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伊豆の鹿革、草木染に 伊東の障害者施設が製品化

(2020/10/21 19:49)
草木染された鹿革。ひかり工房では名刺入れやキーケースなどへの加工も手掛ける=13日、伊東市川奈
草木染された鹿革。ひかり工房では名刺入れやキーケースなどへの加工も手掛ける=13日、伊東市川奈

 伊東市川奈の障害児就労支援施設「ひかり工房」が、鹿革の草木染を製品化した。食害対策として天城高原で捕獲された鹿の革を伊豆半島の自然素材で染めた天然レザーで、国内を代表する革作家からも注目を集める。製品は日本皮革産業連合会を通じ作家に提供され、24、25日に都内で開かれるレザーワールドに出展予定だ。
 工房は、障害児の療育施設を運営する一般社団法人ひかり(生田一夫代表理事)が、高校卒業後の就労施設として2017年に設立。伊豆半島で採取、栽培した植物による繊維染色に取り組み、19年に独自ブランド「ひかりいろ」を立ち上げた。
 鹿革の草木染は同年2月、市郊外で鹿の捕獲を行うNPO法人「天城の森フォレスターズ倶楽部」の関係者から、皮を廃棄している現状を聞き製品化に挑戦した。
 最初に市販の鹿革を染めた時は思い通りの色を出せなかったが、布製品や糸に続く高単価の製品を開発しようと試行錯誤を重ねた。最終的に兵庫県姫路市の業者が日本古来の技法「白なめし」でなめした革を試したところ、梅苔(ウメゴケ)の紫やヤマモモの黄などが鮮やかに出た。
 鹿革は現在9色。生産工程で化学物質を使わず、4色が同連合会の定める日本エコレザー基準の最高ランクに認定された。一枚革だけでなく、格子模様に編み込んだ加工用素材や名刺入れ、キーケースなども製作する。
 工房は障害があっても根気がいる作業に驚くほどの集中力を発揮する長所を生かし、手間のかかる技法で付加価値を高めることで「利用者が仕事をしてしっかり工賃を受け取れる運営」(生田代表)を目指してきた。生田代表は「鹿革の草木染自体が国内でも珍しいはず。今回は伊豆で捕獲した鹿の皮を、鹿が食べていた植物で染めている。関係者にどう受け止められるか」と評価を待つ。

 ■食害対策 活用は道半ば
 鹿の食害は農産物や生態系への影響が大きく県も対策に力を入れている。県自然保護課によると、伊豆半島と富士地域の推定生息数は約5万頭。2019年度は県、市町の所管分と狩猟を合わせ約2万2千頭を捕獲した。
 一方、捕獲後の有効活用は道半ばだ。同課によると、昨年度、県が管理捕獲した約1万頭のうち、食肉などに加工されたのは約5500頭。残りは埋設処理などを余儀なくされた。
 伊東市の鹿肉加工会社「天城の森工房」は「ひかり工房」の取り組みに賛同し、昨年からこれまで廃棄していた皮を提供する。同社も骨をペットフードに加工するなど廃棄部位を極力減らす取り組みを進めていて、菊田淳一代表は「いただいた命はすべて使いたいとの思いがある。鹿革の草木染は食害対策で捕獲される鹿を有効活用する新たな道になり得る」と期待する。

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