<親子に時間を>変わる職場(1)育児中の社員、戦力復帰

 「早期復職を支援する制度を新設した。可能なら一日も早く戦力として戻ってほしい」

育休復帰から間もなく1年を迎える蓬田規代さん(右)。短時間勤務中だが、最近は中元カタログの製作なども任され、業務の幅を広げている=2月下旬、浜松市中区の遠鉄百貨店
育休復帰から間もなく1年を迎える蓬田規代さん(右)。短時間勤務中だが、最近は中元カタログの製作なども任され、業務の幅を広げている=2月下旬、浜松市中区の遠鉄百貨店

 2015年2月。前年7月に第1子を出産し、育児休業(育休)中だった蓬田規代さん(36)の元に勤務先の遠鉄百貨店(浜松市)から電話が入った。
 子どもが1歳になるまで取得できる育休期間は残り5カ月。しかし電話を受ける前から蓬田さんは3カ月前倒して4月中に復帰することを決めていた。待機児童が多い地域では「0歳児の4月入園」が最も入りやすいためだ。「この会社で働き続けたい」という思いが強かったが、「子育てに専念できる時間も惜しい」という心残りもあった。揺れる心を、「戦力」として期待する会社の制度が後押しした。
 早期復帰制度は育休や短時間勤務(時短)の利用期間を短縮した場合、保育所や学童保育の利用料を半額補助する。蓬田さんのほかに、昨年は時短中の30代女性が予定より3年早くフルタイム勤務に復帰した。今春には、育休中の数人が早期復帰する見通しという。
 従業員の女性比率は約50%。育休は法定通りだが、時短の利用可能期間は小学3年生までと、法定の「3歳未満」を上回り、仕事と育児の両立支援は充実している。現在、約150人の女性正社員のうち7人が育休、16人が時短を利用している。
 一方、現場ではこんな声があったと人事担当者は打ち明ける。「子育て中の社員が多く、勤務態勢が組みづらい」
 内閣府のレポートによると、05年から09年に第1子を出産した女性正規職員のうち育休を取得して就業継続した人は43・1%で、20年前の4倍に増えた。時短利用も増加傾向の中、多くの企業が課題として挙げるのは、同僚の業務負担が増すことだ。職場を離れる期間が長引けば、女性自身が実績を重ねづらくなる状況にも陥りかねない。
 「どうすれば時短でも成果を出せるか。これからが真の課題だ」。昨年、時短を3歳未満から、小学4年生の始期に達するまでに延長した静岡鉄道(静岡市)の今田智久社長は、難しいかじ取りに挑む。
 スーパーなど同社が営む小売店のレジを流れる人の9割は女性だ。消費の鍵を握る女性の視点を経営戦略に生かすためにも、戦力化を進める女性社員に対し、両立支援は欠かせない。時短延長は女性有志社員からの提言を受けて決断した。
 今年1月、経営幹部会議に有志社員が出席し、「長時間労働を是とする風土を改めて」「時間でなく、仕事の成果で評価を」と訴えた。同僚より先に退社することに「後ろめたさ」を抱くという時短中の女性の声。「男性を含めた働き方の問題。耳の痛い話だった」。今田社長は振り返る。
 しかし、働きやすさの追求が会社の利益を圧迫するだけなら、雇用自体が守れなくなる。早速、社長直轄プロジェクトチームに業務効率の見直しを指示した。
 21世紀職業財団会長の岩田喜美枝氏は、企業の両立支援制度が整いつつある一方、「女性だけに優しすぎる制度は時に女性の活躍を阻害する」とも。さらに両立支援は転換期にあると指摘し、「重視すべきは、働く時間や場所に制約のある人材でも成果を出せる働き方をつくること」と語る。
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 少子高齢化に伴う労働力人口の減少が懸念される中、育児などで働く時間に制約のある女性の戦力化を企業は模索する。4月の女性活躍推進法の全面施行を前に、静岡県内の職場の今を追った。

 <メモ>2009年の改正育児・介護休業法は、3歳未満の子どもを養育する労働者に対する短時間勤務や残業免除の制度設置を事業主の義務とした。16年4月に全面施行される女性活躍推進法は、301人以上の従業員を雇用する事業主や国、自治体に女性登用などの具体的な行動計画策定を義務付けた。

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