新型コロナウイルス感染症(新型肺炎)ミニ知識
ワクチンなぜ早くできた? 研究・データ蓄積、審査も迅速【ミニ知識】
通常10年以上かかるワクチンの実用化が新型コロナウイルスでは1年未満という異例のスピードで実現し、日本でも欧米企業が開発した「RNAワクチン」という新タイプの製品の接種が近く始まる見通しだ。なぜこれほど早くできたのか。 自身もRNAワクチンを研究する内田智士・川崎市産業振興財団副主幹研究員(京都府立医大准教授)によると、幾つもの要因が重なっている。 数年は必要なワクチンの設計や動物実験は、似たウイルスによる重症急性呼吸器症候群(SARS)などの研究成果を生かし短縮できた上、3段階の臨床試験(治験)も計5~7年のところ、接種後の経過観察の間に次の段階を始めるなどして数カ月に。当局の審査も迅
症状ない人から感染 米「50%以上占める」と推計【ミニ知識】
新型コロナウイルスの封じ込めが難しいのは、症状がなく感染を自覚していない人からも感染が広がるためだ。 そうした感染がどれだけあるのかは不明だが、米疾病対策センター(CDC)はこのほど、感染の50%以上を占めているとの推計をまとめた。症状がなくてもマスクをし、人との距離を取るなどの対策を続けることが重要だとしている。 チームは過去の研究に基づき①感染者の感染力のピークは発症日前後②感染しても約3割は発症しない③症状が出ないままの人の感染力は症状がある人よりやや弱い-などの仮定を置いて推計した。すると、症状が出る前の未発症の人からの感染が35%、症状が出ないままの人からの感染が24%で、合わ
感染リスクは人間以外も 絶滅危惧のゴリラなど【ミニ知識】
新型コロナウイルスは猫や犬、ミンクなどへの感染も明らかになっており、他にどんな動物に感染のリスクがあるのか、調査が進行中だ。その一つ、米カリフォルニア大を中心とする国際チームの研究を紹介しよう。 ウイルスが細胞に感染する際に取り付く「ACE2」というタンパク質がある。チームは410種類の動物のACE2が、人間のものとどのくらい似ているかを遺伝子などで調べ、似ている度合いによって感染リスクを5段階に分けた。 類似性が高くリスクが「非常に高い」とされたのは、絶滅が心配されるニシローランドゴリラ、ボノボなどを含む霊長類18種類。猫や牛は中程度、犬や馬は低いとの結果になった。チームは魚類、両生類
手洗い1日11回以上推奨、はなかんだ後も忘れずに【ミニ知識】
「コロナ慣れ」も指摘されるこの冬、改めて見直したい身近な予防策が手洗いだ。東京医大チームの調査で、必要な場面で手洗いができている人は2割程度と判明した。チームは回答の分析を基に「1日11回以上の手洗いを心掛けて」と呼び掛けている。 昨年6月、関東地方の約2000人に、外出後や食事の前など、感染予防のための手指衛生が大切な五つの場面で、手洗いかアルコール消毒をどの程度実施しているかを尋ねた。「いつも」実施している率が最も低かったのは「せきやくしゃみ、はなをかんだ後」で30.2%。最高は「外出後」の76.4%で次が「トイレの後」(68.1%)だった。 全ての場面でいつもしていたのは21.1%
感染急増地域 知事ら「家でもマスク」提案【ミニ知識】
新型コロナウイルスから家族を守るには「外から持ち込まない」が第一。だが感染急増地域の自治体や専門家はもう一歩踏み込み「家でもマスクを」との提案を始めた。 東京都と隣接3県の知事はこのほど、高齢者や基礎疾患のある人がいる家庭では、家の中でもマスクをするよう呼び掛けた。都内で感染経路が明らかな新規感染者の4割強が同居家族から、という実態が背景にある。 やはり拡大が深刻な大阪府にあるりんくう総合医療センターの倭正也医師も「マスクをしていれば簡単にはうつらない」と話し、重症化リスクが高い人がいる家庭でのマスク着用に賛同する。加えて「普段の換気も大切」とアドバイス。風呂場などの換気扇を常時動かし、
