川は誰のものか(2)日軽金、水利権維持 製錬が売電へ

 富士川河口から15キロ上流。富士宮市の釜口峡は富士川の中で最も川幅が狭く、かつて舟運の最大の難所とされた。切り立った岸壁が風光明媚(めいび)で、ラフティング客も多い。舟運のあった時代に比べれば大幅に減った川の水の上空に架かるのは日本軽金属を意味する「NLM」と書かれた巨大な導水管。林業家でサクラエビ漁師の佐野文洋さん(47)は「河川利用を考えるうえで象徴的な場所」と話す。

釜口峡に架かる日本軽金属の巨大導水管。夏場、周辺はラフティング客でにぎわう=3月上旬、富士宮市内
釜口峡に架かる日本軽金属の巨大導水管。夏場、周辺はラフティング客でにぎわう=3月上旬、富士宮市内
日軽金富士川第二発電所の取水量、富士川下流(富士市松岡)の流量
日軽金富士川第二発電所の取水量、富士川下流(富士市松岡)の流量
釜口峡に架かる日本軽金属の巨大導水管。夏場、周辺はラフティング客でにぎわう=3月上旬、富士宮市内
日軽金富士川第二発電所の取水量、富士川下流(富士市松岡)の流量

 1976年、県内の高校社会科教諭らのグループが記した「富士川の変貌と住民」(大明堂)には「直径が5・4メートルもあり、山を貫き川を越えて流れ、富士川第二発電所に送られる」と当時の写真付きで紹介されている。
 静岡市清水区蒲原の日軽金富士川第二発電所は、堆砂が進み、周辺住民に洪水被害をもたらしている雨畑ダム(山梨県早川町)を起点とする総延長約50キロの導水管の最下流部にある。発電後の濁水が放水路から駿河湾に流れ、サクラエビやシラス漁師らが不漁との関係に危機感を抱いている。
 本紙が国土交通省関東地方整備局に情報公開請求して得た、日軽金の取水量報告書によれば水利権で許可された同発電所の最大取水量は毎秒75トン。2018年、日軽金は富士川第二発電所を24時間365日運転し、出水期(6~10月)は連日上限の毎秒75トン近くまで取水していたことが分かる。
 一方、同省が富士川下流の観測所(富士市松岡)でモニタリングしたデータによれば、同じ年の出水期、同発電所の取水量より本流の流水が少なかった日数は83日間と出水期の5カ月間の54・24%に上った。
 本紙の取材で、日軽金は、富士川水系に持つ計六つの水力発電所で得た電力の一部を電力会社などに売電していることが明らかになっている。法人登記簿の事業目的には既に「電気の供給事業」が加わるが、取材に「経営に関わる事柄」を理由に売電自体認めていない。
 水利権制度に詳しい創価大の宮﨑淳教授は、日軽金は既に行っていないアルミ製錬などのために国に許可申請していることから、「水利権が取り消される可能性も否定できないだろう。水利権に基づく水利使用が環境に負荷をかけることを理解し、環境保全と地域共生を意識すべき」と話す。
 同社は富士川中流にある二つの取水えん堤の水利権更新が行われた12年度、地元の富士川漁協(山梨県身延町)への補償金を年間400万円程度から1500万円に引き上げた。地元では「水利権維持に向け、反発を回避するためだったのでは」との臆測が流れた。
 戦後復興を導いたとされ、通商産業省(現在の経済産業省)の中でも“花形”だった水力課に勤務した佐山實さん(85)=千葉県浦安市=も「日軽金が水利権の使用目的に売電を書かないのは、ふに落ちない」とし、「発電施設の減価償却も基本的にはすでに終わっているだろう。会社にとってはまさに『虎の子』。ものすごい財産だ」と解説した。

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