<親子に時間を>イクメンの選択(6・完)識者インタビュー

 育児に積極的な男性「イクメン」が増えると今後の日本人の働き方は変わるのか。イクメンが直面している日本的雇用慣行の課題について浜口桂一郎労働政策研究・研修機構主席統括研究員(57)に、イクメン世代の意識とその背景を田中俊之武蔵大助教(40)=男性学=に聞いた。


 ■雇用慣行の根源議論 浜口桂一郎・労働政策研究・研修機構主席統括研究員
 ―日本的雇用慣行について教えてください。
 「戦後から労使で積み上げた規範としての雇用の在り方。典型的な点が長期雇用、年功処遇の中で職務、時間、場所を無限定に働くこと」

 ―世界的にみた特徴とは何ですか。
 「学歴で社員、準社員、職工と分かれる身分制を戦後に解消し、ホワイトカラーとブルーカラーを同じ社員とした上で長期雇用、年功処遇の仕組みを築いた。男性に限れば世界で先駆的に平等化した企業社会だ。無限定に働く『頑張る』人は上に上がれる。出世民主主義と呼び、社会全体の効率を維持できた。欧米は今も職務による身分制が残っている」

 ―日本企業に今、何が起きていますか。
 「子どもを抱えた女性は男性同様に『頑張る』ことはできない。男性に限れば平等な企業社会を実現したために、後から女性を入れるのが難しいという皮肉な状況にある。どこまで『頑張る』かも職務で決まっている欧米は、不平等かもしれないが、男女とも無限定に働かなくても、それなりの生活ができる」

 ―日本企業の今後を展望してください。
 「労働力人口が減る中、育児や介護をしながら働く人が増えれば、転勤や長時間労働ができない人が多数派となる。将来的には労働時間を規制しなければ、社会は持続できなくなる。ただ、平等な企業社会をどの程度諦めるのかという問題でもある。雇用慣行は法律ではないので労働者の間で根源から議論し、時間をかけて解決するしかない」
 ■「40年仕事中心」再考 田中俊之・武蔵大助教
 ―イクメン世代には仕事と家庭の両立で悩んでいる人がいるようです。
 「生きづらさを感じる30~40代男性が増えているのは確か。この世代は上の世代より家事・育児に意欲的だが、仕事の上では出世競争の真っ最中。時間外労働が当たり前の現状では、仕事か家庭かどちらかを犠牲にせざるを得ないので悩む」

 ―どんな背景があるのでしょうか。
 「高度経済成長期には、男性が主な稼ぎ手となることを理想とする家庭像があった。しかし、景気低迷による男性の収入低下や雇用の流動化傾向は止まらず、理想と現実の差が広がっている」

 ―よりよい解決策はありますか。
 「男性の働き方を抜本的に見直そうという議論が起きている。夫が残業を減らして家事・育児の時間を増やし、妻がフルタイムで共働きすれば世帯年収は増える。そうすれば、過労死やうつも減るだろう。育児や介護で仕事をスローダウンする時期があってもいい。『男性は40年間フルタイムで働く』という前提から再考すべき。男性が仕事中心の生き方から解放されるという話でもある」

 ―女性が育児と両立できる職場はまだまだ少ないのが現状です。
 「確かに本人たちだけで解決するのは無理がある。政治や社会、企業が責任を持って、女性活用や育児支援に当たるべきだ。専業主婦を否定するつもりもない。男性も女性も、働くかどうか、どんな風に働くかを選択すればよい。性別にとらわれない多様な生き方ができることが重要だ」

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