競技用義足で運動会快走 右足切断の高木君、山本篤選手ら支援 出会って4日、夢かなう

 病気で右足を切断した高木翔梧君(10)=下田小5年=が26日、同校の運動会で競技用義足を着けて徒競走を走り切った。実現に奔走したのは、パラアスリート第一人者の山本篤選手(38)=掛川市出身=と競技用義足の開発を手掛ける「Xiborg(サイボーグ)」代表のエンジニア遠藤謙さん(42)=沼津市出身=。高木君に出会ってから運動会までのわずか4日間で義足を届け、走り方を伝授した。

競技用義足で徒競走を走る高木翔梧君(手前)=26日午前、下田小
競技用義足で徒競走を走る高木翔梧君(手前)=26日午前、下田小
高木翔梧君にテレビ電話を通じて走り方を教える山本篤選手(提供写真)
高木翔梧君にテレビ電話を通じて走り方を教える山本篤選手(提供写真)
競技用義足で徒競走を走る高木翔梧君(手前)=26日午前、下田小
高木翔梧君にテレビ電話を通じて走り方を教える山本篤選手(提供写真)

 高木君は3年時に骨肉腫で右足を切断。金属製の義足で日常生活を送る中、県障害者スポーツ協会が22日に静岡市内で開いた講習会で初めて競技用義足を着けた。
 パラリンピック選手も使うカーボン製の「板バネ」は反発力抜群。「自由に跳びはねられる。これを着けて運動会で走りたい」。目を輝かせた高木君の姿に、講師を務めた山本選手は「何とか実現させたい」と思い、24日朝に遠藤さんに協力を依頼した。
 遠藤さんも「走ることで人生が変わることがある。チャンスがあるなら間に合わせたい」と共感した。同日夜には義足を下田市に持参し、その場で山本選手がテレビ電話を通じて体の動きを教えた。
 迎えた26日の本番。高木君は転倒しながらも80メートルを走り切った。「少しずつ慣れてきた。山本選手のように格好良く走れるようになりたい」。新たな喜びを感じ向上心があふれた。
 東京パラリンピックを契機に障害者スポーツへの機運は高まる一方、アスリート以外の障害者にとって競技用義足はコスト面などから遠い存在だ。それだけに、今回の試みを山本選手は「競技用義足を身近に感じてもらう上で大きな意義があった」と捉える。
 遠藤さんは「高木君が自分で義足を交換して走ったことに意味がある。東京パラのレガシー(遺産)で残すべきは、それが当たり前になり、誰もが走る喜びを体感できる社会にすること。今回はその第一歩になる」と強調した。

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