<親子に時間を>変わる職場(5・完)自営業、妻も経営を意識

 育児介護休業法による育児休業や短時間勤務といった両立支援策は、企業で働く女性のための制度。自営業者に嫁いだ女性たちは、独自に両立と活躍の道を模索している。

平日の夕方、保育園から帰宅した2人の娘の相手をしながら店舗に立つ小沢仁美さん(右)。義母も育児に協力的だ=3日、静岡市清水区の潮屋
平日の夕方、保育園から帰宅した2人の娘の相手をしながら店舗に立つ小沢仁美さん(右)。義母も育児に協力的だ=3日、静岡市清水区の潮屋

 夫、長男とともに酪農を営む富士宮市の土井智子さん(49)は3年前、牧場の一角に搾りたての牛乳を使ったジェラートや自家製パンを販売する店を開いた。子育てが一段落した後、菓子作りの特技を生かして夢を実現した。しかし、嫁いでから店を構えるまでの道のりは平たんではなかった。
 21歳で結婚し、1男2女に恵まれた。酪農経営と生活の在り方を真剣に見直した契機は約25年前。末娘の出産後、家業を手伝い始めたころだ。乳牛を扱う牧場では早朝と夕方に搾乳する。夕方の作業を終えて自宅に戻ると、既に午後7時すぎ。まだ小学校入学前だった3人の子どもたちは夕食を待ちくたびれて、居間で眠っていた。
 「家族のために働いているのに。何かが違う」。子どもと過ごす時間を増やすには、作業効率の悪い牛舎を建て変えるしかないと考え、夫を説得した。先進的な全国の牧場を見て回り、ノウハウを取り入れた。
 経営方針や収益の分配について家族間で話し合う家族経営協定を結び、牛舎の作業もマニュアル化。従業員を雇える体制が整うと、ようやく時間的なゆとりが生まれた。「嫁の立場は複雑だが、単なる手伝いでなく共同経営者としての意識が求められている」
 自営業者の妻の立場は「経営者と同一」とみなされ、育児休業などの制度も適用されない。「でも、自営なら自分なりに子育ての時間を捻出できる」。静岡市清水区の小沢仁美さん(35)は、2年前に約10年勤めた会社を退職し、嫁ぎ先の老舗和菓子店で働いている。
 注文が多い時は午前3時から深夜まで働くこともあるが、会社員時代に出産した2人の娘の子育ては、家族や近所の人たち、保育園の協力で乗り切っている。勤務時間が決まっていて、社会保険も充実した会社生活を懐かしく思うこともある。しかし、忙しいながらも家族一緒に働ける現状に不満はない。
 小沢さんは今、夫と新たな販売戦略を練っている。「『老舗』の看板だけでは生き残っていけない時代だからこそ次の一手が必要」。今後の店の経営に携わりながら、母として女性としての視点も生かしていけたらと考えている。

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