マスク、鼻まできちんと覆って【ミニ知識】
新型コロナウイルスの飛沫(ひまつ)を防ぐ効果が、各種の研究で明らかになってきたマスク。理化学研究所のスーパーコンピューター「富岳」を使った解析でこのほど、判明済みの飛沫拡散防止効果に加え、着けている人を一定程度守る効果もありそうだとの結果が出た。 研究したのは理研の坪倉誠チームリーダーら。6秒間の呼吸で大小の飛沫が鼻や喉にどのくらい入るかを、不織布マスク装着時とマスクなしの場合に分けて計算した。 その結果、マスクをしていると、していない場合に比べて入ってくる飛沫の数を3分の1に減らせることが分かった。坪倉さんは「マスクから鼻が出ている人がいるが、自分を守るためには鼻もきちんと覆ったほうが
湿度高すぎはカビ生えやすく 室内の目安は40~60%【ミニ知識】
室内での新型コロナウイルスの感染リスクを下げるには、マスク着用や換気に加え適度な保湿も大切だ。政府は「湿度40%以上」との目安を公表した。各種の研究からは「40~60%」のメリットが大きいようだ。 冬の室内は乾燥しがち。空気が乾燥すると、感染を防ぐ人体の働きが低下する。気道に入ってきた病原体を捉えて外へ押し出す粘膜や線毛の動きが鈍くなり、ウイルスなどが肺の奥まで入り込みやすくなってしまう。 感染者が排出するウイルスを含んだ飛沫(ひまつ)も、乾いた空気の中では水分が早く蒸発し、軽くなって室内を長く遠くまで漂う。その結果、別の人が吸い込んで感染する危険性が高まる。 湿度は高いほど良いわけで
重症化リスク、高齢者顕著「我慢せず早く受診を」【ミニ知識】
新型コロナウイルス流行「第3波」の拡大で、東京都、大阪府、北海道などを中心に、新規感染者数とともに重症者数も増えている。重症とは、集中治療室(ICU)での治療や人工呼吸器の使用が必要な患者のこと。死亡する恐れがあるだけでなく回復にも時間がかかり、長期間の入院が必要になることが多い。 コロナに感染した場合、重症化しやすい要因として特に影響が大きいのは高齢であることだ。 厚生労働省が年代別の重症化率を10月時点でまとめたところ、30代を1とすると50代は10倍、60代は25倍、70代は47倍、80代は71倍と、年代が上がるほど急激に増えていた。逆に10代は0.2倍、20代は0.3倍。 国立
「集団免疫」の問題点 多数の死者、避けられず【ミニ知識】
集団の一定数以上が特定の感染症への免疫を持つと新たな流行を防ぐことができる。これを「集団免疫」と呼び、ワクチン接種で達成を目指すのが一般的。世界保健機関(WHO)によると、はしかは95%以上の接種で、ポリオ(小児まひ)は80%以上で達成できる。 新型コロナウイルスのワクチンはまだ実用化していない。そこで「感染しても軽く済む若者に積極的に感染を広げれば社会全体の免疫力が上がるのでは」と言う人がいる。 しかしWHOや多くの研究者はこの考え方に強く反対する。自然感染では発症して重症になったり死亡したりする人も出るからだ。WHOの専門家は「死亡するのは仮に感染者の1%としても世界全体では膨大な数
冬の手指衛生 保湿が大切【ミニ知識】
新型コロナをはじめ感染症の予防に手指の衛生は大切。寒く乾燥する冬場の注意点について、感染管理が専門の静岡県立静岡がんセンターの工藤友子看護師は「しっかり保湿し手荒れを防ぐことが大切」と話す。手が荒れると水がしみて痛んだりし、手洗いが不十分になりやすいためだ。 手洗いの水温はぬるま湯程度が最適。せっけんをよく泡立て、20秒ほどかけて両手をもみ洗いし、よくすすいだ後、タオルでやさしく押さえるようにして水気を完全に取る。保湿はハンドクリームで。冬は手洗いの度にクリームを塗るくらいの意識でよいという。 外出時は手洗いがおっくうになりがち。そこで小さなボトル入りアルコール消毒液を持ち歩くのも一案だ
