきっかけに、同年4月にできた清水港客船誘致委員会。2代目会長に就任した山田英夫天野回漕店社長(69)は「欧米では海外クルーズの運航が再開している。港の魅力向上による寄港増を期待する」と話す。清水港寄港は2020年度、コロナ禍で7回まで落ち込んだが、本年度は1月現在、全て日本船とはいえ10回に持ち直した。
 施設整備は運営を民間事業者が担う「民間資金活用による社会資本整備(PFI)」のスキームを活用する。総事業費約240億円のうち、約70億円は15年間の入場料収入でまかなう見込みで、残る約170億円を来年度一般会計当初予算案に計上する。施設は「海洋・地球総合ミュージアム(仮称)」(延べ床面積9500平方メートル)で、水族館(水量1千トン規模)と博物館の機能を併せ持ち、教育機能も備える。
photo01
海洋文化施設 建設予定地

 市は展示物監修などで海洋研究開発機構(JAMSTEC)や、1970年開館で施設が老朽化している三保半島の水族館(水量700~800トン)を運営する東海大と、連携のための覚書を締結済み。事業再開は静岡-山梨間の中部横断自動車道が昨夏に全線開通した影響も大きい。市は建設時と開館後15年間の経済波及効果を約600億円と試算している。
 同委員会事務局によると、清水港に寄港する外国の大型客船の場合、乗客千人程度のうち、約半数が下船し、オプショナルツアーで伊豆・修禅寺や富士宮市の県富士山世界遺産センターに出掛ける。
 担当者は「客船誘致は県内全体の観光振興にも有効だ」と指摘。「関東方面に行く客船に必ず寄ってもらえる港にしたい」と意気込む。
 日の出岸壁は大型客船が2隻同時に着岸できるよう、国が来年度まで工事中。県は21~30年度に総額53億円を投じ、周辺の防潮堤整備、空き倉庫を乗船客の待機所や商業施設などとして再活用する計画などを進める。エスパルスドリームプラザ(ドリプラ)も昨春、ミニ遊園地をオープンさせるなど日の出地区の開発計画を練る。
 19年7月に「清水みなとまちづくりグランドデザイン」を発表した一般社団法人「清水みなとまちづくり公民連携協議会」は、日の出地区など港内各地域ごとに一層具体的なプランを議論する。
 同協議会のワークショップに参加したことがあるドリプラの運営会社の大井一郎社長(62)は「施設の整備再開が決まれば日の出地区のみならず、『面』としてつながる清水の他地域で止まっていた民間投資が動き出す。まさに地域活性化の起爆剤になる」と指摘した。
〈2022.01.27 あなたの静岡新聞〉