日本軽金属、国制度で売電か 富士川水系の水利権目的外使用問題

 アルミ製錬を前提に富士川水系の水利権を許可された日本軽金属波木井発電所(山梨県身延町、設備・能力2万1900キロワット)が、国の水利権更新許可が認められないまま稼働している問題で、同社が同発電所について、再生可能エネルギー普及のため国が導入した固定価格買い取り制度(FIT)に申請し認定を受けていたことが、2日までの経済産業省などへの取材で分かった。“売電そのものを目的にした発電”に本格的に乗り出していたことが判明し、住民は反発を強めている。

波木井発電所をFITの設備として認定した経産省の通知。2015年3月19日付。日軽金はこの後、同発電所を大規模改修した
波木井発電所をFITの設備として認定した経産省の通知。2015年3月19日付。日軽金はこの後、同発電所を大規模改修した
日軽金が固定価格買い取り制度の認定を受けていたことが分かった波木井発電所。導水管をへて駿河湾に濁りが出る事実上の“起点”でもある=2019年12月、山梨県身延町(静岡新聞社ヘリ「ジェリコ1号」から)
日軽金が固定価格買い取り制度の認定を受けていたことが分かった波木井発電所。導水管をへて駿河湾に濁りが出る事実上の“起点”でもある=2019年12月、山梨県身延町(静岡新聞社ヘリ「ジェリコ1号」から)
波木井発電所をFITの設備として認定した経産省の通知。2015年3月19日付。日軽金はこの後、同発電所を大規模改修した
日軽金が固定価格買い取り制度の認定を受けていたことが分かった波木井発電所。導水管をへて駿河湾に濁りが出る事実上の“起点”でもある=2019年12月、山梨県身延町(静岡新聞社ヘリ「ジェリコ1号」から)

 静岡新聞社が水利権の目的外使用を指摘した1月1日付の報道を受け国土交通省は同月、売電の有無や発電の目的と使用実態の相違などを確認した。発電所は3月末に水利権更新期限を迎え今月で半年経過するが、いまだ水利権許可の審査中だ。水利権は失効しておらず、取水を続けている。
 1939年に完成した同発電所は、同社が富士川沿いなどに持つ六つの発電所で最古。太平洋戦争期にゼロ戦用航空機素材の製造を支えた同発電所も現在では、支流の雨畑川に不法投棄された凝集剤入り汚泥などに起因するとみられる強い濁りが、発電用導水管を経てサクラエビの主産卵場になっている駿河湾に流れ込む事実上の起点といえる。日軽金はFITによる売電のため2017~19年にかけて巨額を投資し改修工事を行った。
 日軽金は売電収入について決算関係書類に明示していない。

 ■「聞いていない」流域反発
 日本軽金属が再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)の認定を受けていることが2日までに分かった。情報公開資料によると、同社は山梨県にFITの利用を報告していたとみられるが、流域の市町には説明がなく、住民は反発を強める。
 山梨県内の富士川最下流に位置する南部町の佐野和広町長は「どう売電しているか全く聞いていない」とし、「住民は地震で導水管が破裂しないか心配。富士川に水を戻してほしい」と求める。林業家でサクラエビ漁師の佐野文洋さん(48)=富士宮市=は「日軽金は自社の利益だけでなく、海や川に向き合ってほしい」と憤る。
 売電した場合、一カ月に数億円規模の収入になるとみられる。近藤千鶴富士宮市議は「川は地域の共通資本。売電でいくら稼いでいるのか。説明と対策を求めたい」と強調する。
 日軽金は静岡新聞社の取材に、FIT認定を受けた事実を認めつつ、売電実績については「経営に関わる事柄であり、回答は差し控える」としている。

 ■FITの趣旨に反する 諸富徹 京都大大学院教授(環境経済学)
 少なくとも水利権の更新期限を過ぎても更新されていないのであれば、失効状態であることは間違いない。現在は河川法の運用で、日軽金と関係者の間で水利権が認められているにすぎないだろう。
 FITの根拠となる再生可能エネルギー特措法の趣旨は、福島の原発事故という大きな環境リスクを一つの出発点に、環境に良い電源に変えること。それが富士川の河川環境やサクラエビに損失を与えているとすれば、本来的な矛盾だ。波木井発電所の水利権が正当性を疑われる状態ならば、なおさらFITの趣旨に反しているとも言える。
 違法な土地利用の発電所からの電力など明らかに問題があれば話は別だが、今回のように(違法性を帯びていなくても正当性を失ったような)グレーなケースの場合、現行法に基づくFITは問題のある発電所として排除する仕組みになっていないのでは。
 ただ、今は個別条文に反していなくても、問題点が明らかになると、経産省が後付けで規制するケースがFITでは多く起こってきた。太陽光パネルで環境問題が起こり、事業者に役割を終えた設備の撤去を含めて義務を負わせたことなどだ。問題が大きければ、法の改正や政省令の見直しが行われるべきだ。

 <メモ>再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度 再エネ特措法に基づき、水力や太陽光、風力などを用いて発電した電気について、国が定める一定価格で一定期間、電力会社による買い取りを約束する制度。新規発電事業者が収益の見込みを立てやすく、東日本大震災後に多くが参入した。水力発電の場合、買い取り期間は20年間。

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