闘病の子に毎年贈り物 静岡がんセンター、小児科設置奔走の2人
(2021/1/14 17:13)-
静岡県立静岡がんセンター(長泉町)に入院している子どもたちに、毎年プレゼントを届ける男女がいる。藤枝市の八木洋さん(80)と三島市の望月智江さん(67)。センターの建設計画が進められていた23年前、診療科目になかった小児科の設置を求めて奔走した2人は、今も子どもたちの心を支えている。
センターは2002年開院。元静岡骨髄バンクを推進する会会長だった八木さんは1997年ごろ、県が小児科を設置しない予定を知った。東部地域の小児がん患者の多くは静岡市の県立こども病院を利用していた。ただ、「通院に時間がかかり仕事をやめないといけない」「若い夫婦にとって交通費の負担は大きい」など悩む家族は多く、地元での治療を切望していた。
八木さんも6歳の娘をがんで亡くし、「あんな悔しい思いは誰にもさせたくない。今の治療環境ではいけない」と小児科設置に向けた要望活動を始めた。同じく骨髄バンク普及に取り組んでいた望月さんとともに県や医師会へ訴えたほか、2525人分の署名を県議会に提出した。
転機になったのは、98年に三島市で開いた患者家族や医療関係者によるシンポジウム。小児科設置を求める訴えを、センターの開設準備に携わっていた現総長の山口建氏が聴講していた。
「私たちは県民の気持ちを聞けていなかった。ぜひ皆さんの意見が知りたい」。終了後、面識のなかった山口氏から電話を受けた八木さんは驚いた。「忘れられない言葉。関係者に思いが伝わり、流れが変わった」と振り返る。翌年の12月に、石川嘉延知事(当時)が県議会で小児がん患者の受け入れを表明した。
センターは今年、開院19周年を迎える。小児科は全国に先駆けて整備した「AYA(思春期から若年成人)世代」専門病棟の中心となり、多くの若い命をつないでいる。
昨年12月下旬、センターにプレゼントを届けた八木さんと望月さん。「ここは世界に誇れる病院。多くの人の協力で今がある」。あの日の苦労の先に実った子どもたちの笑顔を、これからも見守り続けるつもりだ。
静岡暮らし・話題の記事一覧
- 清水次郎長の功績 若い世代に 静岡市が冊子作製(2021/1/18 09:36)
- 築100年の古民家で健康づくり 伊豆の国、スタジオオープン (2021/1/18 09:32)
- 女性目線の「かわいい」寒天新商品 栗原商店(清水町)(2021/1/18 09:01)
- プチぜいたくもOK コロナで消費変化 静岡県内小売り「商機」(2021/1/18 08:30)
- 燃えるようなカエンカズラ 熱川バナナワニ園で見頃(2021/1/17 08:45)
- 快適住宅や暮らし発信 浜松住まいEXPO(2021/1/17 08:30)
- 感染者ゼロ河津「桜まつり開く?」 揺れる実行委【新型コロナ】(2021/1/16 09:03)
- 茶園の厄介者、防除へ道筋 ヤマノイモの生態、静大生が冊子に(2021/1/15 19:33)
- 警察学校で指導半世紀 静岡の写真家が最後の授業「心の目大切」(2021/1/15 12:30)
- スイセン300万本見頃 甘い風、岬に吹く 下田・爪木崎(2021/1/15 08:30)