静岡新聞 2020年10月10日

鬼滅の刃、私も夢中 静岡県内ファン 読む、見る、語る…

鬼滅の刃、私も夢中 静岡県内ファン 読む、見る、語る…

「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」より (c)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

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 子どもを中心に異例のヒットを続ける漫画「鬼滅の刃」。
大正時代の少年を主人公に、鬼との壮絶な戦いが世代を問わずとりこにする。
単行本やテレビアニメがファン層を広げ、10月には映画「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」が全国公開される。
静岡県内でも目にする社会現象の現場を訪ね、ブームの熱量を確かめた。

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 「劇場版―」は、主人公の竈門炭治郎たちが無限列車に乗り込むシーンで終了したテレビアニメ最終話からつながる物語。多くの行方不明者を出している無限列車捜索の任務を背負い、特殊能力を持つ〝鬼〟との戦いに挑む。

かつてない

 静岡市葵区のシネシティザート、清水町のシネプラザサントムーンを運営する静活は「かつてないレベルの上映回数になる。複数のスクリーンを使って1日15回以上か」。新型コロナウイルス対策として各回の混雑を避ける側面もある。 藤枝市の藤枝シネ・プレーゴも、撮影スポットになるパネルがお目見えするなど公開をPR。コロナ禍で入場率が落ち込む中「劇場に活気を送る力のある作品」と期待を掛ける。

かつてない

映画館では10月に公開される劇場版の告知が始まっている=藤枝市の藤枝シネ・プレーゴ

一挙五千冊

 原作の単行本は現在21巻までが発刊。静岡市駿河区の江崎書店イトーヨーカドー店は計5千冊をうずたかく平積みし、圧巻の光景を見せている。6月までは品切れを繰り返していたが、「7月に運良く注文した全量が入荷し、思い切って並べた」とコミック担当の内田究さん(47)。現在も1日に50冊は売れ続け、「漫画本の中でも断トツ」。雑誌の連載は終了したが、最終巻まで残り2巻の発行を控え、映画公開も人気を後押しそう。小説版やカレンダーも好調な売れ行きという。

一挙五千冊

漫画単行本がうずたかく平積みされている店内=静岡市駿河区の江崎書店イトーヨーカドー静岡店

ご当地もの

 同作の関連商品は文房具、食玩、土産品まで幅広い。静岡空港(牧之原市)内の売店「しずおかマルシェ」はキャラクターのキーホルダーやペン、Tシャツなど100種類を取りそろえる。7月には売り場が2倍に広がり、富士山やワサビ、ミカンなど静岡のご当地名物とコラボレーションしたキーホルダーが登場した。 1番人気は、キャラクターが飛行機に乗ったキーホルダー。岡林高志店長(42)は「県内ではここだけの商品。コロナでも近場で旅行気分を楽しみたいという地元客でにぎわう」と、絶大な人気を実感する。

ご当地もの

ご当地キーホルダーをはじめ、100アイテムを取りそろえている特設コーナー=牧之原市の静岡空港

子どもの絵、刺しゅうに

 子どもが描いたキャラクターを愛らしい刺しゅうにー。静岡市葵区の前田恵さん(36)は幼稚園児・小学生の子ども3人のリクエストに応えてハンカチに刺しゅうを入れている。「休校中に家族で漫画を読んだのがきっかけ。グッズを買ってばかりもいられず、子どもが描いた絵をそのまま刺しゅうにしたら思いのほか喜んでくれた。毎日使うものだから、作りがいもある」これまでに刺しゅうしたキャラクターは炭治郎、禰豆子など10人以上。目や顔の傷など細かい部分も多く、刺しゅう糸でなくミシン糸を使う。親子のとっておきの思い出になりそうだ。

子どもの絵、刺しゅうに

前田恵さんは、子どもたちが描いたキャラクターを刺しゅうにする。一番人気は「禰豆子」=静岡市葵区


毛利康秀准教授に聞く毛利康秀准教授に聞く

 ヒットの要因としては次の理由があるだろう。まず、作品のプロットが今の時代に適合している。大正時代という設定を生かしながらも、内容はほとんどフィクションだ。その上で、主要な登場人物の描写は現代的なところがあって共感しやすく、「友情」「努力」「勝利」といった少年漫画の基本もきちんと押さえられているため、組み合わせが新鮮に映る。せりふが絶妙である点も指摘したい。伝統的・フォーマルな言葉遣いが見られる一方で「~かよ」「ゴラァ!」「察し」といった現代的・ネットスラング的な言い回しも多用されている。これらの巧みな組み合わせが、登場人物の軽妙なコミュニケーションを際だたせていて面白い。受け手それぞれの視点で楽しめる、懐の深い世界観もある。子どもにとっては敵を倒す話だし、青少年は主人公が成長する姿が自分に重なる。大人は家族愛の大切さや社会の理不尽さを感じ取るだろう。小学生の男の子とその母親が同時に「ハマって」いる例が多いが、特筆すべき現象だ。この組み合わせが世界観を共有して楽しむコンテンツは珍しいのではないか。(談)


LINEアンケート

 「鬼滅の刃」は、家庭にどう受け入れられているのか。子育て世代の女性が多い静岡新聞こちら女性編集室(こち女)のLINEアカウント登録者に、LINEを通じてアンケートを実施した。 回答者の64.8%が作品について「好き」、35.2%が「どちらでもない」と答えた。「好き」な人に作品に引かれた時期を聞くと、アニメの主題歌を歌うLISAさんがNHK紅白歌合戦に出場した19年12月以降が71.4%を占めた。漫画の連載開始は16年だが、20年以降に魅せられたファンが多いようだ。一方で、「漫画連載が始まった16年から」も約2割いた。
 作品を好きな理由について複数回答可で聞いたところ、9割以上が「ストーリー」と「キャラクター」を挙げた。「世界観への共感」も半数近くに上った。幅広い年代に受け入れられている理由を尋ねると、「残酷さの中に優しさがある」(42歳女性、静岡市清水区)「心を揺さぶられ励まされる言葉がたくさんある」(48歳女性、富士市)「皆、なにかしらつらい過去を背負って悲しみを越えていこうとしている」(40歳女性、菊川市)という答えが返ってきた。「王道すぎるほど王道。ただ、あれほど真っすぐでうそのない主人公が、ひねくれず登場するのは今どき珍しいのでは。敵対する鬼でさえ哀しみを抱えていることに理解を寄せているやさしさに、魅力を感じる」(50歳女性、藤枝市)という意見もあった。
 回答者の約7割は「家庭内にキャラクターグッズがある」とした。グッズの種類は、玩具やノベルティー(44.4%)、文房具や雑貨(37.0%)、飲料や食品(33.3%)の順だった。
 複数選択可で聞いた「好きな登場人物」は1位が竈門炭治郎(46.3%)、2位が竈門禰豆子(42.6%)。以下、冨岡義勇(37.0%)、胡蝶しのぶ(33.3%)、我妻善逸(29.6%)と続いた。
 アンケートは9月11~15日に実施した。54人から回答があった。

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メモ

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