静岡・鷹匠に新刊書店オープン ネットに負けず「知らない本との出合いを」 個店集積、「本の街」へ一歩

 本屋さんのある街を取り戻したい―。静岡市中心部で老舗書店の閉店が相次ぐ中、元書店員の太田原由明さん(51)が24日、新刊書店「HIBARI(ヒバリ)BOOKS&COFFEE」をオープンさせる。開くのは、古書店や絵本児童書専門店が点在する葵区鷹匠地区。約60平方メートル、蔵書7千冊からのスタートに、太田原さんは「小さくても『日常に本のある場所』をつくりたい」と、自ら選んだお勧め本を手際よく書棚に並べる。

試行期間で接客する太田原代表(左)。24日に本格オープンさせる=静岡市葵区のHIBARI BOOKS&COFFEE
試行期間で接客する太田原代表(左)。24日に本格オープンさせる=静岡市葵区のHIBARI BOOKS&COFFEE
静岡市葵区鷹匠地区の書店
静岡市葵区鷹匠地区の書店
試行期間で接客する太田原代表(左)。24日に本格オープンさせる=静岡市葵区のHIBARI BOOKS&COFFEE
静岡市葵区鷹匠地区の書店

 太田原さんは大型書店に20年以上勤めていたが、ネット書店や電子書籍の隆盛に押され、勤務先も閉店。「子どものころは自転車で行ける距離に書店があった。今は『特別な場所』になってしまった」。気軽に立ち寄って、知らない本との出合い、新しい発見を得てもらいたいと、学生が行き交う目抜き通り沿いを選んだ。
 「新刊本は今を伝える。今を生きる人に生きた言葉を伝えたい」と文芸書や雑誌をはじめ、SF、詩集、文庫本、絵本など幅広く仕入れる。カフェスペースでは、購入した本を読むことができ、若手作家のアート作品を紹介する。読書会にも場を提供する予定だ。
 鷹匠地区はおしゃれな服飾雑貨店、飲食店が多いが、年2回古本市が開かれ、本の街としても認知が広まりつつある。古書店「水曜文庫」の市原健太さん(55)は「それぞれ店主の個性が異なる。リアル書店巡りを楽しんでもらえたら」と歓迎。11月末にヒバリを含め、古本イベントを企画する伊藤清美さん(69)=静岡市葵区=は「もう本屋さんをなくしたくないという皆の願いが詰まっている。地域で支え、書店を通した街の文化になれば」と期待する。

 <メモ>静岡市葵区鷹匠地区には、多彩な書店が点在する。ヒバリの他、新静岡セノバ内の「MARUZEN&ジュンク堂書店新静岡店」は豊富な品ぞろえ、絵本児童書専門の老舗「百町森」は全国からファンが訪れる。古書店は年2回の一箱古本市の拠点「水曜文庫」、創業60年の「栄豊堂古書部」、マンションの一室で土日だけ開く「枇杷(びわ)舎」と、個性的な顔ぶれが並ぶ。

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