免疫 短期間の可能性、予防重要【ミニ知識】
新型コロナウイルスに感染した人の体内には、ウイルスへの免疫ができるはず。その免疫はどのくらい続くか、再感染を防ぐ働きはあるのかについて、明確な結論は出ていないが、持続は短期間との可能性も指摘されている。研究者らは「現時点では、誰もが手洗いや室内でのマスク着用などの予防策を取ることが重要だ」と強調する。 米カリフォルニア大などのチームが軽症のコロナ患者約30人を発症から3カ月程度追跡したところ、一般にウイルス排除に関係するとされる血液中の抗体が時間とともに減ることを見つけた。 一方、抗体は少なくとも5カ月は持続するとの報告もある。米国の別のチームが中等症までの患者121人を詳しく調べた結果
第1波より少ない死者 早期検査と治療が奏功【ミニ知識】
新型コロナウイルスの新規感染者は11月に急増し、流行「第3波」との受け止めが広がる。一方で亡くなる人は、感染者の増加傾向が見え始めた10月以降も1日当たり数人~十数人。流行第1波の4~5月は1日に20~30人の死者が報告されることがあったのに比べると少ない。違いはどこにあるのだろうか。 一つは重症化リスクが大きい高齢の感染者がそれほど増えていないことがある。政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会メンバーの脇田隆字・国立感染症研究所長によると、高齢者施設や医療機関では感染者が出ても早期に周囲の検査を進め、感染を拡大させない対応が定着したという。 治療法も標準化された。抗ウイルス薬やステロ
冬場の予防策 換気扇を活用 暖房は窓の近くに【ミニ知識】
新型コロナウイルスの感染予防には換気が重要。しかし寒い冬に窓を全開にするのは難しい。どうすればいいだろうか。 室内環境と人の健康について研究する北海道大の林基哉教授は「室内温度が下がらない程度に換気を工夫することが必要。無理をすると寒さで体調を崩す恐れがある」とし、冬場は換気扇を活用する方法を提案する。具体的には、風呂場やトイレの換気扇を常に回しておく。24時間換気設備がある住宅なら、フィルター掃除などで正しく機能するようにしよう。 来客時など多人数が集まる場合は、窓の換気を併用する。常時少しだけ窓を開け、窓際に暖房を置いて入ってくる空気を暖める。人が居ない部屋から外気を入れ、間接的に換
欧州の行動制限措置 距離を取るのは体だけに【ミニ知識】
新型コロナウイルスの急速な再拡大を受けてフランス、英国など欧州各国は10月下旬以降、相次いで外出制限などの行動制限措置を導入している。 世界保健機関(WHO)は、孤独感やウイルスに対する恐怖、将来への不安などから、人々の心の健康が悪化することを懸念。「対人距離の確保は重要だが、人とのつながりは保って」と改めて呼び掛けている。 コロナの主要感染ルートは、感染者のせきや発話の際に口や鼻から出る飛沫(ひまつ)を吸い込むなどすること。そのリスクを下げるため、WHOは人との距離を1メートル以上取ることを推奨している。 流行の初期にはこれを「ソーシャルディスタンス」(社会的距離)と呼んだが、ほどな
体調不良、長引く人も 厚労省が実態調査へ
新型コロナウイルス感染症から回復した人の中には、肺機能の低下をはじめとする体調不良が長く続く人がいることが分かってきた。頻度や持続期間などは明らかになっていない。そこで厚生労働省は、回復者2千人を対象に、実態を調べ解決策を探る研究を始めることを決めた。来年3月まで続けるという。 こうした「後遺症」のような症状について、イタリアから最近、注目すべき論文が発表された。 退院者向け外来を設置した1施設を訪れた19~84歳の計143人についての経過報告で、発症から平均2カ月後の時点で、87%が何らかの不調を抱え、55%は三つ以上の症状があった。 訴えが多いのは倦怠(けんたい)感(53%)、息苦
