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閉山期の富士山、危険周知が急務 遭難絶えず、対応に苦慮

(2019/12/8 14:00)
通行禁止を示す看板が置かれた富士山須走口登山道の入り口。冬季の登山は明確に禁止すべきとの意見もある=11月中旬、須走口5合目
通行禁止を示す看板が置かれた富士山須走口登山道の入り口。冬季の登山は明確に禁止すべきとの意見もある=11月中旬、須走口5合目
富士山閉山期の山岳遭難事故(静岡県側)
富士山閉山期の山岳遭難事故(静岡県側)

 富士山で夏の開山期以外の遭難事故が後を絶たない。10月末には自らの富士登山の様子をインターネットでライブ配信中に滑落したとみられる都内の40代男性が亡くなった。地元関係者からは冬季の登山を明確に禁止すべきとの声や、危険性をより具体的に伝えるべきとの意見が出ている。

 ■高い事故リスク
 静岡県警によると、静岡県側の閉山期の山岳遭難事故は2013年以降、年間9~19件で推移。14年には6人が亡くなるなど毎年死者・行方不明者が出ている。
 閉山期、特に冬季は事故のリスクが高い。その理由は主に強風、凍結、寒さだ。静岡地方気象台によると、富士山測候所があった2003年12月の山頂の最大風速は29メートル、平均でも13・9メートル。標高が高い場所は木など風を遮るものがなく、冬の富士登山経験者の日記には成人男性が風船のように飛ばされたとの記述が残る。積もった雪の表面は凍りやすく、場所によってはアイゼンやピッケルの刃が刺さらない。一度滑れば数百メートル落下し、命の危険に直面する。
 同気象台によると、1981年から2010年の12月の山頂の平均気温は氷点下15・1度。その上、山小屋は閉鎖され避難できる場所はない。御殿場口の山小屋経営者でつくる御殿場口山内組合の福島邦彦組合長(68)=御殿場市=は適切な装備や登山技術があっても「気象条件によっては身を守ることができない状況になる。冬は絶対に行くべきではない」と語気を強める。
 専門家が危険性を指摘しているものの、閉山期の富士登山は明確に禁止されているわけではない。県や環境省などでつくる「富士山における適正利用推進協議会」が夏山以外の富士山に関して定めるルールは「万全な準備をしない者の登山禁止」。県は県道である登山道は全面通行止めにしているが、国などが所有する区域への立ち入りを妨げる権限はないと説明する。県警の担当者も「(登山を)絶対駄目とは言う立場にない」と話す。
 県富士山世界遺産課は閉山期の富士登山に関する問い合わせがあれば自粛を求めるが、強行する場合は黙認される。事故が絶えない状況を踏まえて対策強化が必要との認識を示しつつも危険性を訴えるための手段を増やすしか打つ手がないという。
 こうした行政の対応に、地元関係者は「(登山が)野放しになっている。腰が引けている」と指摘する。同協議会が発行するチラシには「登山はあくまで自己責任」との文言があるが、事故が発生すれば警察や消防の救助隊員は出動せざるを得えない。隊員の身に危険が及ぶとの懸念もある。

 ■「国が禁止を」 
 日本最高峰でありながら開山期の2カ月間は初心者を含め多くの登山客が訪れることから、冬も安易に登ってしまう人がいるとの見方がある。富士山を案内するガイドでつくる「やまぼうし」の米山千晴代表(68)=小山町=は「冬の富士山は夏の富士山とは違う。ヒマラヤ級」と警鐘を鳴らす。小山秀峰山岳会の榑林一美会長(79)=同町=は「命の危険があるとしっかり伝えるべき」と言い切る。福島組合長は冬季の登山に関し「国が明確に禁止すべき」と主張。注意喚起を図る際には事故件数を伝えるだけでなく「どんな過酷な状況か、具体的な危険性を周知する必要がある」と訴える。

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