雨畑ダム堆砂「全撤去は困難」 日軽金、検討会開催

 駿河湾サクラエビの不漁を受け静岡、山梨両県が濁りの実態調査を進める雨畑ダム(山梨県早川町)で堆砂が深刻化し、水害が頻発している問題で、ダムを管理する日本軽金属は3日、対策を協議する検討会の初会合を山梨県庁で開いた。同社は会議後、土砂の全部撤去の案は困難と説明。「どの程度の土砂を出さなければならないのかを国などの意見を聞き決めたい」と述べ、問題の長期化を示唆した。

「雨畑地区土砂対策検討会」の初会合の冒頭、国や地元自治体関係者に対し雨畑ダムの堆砂状況について陳謝する日本軽金属蒲原製造所の敷根功所長(中央)=3日午後、山梨県庁
「雨畑地区土砂対策検討会」の初会合の冒頭、国や地元自治体関係者に対し雨畑ダムの堆砂状況について陳謝する日本軽金属蒲原製造所の敷根功所長(中央)=3日午後、山梨県庁

 国は8月の行政指導で堆砂問題の「抜本的解決」を求めている。出席した国土交通省の担当者は「日軽金には可及的速やかな計画書の提出を求めたい」と注文した。
 会合は非公開。同社蒲原製造所(静岡市清水区)の幹部と国交省、山梨県、早川町の関係者ら20人程度が出席した。冒頭、同製造所の敷根功所長=執行役員=が「昨年より早川町では浸水被害を発生させてしまい、誠に申し訳ない」と陳謝した。
 終了後、取材に応じた同社関係者によると、会議では山梨県の指導で8月から実施している、ダム上流の雨畑川の河道の掘削や土のうの積み上げなどの応急措置について最初に説明。その後、約1300万立方メートルに上る堆砂の抜本的解決について話し合ったが、具体的方法や数値目標にまで議論は及ばなかったという。
 敷根所長は「(出席者からは)『どこまで覚悟があるのか』ということも含め質問があった」と述べた。

 ■抜本的対策「決めかねる」 日軽金執行役員一問一答
 雨畑ダムの堆砂率は約93・4%(2016年度)で、全国の中規模以上のダム約500カ所の中で最悪の状況だ。
 堆砂は富士川水系の濁りの一因になっているとみられている。
 3日に山梨県庁で開かれた雨畑地区土砂対策検討会後、日本軽金属蒲原製造所長の敷根功執行役員は国や同県などから抜本的な対策を求められていることに対し、「決めかねる」とした。

 敷根氏との一問一答は次の通り。
 ―国から求められた「抜本的解決」の内容は。
 「撤去量については現実的な対策案を作らなければならない。全部撤去となると恐らく現実的な案を出せないと思う。どの程度の土砂を出さなければならないのかを国などの意見を聞き決めたい」
 ―いつまでに出すのか。
 「(国の行政指導の内容は)結構ハードルの高い内容。関係機関との調整もあり、今の時点で策定のスケジュールは言えない。基本的には日軽金が責任を持って中身を策定するということになる」
 ―初会合では国や山梨県からどんな意見が出たのか。
 「われわれがどれくらい(土砂を)取ればいいのかということについて、正直決めかねるところもある。それに対して『どこまで覚悟があるのか』ということも含めていろいろな意見は出た」
 ―具体的には。
 「『抜本的な対策』というところで言うと、われわれが認識している『抜本的』とのすり合わせ。どこまでを目標にするか、というところ。まだ何も決まっていないので言えないが『今後目標を決めていかなければならない』という意見も出た」

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