浜松「夜の街」外国人女性苦境 収入激減、生活ままならず

 新型コロナウイルスの感染拡大が、夜の街で働く外国人の生活にも影を落としている。客の激減、店の臨時休業…。多くのフィリピンパブが集まる浜松市では、パブで働きながら母国の家族を支えてきたフィリピン人女性が苦しい日々を送る。

勤務するフィリピンパブで、マイクを消毒する女性=5日夜、浜松市中区
勤務するフィリピンパブで、マイクを消毒する女性=5日夜、浜松市中区

 「お金を送れなかったのは初めて。こんなことになるとは思わなかった。ショック」。中区のフィリピンパブで働く女性(52)は苦しい表情を浮かべた。女性は2000年に来日して以降、比南部のミンダナオ島にいる家族へ、毎月欠かさず仕送りをしてきた。
 金額は13万円ほど。糖尿病を患う母の薬代や家族の食費だ。しかし、コロナ禍で収入は減る一方。7月下旬に浜松の中心街でクラスター(感染者集団)が発生し、客足は一層遠のいた。7月は1円も送金できなかった。1人暮らしの自分の生活もままならない。
 市内の別の店で働く女性(46)は8歳の子どもを育てるシングルマザー。昼はホテル清掃の仕事をこなし、コロナ禍以前はマニラの家族に週2万円を送金した。今、月収は半分以下。子どもを食べさせるためにフードバンクも利用した。「毎日ストレスだし、家族のことも心配」。マニラでは再びロックダウン(都市封鎖)が行われ、家族は生活に苦しむ。父親からは「車を売ってしのぐ」と聞いたが、自分には助ける余力はない。
 外国人支援に取り組む一般社団法人グローバル人財サポート浜松(同市中区)の代表理事の堀永乃さんによると、日本に住むフィリピン人は自身の生活を切り詰めながら母国の家族に仕送りをするケースが多いという。
 同法人は、コロナ禍で仕事を失った人向けに「介護職員初任者研修」を通常の半額で実施することを決め、5日までにフィリピン人7人の申し込みがあった。堀さんは「困窮させないためには、資格取得などの職業教育が必要」と指摘する。

 <メモ>県内に住む外国人のうち、フィリピン人は1万5690人(2017年)でブラジル人に次いで2番目に多い。浜松市に住むフィリピン人は3829人で、68%を女性(2018年)が占めている。
 フィリピンパブで働く女性の多くは以前、歌手や俳優、ダンサーに与えられる在留資格「興行」のビザを得て来日していたが、一部が売春や接客を強要されているとの指摘を海外から受けて以降、発給が厳格化。市内のフィリピンパブ経営者らによると、現在の従業員の大半は日本人と結婚したフィリピン人か、日系フィリピン人。シングルマザーも多いという。

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