避難時荷物もコロナ仕様に マスクや消毒液重要に
コロナ禍の中、自然災害が相次ぐ。誰もが直面し得る突然の避難に備え、非常持ち出し袋の中身もコロナを意識し見直そうと、防災教育に携わる研究者らでつくる「新型コロナウイルスと災害避難を考える会」が12項目の持ち物リストを作成した。マスクや消毒液などの重要性が増している。 メンバーの根本昌宏・日本赤十字北海道看護大教授に、大人1人が歩いて避難する際に「最低限必要な物」を選んでもらうと6項目になった。 マスクは風雨災害では汚れやすいため使い捨てなら1人20枚あると安心。アルコール消毒液は500ミリリットルボトル1本あれば家族で使える。持病の薬は1週間分を。命を守る飲料水は500ミリリットルペットボ
「マイクロ飛沫」にも注意 3密回避と換気が有効
新型コロナウイルスの感染経路として、せきやくしゃみなどのしぶき(飛沫)を吸い込む「飛沫感染」が知られている。それに加えて日本感染症学会は、さらに細かい「マイクロ飛沫」による感染にも注意を呼び掛けている。室内の音楽イベントなどでは、マイクロ飛沫を意識した対策が必要になりそうだ。 飛沫は一般に千分の5ミリ以上の粒子を指す。ある程度重さがあるため飛距離は短い。だが、より小さいマイクロ飛沫は、会話や発声の際に放出されると空気中をしばらく漂い、少し離れた場所に行くこともあるようだ。マスクが有効だが、大声を出せば隙間から漏れ出る可能性も指摘されている。 世界保健機関(WHO)も微細な粒子による感染に
症状なくても感染源に 「会話時はマスク」大切
新型コロナウイルスは症状がない人からも感染するといわれるが、頻度はどのくらいだろう。 京都大などの研究チームが、国内で発生した5人以上の集団感染例で「この人から広がった」と特定できた人を調べたところ、9人(41%)は症状が出る前に他人にうつしていたことが分かった。 うつした日を絞り込めたのは16人。一番多かったのは発症前日で5人。次いで発症当日(4人)、発症2日前(3人)と続く。発症3日前という人も1人おり、発症後よりも発症前の方が多いという結果だった。 発症前にうつしたのは20代が4人、30代が2人と若い世代が多いが、60代、70代、80代も1人ずついた。 厚生労働省は、5分間会話
外出時の手袋着用は不要 消毒や看病では励行を
新型コロナウイルスが付着した手で目、鼻、口に触ると感染の恐れがある。それを心配してか、買い物などの外出時に手袋をする人もいるが、世界保健機関(WHO)は「手袋をした手で顔を触れば同じこと。感染予防には、素手をせっけんで小まめに洗う方が効果的」と注意を促している。 米疾病対策センター(CDC)も外出時の手袋着用は「必要ではない」とする。「手袋着用が勧められるのは、家を清掃するときと病気の人をケアするとき」と明快だ。 普段の清掃、消毒時は洗剤や消毒薬に書いてある注意書きに従うこと。刺激が強い薬剤もあるので、手袋をすれば手荒れを防ぐことができる。換気にも気を配りたい。手袋を外した後はせっけんで
住居用洗剤も消毒に使える 特定の界面活性剤が有効
テーブルやドアノブなどに付いた新型コロナウイルスの消毒には、住居用の洗剤も使える。主成分の「界面活性剤」の一部が新型コロナに有効であることが、国の調査で確かめられた。 6月26日時点で有効性が確認された界面活性剤は「アルキルグリコシド」や「純せっけん分(脂肪酸カリウム)」など9種類で、住居用やトイレ・浴室用と幅広い製品に含まれる。界面活性剤の種類は製品ラベルで確認を。表示された使用方法通りに使おう。 台所用の洗剤も薄めれば消毒に使える。濃度は水500ミリリットルに対し洗剤小さじ1杯(5グラム)が目安。薄め液を布などに染み込ませて拭き取る。拭いて5分ほどしたら、水拭きと仕上げのから拭きをす