「春漁は大丈夫か」 漁師、加工業者ら困惑 店頭品薄、台湾産

 11月12日の解禁以降、一度も操業が行われずに終了したサクラエビ秋漁。漁史上初の事態に漁師や加工業者ら地元関係者は困惑を隠せない。「来春は大丈夫か」。駿河湾産サクラエビを扱う県内スーパーや、心待ちにする消費者からは早くも来年の春漁の行方を懸念する声が聞かれる。

台湾産のサクラエビを手に取る買い物客=12日、焼津市小柳津のスーパー田子重西焼津店
台湾産のサクラエビを手に取る買い物客=12日、焼津市小柳津のスーパー田子重西焼津店

  「『やっと(終了が)決まった』という思い。遅すぎたくらいだ」と語るのは13日午後に由比港漁協(静岡市清水区)で開かれた船主会に参加した50代の船元。「春漁に向けての対策が急務だが、その説明はなかった。見通しが立たず、不安に変わりはない」と暗い表情で漁協を後にした。
  秋漁中止を知った同区由比地区の30代仲買人は先行きへの不安感を吐露。「資源が回復してサクラエビを提供できるようになるまでどれくらいかかるのか。これまで通りに提供できるよう経営努力をしなければいけないとは思うが、難しい」と語った。
  遠鉄ストア(浜松市中区)では今秋、駿河湾産の仕入れがなく、生食用は販売していない。「今後は素干しの入荷も難しくなりそう」。商品部の担当者は在庫で賄っている素干しの仕入れへの影響を懸念する。
  県内には20数グラムの素干しを千円超で販売するスーパーも出ている。
  田子重(焼津市)でも今秋、普段なら売り上げの大半を占める駿河湾産の生食用の入荷はない。12月から冷凍の台湾産を仕入れ、解凍して販売しているが、売れ行きは駿河湾産には及ばないという。海産バイヤーは「消費者は産地を見て買う。地元産の看板商品の代わりはない」と頭を悩ませる。
  12日、台湾産の解凍品が販売されたスーパー田子重西焼津店。訪れた焼津市の主婦宮沢紗季さん(29)は台湾産が台頭する売り場を目にし、ショックを受けた様子。「駿河湾産がこんなに減っているとは」と考え込んだ。
  (「サクラエビ異変」取材班)

  ■Q&A 台湾産、駿河湾産とどう違う? 同一種、漁獲規制を実施  
  駿河湾のサクラエビが深刻な不漁に見舞われる中、スーパー店頭などでは台湾産サクラエビをよく見掛けます。サクラエビの水揚げがあるのは世界中で駿河湾と台湾だけ。台湾産は駿河湾産の半値以下で売られていますが、違いはあるのでしょうか。
  Q 違う生き物なのか。
  A 学名は「Lucensosergia lucens」で、全く同一種の生き物です。触覚周辺の発光器の間隔が異なるなどの微妙な違いは指摘されますが、形態的な差異はありません。
  Q 台湾でサクラエビを取るようになったのは。
  A 台湾南西部で1977年に発見され、地元の人たちの手で漁業が始まりました。地元でもチャーハンや肉まんの具として利用され、日本への輸出と国内での消費量は6対4程度となっています。
  Q 台湾での資源管理の手法は。
  A 台湾では駿河湾とほぼ同じ115隻が操業中です。現地の漁協自らが、漁船ごとに11箱以内(1箱=20キロ)の漁獲量規制を設けています。かつては乱獲気味で不漁に陥りましたが持ち直し、2017年度の水揚げは1700トン程度でした。
  Q なぜ台湾産は安いのか。
  A 漁業者の人件費や漁船維持費、冷凍のための電気代が相対的に安価なことが挙げられます。また、日本では国産の水産物に対する人気が高く、飲食店などが台湾産を扱うメリットは現状では安さにあります。そのため台湾の仲買・加工業者は値段を大きく上げる余裕がありません。ただ、今後駿河湾の不漁が続いたり、台湾での需要が伸びたりすれば価格が上昇する可能性もあります。

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