地域経済活性化の鍵 デジタル地域通貨って何?
地域を限定し、その範囲内で使える「デジタル地域通貨」。浜松市が2022年度、本格調査に乗り出します。スマートフォンなどで支払うキャッシュレス決済が身近になってきていますが、そもそも「デジタル通貨」とはなんでしょう。西伊豆の「サンセットコイン」の先進事例も紹介します。
〈静岡新聞社編集局TEAM NEXT・石岡美来〉
浜松市、導入へ調査 経済の域内循環狙う
浜松市は2022年度、市内での買い物に使用できるデジタル地域通貨の導入に向けて調査に乗り出す。当初予算案に他地域の先行事例研究などの経費を盛り込む方針。
近年はネット通販の拡大などを背景に、生活地域外での買い物の機会が増え、経済の域内循環が困難になっている。地域通貨は域内での消費を促すほか、各種料金の支払いに活用できれば、利便性向上や行政コストの削減が期待できる。ボランティア活動にポイントを付与するなど、交流の促進に生かそうとする自治体もある。
一方、手法によっては多額の経費が必要なことから、市は導入の可否について慎重に検討する。
〈2021.1.7 あなたの静岡新聞〉
デジタル通貨ってなに?
インターネット上でやりとりされ、財産的な価値を持つ電子データ。紙幣や硬貨より手軽に支払いができるのが利点だ。暗号資産(仮想通貨)の「ビットコイン」や、米IT大手メタ(旧フェイスブック)が発行計画を主導する「ディエム(旧リブラ)」が当てはまるほか、日本で既に普及した電子マネーなどを含むこともある。世界では、国の法定通貨を電子化した「中央銀行デジタル通貨(CBDC)」導入の動きもあり、日銀も国内で実証実験に着手している。
先進事例は西伊豆の「サンセットコイン」 国のマイナポイント事業と連携も
新型コロナ禍で経済が厳しさを増す中、西伊豆町の電子地域通貨「サンセットコイン」が地域消費を促し、経済に好影響を与えている。単位を町自慢の「夕陽」から「ユーヒ」と名付け、1ユーヒを1円換算する仕組みで、町はチャージ機能だけでなく、行政施策とひも付けてユーヒを付与するなど利用価値を高めてきた。流通額は約2億円に上り、外部からも注目を集める。
国のマイナポイント事業に絡めてユーヒを上乗せ還元する事業も行い、マイナンバーカードの交付率は全国の自治体で3番目に高い50・5%(20年12月1日時点)。こうした実績を参考にしようと、これまでに熊本県や香川県の自治体、本県では小山町議会などが視察に訪れた。
町まちづくり課の長島司課長は「楽しんで使える仕掛けが経済の好循環につながる。事業者の負担も考慮し、さらなる普及を目指したい」と意気込む。
■定着へ 大手スマホ決済との差別化が鍵
電子地域通貨は2000年代初頭にブームとなり、管理の難しさから一度は衰退したが、キャッシュレスの普及やコロナ禍で再び注目を集めている。
岐阜県の飛騨信用組合が3年前に導入した「さるぼぼコイン」は流通額約25億円の先進事例として知られる。12月からは飛騨牛の希少部位や知られざる観光情報などさるぼぼコインでしか買えない商品やサービスを提供する事業を始めた。担当者は「大手のスマホ決済が浸透する中、面白い特典を設けるなど差別化を図ることが利用者の増加や定着に欠かせない」と強調する。
〈2021.1.13 静岡新聞朝刊〉
魚の売買も地域通貨で! 西伊豆ならではの取り組みで差別化
大物を狙い漁師気分を味わって-。西伊豆町は8日(※2021年9月)、釣り人が遊漁船で釣った魚を町独自の電子通貨で買い取る企画「ツッテ西伊豆」を始めた。釣り好きをターゲットに町内への誘客を図るとともに、漁師の高齢化で年々減少する漁獲量の回復も狙った一石二鳥のアイデア。町担当者は「新たなレジャーとして普及させたい」と意欲を示す。
査定対象は西伊豆遊漁船組合に加盟する提携船で釣った魚のみ。品質管理のため、利用者は釣り始める前に船長から魚の締め方や保管方法などを学ぶ。売買時には、船長の指導を受けた証明書が必要。同組合の山田雅志代表(53)は「家族連れなどビギナーの人でも十分楽しめる。乱獲に気を付け、受け入れを進めていきたい」と意気込む。
地域回遊につなげるため、料金は町内店舗で使える町独自の電子通貨「サンセットコイン」として専用カードかスマートフォンアプリに支払われる。提携船の一覧など詳細は「ツッテ西伊豆」のホームページに掲載している。
〈2021.9.9 あなたの静岡新聞〉