少人数、手ぶらでBBQ 調理プロの出張人気 静岡県内で新様式

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で遠方への行楽を控える傾向が続く中、自宅の敷地内や近場の屋外広場で少人数のバーベキュー(BBQ)を楽しむ人が静岡県内で増えている。感染防止徹底の観点から、「手ぶら参加」を推奨する県BBQ協会の出張需要が急増するなど、新しいBBQ様式が定着。ものづくり技術を生かし、業界に新規参入する中小企業も登場した。

1日1組限定の少人数専用BBQ場「アンドバーベキューガレージ」を清掃する鳥居克啓さん。換気や消毒など感染対策を徹底する=8月中旬、浜松市北区都田町
1日1組限定の少人数専用BBQ場「アンドバーベキューガレージ」を清掃する鳥居克啓さん。換気や消毒など感染対策を徹底する=8月中旬、浜松市北区都田町
溶接技術を生かして開発したアイ・フジナミのたき火台のセット例。頑丈さが売りだ=浜松市東区
溶接技術を生かして開発したアイ・フジナミのたき火台のセット例。頑丈さが売りだ=浜松市東区
1日1組限定の少人数専用BBQ場「アンドバーベキューガレージ」を清掃する鳥居克啓さん。換気や消毒など感染対策を徹底する=8月中旬、浜松市北区都田町
溶接技術を生かして開発したアイ・フジナミのたき火台のセット例。頑丈さが売りだ=浜松市東区

 「焼く、切るなどの調理は全てお任せを。箸と皿、コップの目印を各自間違えないで」
 8月中旬、浜松市北区都田町の「アンドバーベキューガレージ」。2歳の女児の誕生祝いで開放的なBBQ会場に集まった市内の家族数人に、県BBQ協会の鳥居克啓会長(35)が呼び掛けた。食材調達から配膳、後片付けまでをマスクと手袋着用でこなし、ステーキは米国製の本格グリルで手際良く焼き上げた。手ぶら参加の家族に求めたのは、30分おきの手洗いと消毒だけだ。
 同協会によると、出張BBQは県内に約30人いる協会員を中心に各地で展開するが、昨年までは100人単位の企業依頼が大半を占めた。それがコロナ禍で一変。初体験の家族や女性の少人数グループの依頼が急増した。
 大人数のBBQに起因したクラスター(感染者集団)発生が県外で相次ぐ現状を踏まえ、同協会は収益面を度外視し、県民からの依頼だけを受け付けている。1会場の利用は1日1組限定。検温や参加者名簿の提出も求める徹底ぶりが奏功し、夏季の出張数は前年比3倍に膨らんだ。
 日本BBQ協会公認の上級BBQインストラクターで、防災士の資格を持つ鳥居会長は「防災や食育など教育的な意味合いも強い。コロナ禍を契機にマナー啓発に力を入れ、文化を根付かせたい」と、新たな形のBBQの普及拡大に意欲を示す。

 ■溶接技術生かし新商品も
 コロナ禍で本業が落ち込む中、アウトドア業界に新規参入した企業が生み出す商品の特長はその頑丈さだ。
 設備工事や治工具を手掛けるアイ・フジナミ(浜松市東区)は溶接技術を生かし鉄製のたき火台を開発。5月までに自社ブランド「ワイドドア」を立ち上げ、オンラインショップで魅力を売り込む。
 溶接職人が余った素材でねじのないシンプルな構造に仕上げた。子どもでも折りたため、パーツの追加で自由な組み合わせも楽しめる。厚さ6ミリと極厚の鉄板や、レーザー加工が得意な他企業と共同開発の新製品も世に出す計画だ。
 自宅でBBQを楽しみたい入門者層を主なターゲットに置くスターターパックが5万円台と安くはないが、営業担当の船越紹嗣さん(41)は「一生使える頑丈さが売り」と自信を見せる。近隣の企業間連携の加速を期待し、「コロナ禍の新たな縁を大切に苦境を乗り切り、先の長い挑戦にしたい」と語る。

 <メモ>県BBQ協会は2014年7月に発足し、日本BBQ協会公認のBBQインストラクター約30人が、県内全域でBBQ場のほか、依頼者の自宅や野外でBBQが許可された場所などに出張している。協会員の本業は農家や建設業、ブライダル業など多彩。300人規模の社内懇親会から数人の家族パーティーまでを請け負い、19年度は150組1万人が利用した。料金は1人4000円からで、クルーズ船上(1人7000円から)や防災体験・食育型など豊富なプランを用意。BBQインストラクター検定も10回以上開催し、400人以上の県民が合格している。

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