同報無線デジタル化、戸別受信機回収に高齢者不安 浜松市山間部

 災害時の情報伝達にスマートフォンなどを活用することを目的に、浜松市が4月から運用を始めるデジタル同報無線について、山間部に位置する同市天竜区の高齢者を中心に不安が根強い。スマホ活用は多くの市民にとって利便性が高く、迅速な情報伝達につながると期待されるが、同区の住民は長年、同報無線の屋外スピーカーと戸別受信機に慣れ親しんできた。暮らしと安全に直結する情報インフラの転換だけに、市に柔軟な対応を求める声が上がる。

浜松市が各世帯に配布している戸別受信機。携帯電話を所持している世帯では4月以降、順次回収する方針だ=2月上旬、浜松市天竜区水窪町
浜松市が各世帯に配布している戸別受信機。携帯電話を所持している世帯では4月以降、順次回収する方針だ=2月上旬、浜松市天竜区水窪町

 市は4月以降、スマートフォンや携帯電話に無料通話アプリ「LINE」を使って災害情報を通知する新たなシステムの運用を始める。同報無線の野外スピーカーの運用は現在と変わらないが、山間部の同区内は難聴地域が多い。
 デジタル化で各家庭に配布してあった戸別受信機は回収される。申請があった世帯には新しい機器を貸与するが、スマホや携帯電話を所有する世帯は原則として貸与の対象外になる。
 同区水窪町の高木弌子さん(87)は携帯電話を持っているが、通話以外の機能はほとんど使わない。市のチラシを見ても「ぴんとこない。機械に疎いから、今までの方が良いねえ」と戸惑いの表情。
 携帯電話を持っていても使いこなせない高齢者は多く、デジタル化の周知も行き届いてないのが現状。同報無線では災害時以外にも停電や断水、通行止めなど生活に欠かせない情報が流れるため、新しい受信機の全戸配布を求める住民もいる。
 地域で高齢者のスマホ利用支援などに取り組むNPO法人まちづくりネットワークWILL理事長の平沢文江さん(54)=同町=は「市は自治会と協力し、新しい同報無線について集落ごとに説明して回る必要がある」と指摘する。(水窪支局・磐村光紀)

 ■問い合わせ多数
 浜松市危機管理課によると、携帯電話を所有している高齢者から「自分は受信機の配布対象ではないのか」との問い合わせが多く寄せられたという。受信機の更新申請は1月15日までだったが、3月以降も事実上申請を受け付けている。
 市は住民説明会を開催する予定はないが、天竜区内の協働センターでは、情報伝達手段の変更や戸別受信機の更新受付延長などを告知する回覧のチラシを配布するなどの対応を行っている。
 LINEでは災害情報のほか、停電や断水などの地域情報も従来通り発信するという。

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