サクラエビ漁「減船へ知恵絞って」 慶大・大沼教授が提言

 8日開かれた県桜えび漁業組合の会合では、持続可能な漁のための抜本的な手だては決まらなかった。慶応大経済学部の大沼あゆみ教授(59)は「減船へ知恵を絞る必要がある」と提言している。
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 40年以上前に年間数千トン以上あったサクラエビの漁獲量は昨年、300トン程度になった。しかし船数は120隻のまま。数や大きさは取り過ぎにつながりかねず、今こそ改革に先鞭(せんべん)をつける意義がある。
 「入り口規制」を設けて減船につなげることを提案したい。世界では「ハイテク機器を使わない」という漁獲管理が導入されている例が少なくない。当てはめてみてはどうか。
 船の大きさや魚群探知機の性能、網の大きさなど漁法に制限を設ける。漁師の腕の巧拙が明らかになり、プール制といえどもエビを取れない漁師は肩身が狭いと思う。減船に向かうかもしれない。
 プール制は総売上高から5%の手数料と冷蔵庫使用代を引いた分を120隻で均等割する。各船の受取額の5割が船主に渡る。船を小型化して経費を浮かすインセンティブが内在されている。しかし、そのようにならないのは、見えのような別のインセンティブがあると考えられる。
 「できれば船を手放したい」という人もいると聞く。小型化・減船に必要なのは「エビを減らしかねない地球温暖化問題に一致して対処する」などの大義名分。そのメッセージの下なら燃料を削減するため小型化が進む。
 駿河湾産の需要分析も必要。県は資源量分析だけでなく台湾産との連環も押さえた需要構造を把握し、その上で漁師と向き合わなければ真の意味での不漁対策にはならない。

 ■「減船、資源回復後」 実石組合長一問一答
 県桜えび漁業組合の実石正則組合長は8日の船主会後の記者会見で、漁船120隻が過剰となっているのではとの問いに以下のように答えた。
 ―船主会で減船に踏み込んだ議論は。
 「これまでも不漁になると『減船するべきでは』という話がちまたで出た。史上最悪の不漁の中でいまの体制で資源回復しなければならない。将来的に僕らの次の世代がやるかも。でもある程度資源回復後だ」
 ―それはなぜ。
 「いまは一丸となって取り組まなくてはならない。いまはその時期ではないと思うから。われわれは県から権利をもらって操業している。こういう話をするときには必ず県や関係者と協議しなくてはと個人的に思う」
 ―まずは漁師自身が決めるべきでは。
 「簡単に言うが、減船はいつか議題に上がるときがあるかもしれないが、さっき言ったようにいまはその段階ではないと思う」
 ―もう一度理由を。
 「せっぱつまったような状況ではいい案は浮かばない」
 ―あえて減船しない理由は何なのか。
 「今まで不漁になれば人員削減は実際にしてきた。いまこういう状況でする話ではないと私自身判断した」

 ■「減船」に向けた大沼あゆみ 慶応大教授の具体的主張
 (1)船の大きさや魚群探知機の性能、網の大きさなど漁法に「入り口規制」を設けることで漁師の腕の巧拙を明らかにする
 (2)「エビを減らしかねない地球温暖化に一致して対処する」などのいわば大義名分の下で、燃料削減のための小型化、減船につなげる
 ※その他の主張 県は駿河湾産と台湾産の連環を押さえた需要構造を把握すべき

 <メモ>おおぬま・あゆみ 専門は環境経済学。環境経済・政策学会会長などを歴任。駿河湾のプール制について、サクラエビ研究の第一人者の大森信・東京海洋大名誉教授と共著の論文がある。著書に『生物多様性保全の経済学』(有斐閣)など。

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