「働くハードル下がった」テレワーク加速、障害者の自信に 静岡

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、企業を中心に導入が進むテレワーク。在宅勤務など多様な働き方が広がる中、静岡県内の障害者就労支援事業所でもテレワークの取り組みが加速している。利用者が通所しなくても生産活動や職業訓練を続けられるなどのメリットがあり、新たに環境を整える事業所も出ている。
 8月上旬、藤枝市のNPO法人障害者活動支援団体げんきむら。受注を受けたタオルのデザインなどをパソコンで手掛ける事業所の一角で、週に1度だけ足を運ぶ利用者2人がスタッフたちと今後の段取りなどを相談していた。
 「コロナの流行で外出するのが怖くなった。事業所に1カ月休むと伝えたら在宅勤務を勧められて」と話すのは、統合失調症がある女性利用者。同じく統合失調症で、障害者向けのサテライトオフィスでテレワークする男性は「当初は不安もあったが、慣れてきた。働くことへのハードルが下がった感じ」と笑顔をみせる。
 同法人は3月末、新型コロナ禍に対する国の緊急支援の補助制度を活用し、テレワークに必要な機器を整備。障害の影響によるストレスや疲労を感じやすい利用者たちに気を配りつつ、インターネットの電話やチャットを使って見守りや作業支援を行っている。同法人管理者の鈴木裕子さんは「今後もそれぞれの障害特性を見極めながら対処したい」と語る。
 中古バッグなどをネットで販売する焼津市の事業所「ミライ」でも4月から、一部の利用者がテレワークを始めている。商品の採寸やスマートフォンでの撮影など、出品までの工程の一部を在宅でもできるように整備した。代表の永田晃士さんは「事業所を休みがちだった利用者が自宅で作業を続けて自信を持つなど、良い影響が出始めている」と手応えを口にする。
 県障害者政策課によると、国と自治体は本年度もほぼ同様の助成制度を設け、事業所からの申請も多いという。日本テレワーク学会副会長の小豆川裕子常葉大准教授は「障害者に向けたテレワークの導入は孤立感の解消やハードの整備、充実した研修などの取り組みが必要」と指摘した上で、「さらに環境整備が進むことを期待したい」と話した。
 
 <メモ>障害者の就労支援事業 障害者の福祉サービスの基本となる障害者総合支援法に基づく事業。企業などへの就労を希望する人が標準で2年間、必要な知識や能力向上のための訓練などを行う「就労移行支援事業」や、現時点で企業への就労が困難な人が事業所で働きながら知識や技能を身に付ける「就労継続支援事業」などがある。就労継続支援事業には事業所と雇用契約を結んで給与を得る「A型」と、結ばずに工賃などを受ける「B型」の2種類がある。

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