私しかいない ひとり親家庭の今(4) 非婚の親、控除対象外

 厚生労働省の調査で、ひとり親家庭の貧困率は54・6%と、全体平均の16%を大きく上回った。さらに、同じひとり親家庭でも、結婚せずに子どもを育てている非婚の親は、寡婦(寡夫)控除が適用されない。そのため、所得税や住民税だけでなく、所得税額に基づいて算定される保育料や公営住宅の家賃も高くなる。多くの非婚の親が、控除が適用されないまま、生活苦に悲鳴を上げている。

 静岡県中部の美樹さん(仮名)は、毎年、年明けに税務署に行く。年末調整で職場が対応してくれた寡婦控除の申請を修正するためだ。「申請し忘れていると思ってくれるんですね。でも未婚だから虚偽申告になっちゃう。こっそり修正しに行くんです」
 15年前、未婚の母になった。臨月になっても顔が腫れるほど殴る彼氏と入籍に踏み切れないまま娘を出産した。彼氏は「泣き声がうるさい」と寝返りも打てない娘の顔に布団を何枚もかぶせ、美樹さんにも相変わらず暴力を振るった。1歳を過ぎても、娘は全く笑わなかった。髪の毛が抜けるほど引っ張られた夜、娘と家を飛び出した。母子手帳も写真も、全部置いたまま。
 生活は苦しかった。娘が5歳の時、唯一の肉親だった父が事故死し、母一人子一人の境遇になった。美樹さんの仕事を支えるために父がしてくれた娘の保育園の迎えや、してくれるはずだった学童保育の迎えはファミリーサポートセンターに頼らざるを得なくなり、毎月1万5千円の出費がかさんだ。
 娘の父親は認知を拒否。調停を起こしたが脅されて不成立だった。養育費も一度もない。経済的な不安は大きいが、むしろ「自分が死んだら、娘は天涯孤独になってしまう」という焦燥感が付きまとう。
 月収の15万円は学資保険や自分の保険、生活費を除くとほとんど残らない。計算では、寡婦控除が適用されれば年間7万円程度が浮くはずだった。7万円で、娘のためにできる事は多い。「私たちの生活は離婚者と同じなのに、なぜ」
 中学生になった娘は親戚から譲り受けた古着を「かわいい」と喜んでくれる。最近は友達の塾の話をすることもあるが、「○○ちゃんはあの塾がいいって言ってた」と言い出しても、すぐに「無理だよね」と自ら打ち消す。「高校で手に職を付けて、卒業したら働くよ」。そう語る娘に、美樹さんは心の中で「ごめん」とつぶやく。
 日本弁護士連合会は2013年、国と自治体に、非婚の親の救済を求める要望書を出した。これに前後して、非婚の母親にみなし寡婦控除を独自に適用する自治体が現れ始めた。県内では沼津市が市民要望をきっかけに庁内検討を始め、12年度から導入した。控除を適用した税額をベースに保育料を求め、控除前との差額を市がカバーする。毎年5〜10人が利用し、市の負担は40万円程度だ。担当者は「母子だけで生活している状況は、婚姻歴に関係なく変わらない」と取り組みの理由を語る。
 来年度は複数の市が導入を検討している。現場レベルの救済措置は、今後、広がりの兆しを見せている。

 <メモ>寡婦控除 夫と死別したか、離婚して再婚せずに子どもを扶養する女性の課税所得から一定額を控除する制度。控除が受けられる金額は27万円。条件を満たせば控除額は35万円に拡大される。男性向けに「寡夫控除」もある。

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