再考保育(2)保護者のニーズ多様化 「一時預かり」充実遠く

 「3月で閉園します」。静岡市駿河区の看護師天野育子さん(38)は2018年9月、三男(1)が通う同市内の認可外保育園の保護者会で、突然の報告を受けた。閉園の理由は、ここ数年続いていた経営難。追い打ちを掛けそうなのが19年10月に始まる幼児教育・保育の無償化だ。園長は「保育料の補助に上限がある認可外より、無償化になる認可保育所などを希望する家庭が増えると見込まれ、経営がさらに厳くなる」と説明した。

絵本を楽しむ1歳児クラスの園児たち。一番町保育園では、一時預かりで受け入れる子どももクラスに加わって活動するケースが多い=2018年12月下旬、静岡市葵区
絵本を楽しむ1歳児クラスの園児たち。一番町保育園では、一時預かりで受け入れる子どももクラスに加わって活動するケースが多い=2018年12月下旬、静岡市葵区

 天野さんは週2回6時間(月48時間)、クリニックで働くため、三男を同園に預けている。市内の認可保育所に入所申し込みが可能な月60時間以上の就労には満たない。3月の閉園を受け、仕事は辞める予定だ。看護師のキャリアにブランクを空けたくない、自身の収入も得たい。ただ、子どもとの時間も大切にしたい-。「バリバリと長時間働くか、専業主婦か、どちらかしか選べないのか。少しだけ働くという選択肢はないのか」。モヤモヤした気持ちが残る。
 認可保育所や認定こども園にも、在園児以外を一時的に預かる仕組みはある。短時間の就労や通院、リフレッシュなど理由を問わず利用できる。県こども未来課によると、県内約320カ所(17年度速報値)で実施されている。だが、受け入れ体制はまちまちで、希望者がいつでも預けられるわけではない。天野さんの場合も「安定的に予約が取れそうもなく、仕事のために使うのは難しい」と判断した。
 沼津市の主婦(30)も「一時預かり」の予約に苦労した経験がある。次女(0)を妊娠中、切迫早産になり、日中の長女(2)の預け先を探した。親戚は県外に住み、夫は長期の研修中だった。「電話を5園にかけて、全て断られた時は途方に暮れた」と振り返る。
 一時預かりの要望に思うように応えられない園側も、もどかしさを抱えている。
 静岡市葵区の一番町保育園の海野美代子園長は「年度末にかけて受け入れが難しい状況が続いている」と話す。年度当初はクラスを持たない、フリーの保育士3人が一時預かりを担当していた。だが、年度途中で乳児クラスの受け入れ人数が増えていき、後半には一時預かりに回す保育士がいなくなる。一時預かりのためだけに保育士を雇用できる補助金は国から出ていない。
 短時間の就労を希望するケースのほか、転勤族で親戚に子どもを預けられなかったり、年齢が近い乳幼児を複数育て負担を抱えたりする母親らから、問い合わせが多い。海野園長は「子育てや働き方にもっと選択肢が持てれば、子どもを産みたいと思う人も増えるのでは」と語り、多様なニーズに応えられる政策の必要性を訴える。

 <メモ>県こども未来課によると、保育所などの一時預かり事業(在園児以外を対象)の県内の実施箇所は2015~17年度、減少傾向。同課は「通常利用のニーズに対応する中で、一時預かりの需要に応えるだけの保育士確保が難しい状況がある」と分析している。17年度の年間延べ利用人数(速報値)は14万1472人。

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