不漁対策に中長期的視点 漁師と加工業者、連携を

 3月24日の解禁以降、わずかな水揚げにとどまっている駿河湾のサクラエビ春漁。自主規制などで資源回復を目指しているが、劇的に回復するとは考えにくい。関係者からは「漁師と加工業者が公の場で議論し、漁の在り方について考えるべき」と将来を見据えた取り組みの必要性を指摘する声が聞かれる。記録的不漁とどう向き合い、「駿河湾の宝石」を次代に引き継ぐのか。中長期的な視点での議論が不可欠だ。

「駿河湾の宝石」を引き継ぐため、中長期的な議論が求められる=23日、静岡市清水区の由比漁港
「駿河湾の宝石」を引き継ぐため、中長期的な議論が求められる=23日、静岡市清水区の由比漁港

  現在、漁業者や加工業者が集まる場としては1月に始まった情報連絡会がある。昨年の秋漁が資源調査にとどまり、一度も水揚げされないまま終了したことで、県が音頭を取って春漁前に2度会合を開いた。春漁の操業方針などについて学識者も交えて意見を交わしたが、その後は開いていない。
  両者が公に集まり議論する初の場として期待は高かった。しかし、出席者からは「十分な議論はされなかった。期待外れ」との厳しい声も上がった。
  県桜海老加工組合連合会の池田照夫会長(72)は「県がもっと指導力を発揮してくれれば、議論がしやすい環境になるのでは」と期待する声もある。
  ただ、記録的不漁は流通面などで既に厳しい状況にあり、両者が早急に連携すべき時にある。駿河湾産サクラエビの市場は縮小しつつあり、取り戻すには「5~6年かかるのでは」との見方が加工業者の共通認識。台湾産が流通していることが大きい。
  由比や蒲原地区では不漁が叫ばれる以前の、約30年前から台湾産サクラエビの販売に軸足を置いている加工業者もある。ただ、昨年の秋漁が一度も水揚げが行われないまま終了したことで「代替品」として台湾産を取り扱う業者が現れた。
  都内でこれまで駿河湾産を取り扱ってきた大手水産卸業者によると、「駿河湾産は高すぎて、需要がほとんどない。代わりに台湾産を求める客が多い」。
  安価な台湾産の市場拡大が進む中、資源回復後にどのように駿河湾産の市場を取り戻すかは今後の大きな課題。駿河湾産の市場価値を高めるためには、台湾産との明確な差別化が不可欠だ。
  その際にも、県や学識者もメンバーの情報連絡会は有効な意見集約の場として活用できる。漁業者と加工業者が情報を共有し、共同で駿河湾サクラエビの漁の在り方やブランド化について議論することが求められる。
  (蒲原支局・吉田直人)

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