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亡父と仲間のシベリア抑留体験 静岡の窪田さん、改訂出版へ

(2019/8/14 11:00)
著書「シベリア幻想曲」と加筆している原稿を手に取る窪田由佳子さん=7月下旬、静岡市内
著書「シベリア幻想曲」と加筆している原稿を手に取る窪田由佳子さん=7月下旬、静岡市内

 静岡市のピアノ教師窪田由佳子さん(64)が、2017年に父一郎さん(故人)のシベリア抑留体験をつづった著書「シベリア幻想曲」の加筆作業に取り組んでいる。シベリア抑留の当事者が減り、社会の記憶も薄れていく中で、改訂版は同書の取材を機に知り合った協力者の体験や言葉も新たに盛り込む。由佳子さんは「音楽でつながっていた抑留者の思いを一冊にまとめ、多くの人に発信したい」と語る。
 一郎さんは戦時中、外国の娯楽として嫌悪されていたバイオリンを「自由に弾ける」と聞き旧満州(中国東北部)へ渡った。しかし現地で召集され、陸軍に入隊後に終戦。旧ソ連軍によりハバロフスクの「コムソモリスク第二収容所」へ連行された。冬はマイナス40度という極寒の中で労働を強いられ、作業中や食事中に仲間は突然倒れ、死んでいったという。
 音楽に救いを求めた一郎さんは、馬小屋で馬の尾の毛を抜いて弓を作り、森林伐採の機材を使って半年かけてバイオリンを作った。これを機に、同所に抑留されていた南雲嘉千代さんらと3人で楽団を結成。別の有志が作った劇団の演目「根室の灯(ともしび)」の劇中歌を南雲さんが作曲し、3年間の抑留を終えて1948年に帰還するまで仲間のための演奏に励んだ。
 由佳子さんが「シベリア幻想曲」を書いたのは、81年に55歳で亡くなった父への思いから。手探りで調べ始めたが、本屋で偶然手にした書籍が南雲さんの次男の著書だったり、抑留者が激減する中で「根室の灯」の劇中歌を歌える松本茂雄さん(94)=川崎市=に出会えたりするなど「何かに導かれるように点と点がつながった」。
 松本さんは戦線で放置され、抑留に至った過酷な経験を持つ。南雲さんは楽団の責任者としてラジオの日本向け放送に出演した際、「楽曲紹介」と称して仲間の住所や名前を発信した。当時の窪田家も南雲さんの計らいとは知らず、一郎さん生存の一報を受けていた。
 初版の発刊後に南雲さんの手記や松本さんの話で詳しい経緯が分かり、窪田さんは「父だけの物語でなく、音楽に希望を託して過酷な運命を生き抜いた3人の姿を残そう」と改訂を決めた。互いの呼び名や現場の風景など、読み手に雰囲気が伝わるよう書き足している。秋以降に本格的に出版の準備に入る。

 <メモ>シベリア抑留 1945年8月9日に旧ソ連が旧満州に侵攻し、終戦後、日本兵や民間人など約57万5千人をシベリアやモンゴルの強制労働収容所に移送。道路建設や森林伐採などの労働を課した。厚生労働省によると、抑留者のうち約5万5千人が飢えや寒さで死亡したとされる。

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