感染後の経過 発症7~10日が分かれ目【続・専門医に聞く 今こそ知りたい感染症㊤】

 新型コロナウイルス感染症が広がり続けています。国内の検査陽性者数は40万人を超えました。変異株やワクチンなど、今知りたい新型コロナの基礎知識を、感染症専門医の荘司貴代さんが3回に分けて解説します。2020年夏に連載したインタビューの続編です。

新型コロナ感染症の経過イメージ
新型コロナ感染症の経過イメージ
新型コロナ感染症の経過イメージ

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 国内の流行地域では、感染して自宅で療養していた人が、入院できずに急死するケースが出ています。病状はどのような経過をたどるのか、整理しましょう。
 腎臓疾患や糖尿病、高血圧、肥満、あるいは高齢者といった、重症化するリスクの高い人でも、感染してすぐに悪化するわけではありません。軽い症状のまま治癒するか、悪化するかの分かれ目は、発症から7~10日目にやってきます。
 発症とは、わずかでも、何かしらの症状が現れたときを指します。ですが実際には、のどの違和感や軽いせき、だるさなどを訴えない方や自覚に乏しい方もいるので、発症日がはっきりしないことが多いです。悪化とは、呼吸、脈拍の回数が速くなり、意識がもうろうとなることです。
 目、鼻、口の粘膜から入ったウイルスは増殖しながら、のどから気管支、肺へと下りていくので、上気道炎(いわゆる風邪症状)や、嗅覚味覚異常を発症します。7~10日目になると免疫ができてウイルスを退治するため、風邪症状は治まり、他人にうつすこともなくなります。発症者の8割は、そのまま治ります。
 一方、残りの2割は、7~10日目を境に、酸素の投与が必要な中等症に進みます。肺炎を引き起こすまではウイルスの仕業ですが、ここからは違います。肺炎が進行して体に十分な酸素が行き渡らなくなったり、患者の免疫機能が過剰に働いて自身の細胞を傷つけたりします。
 非常に厄介なのは、息苦しさなどの自覚症状がないケースがあること。「幸せな」あるいは「静かな」低酸素症と呼ばれる、新型コロナ特有の症状です。
 低酸素症による急死を防ごうと、保健所の職員が毎日、自宅療養中の患者に電話で安否確認をしています。酸素飽和度を測る機器を持たされている方は、指示された値を下回ったら、速やかに保健所に連絡してください。
 本県でも病床が逼迫[ひっぱく]していた1月ごろには、医師が必要と判断しても、すぐに入院できない地域がありました。再び感染者が増えれば、自宅療養中の死者が出てしまうことは避けられません。全ての軽症患者に入院してもらうことはできないのですから、流行を止めるしかないのです。
 酸素や薬の投与、集中治療などの対症療法が世界中で共有され、病院で命を救える確率は上がりました。それは裏を返せば、有効な治療法がないことも分かっている、ということです。高度な機械を使ったとしても結局は、患者自身の体力で自然治癒するのを待つことしかできないのです。
(解説=県立こども病院感染対策室長 荘司貴代さん)

 しょうじ・たかよ 感染症専門医。小児科専門医。県新型コロナウイルス感染症対策専門家会議委員。東京都出身、東京女子医大卒。2014年から静岡県立こども病院勤務、18年から同院感染対策室長。44歳。

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