リニア 国土交通省専門家会議 実名化議事録⑧

国土交通省専門家会議 第8回 議事詳報

2021年2月7日:国土交通省

 ※この議事詳報は国土交通省が公開した「議事録」に、静岡新聞社の傍聴等の取材を補足してまとめました。「議事録」や会議当日の配布資料は 同省ホームページ でご覧になれます。



 (森宣夫国土交通省鉄道局施設課環境対策室長)
 本日は第8回会議となるが、前回の委員の皆様のご指摘を踏まえ、水循環の概念図、工事期間中の県外流出湧水の影響評価、モニタリングについて議論を行いたいと考えている。議事の前に、事務局から本日会議のポイントについてご連絡させていただく。


座長コメントは会議の経過を示す

 (江口秀二国土交通省鉄道局技術審議官)
本専門家会議では、これまでに、特に大きな水資源に関する二つの論点である「トンネルによる大井川中下流域の地下水への影響」と「トンネル湧水の全量の大井川表流水への戻し方」について議論を行ってきた。
その中で、参考資料1として配布している通り、第5回から第7回までの会議では座長コメントを取りまとめていただいた。昨年10月の第6回会議では「中下流域の河川流量が維持されれば、トンネル掘削による大井川中下流域の地下水量への影響は極めて小さいと考えられることが科学的・工学的な見地から確認された」等ととりまとめていただいた。また、昨年12月の第7回会議では「現時点で想定されているトンネル湧水量であれば、トンネル掘削完了後にトンネル湧水量の全量を大井川に戻すことが可能となる計画となっていることを専門家会議として確認した」と取りまとめていただいた。
これらの前提条件の部分については、印象操作をしているのではないか等との批判をいただいているが、私から会議後の記者ブリーフでもご説明させていただいた通り、これらの点については、まだJR東海において作業中のところもあり、また専門家会議でも議論の最中であることから、議論の途中段階での取りまとめであることを示すために、前提条件を付けさせていただいたところ。座長コメントではそれぞれの会議においてどこまで分かったのか、何が検討事項として残っているのかを示したもの。第5回からの座長コメントを順に見ていただければ、手順を踏んで議論が進められていることがお分かりいただけるのではないかと思っている。
本日は、かねてからの宿題事項であったトンネル掘削による山梨県側への湧出量等について、JR東海によるモデルに加えて、静岡市のモデルによる分析結果がある程度そろったので、これらについて重点的に議論していただきたいと思っている。トンネル掘削に伴う湧水量と河川流量との関係は、水資源を考える上で極めて重要である。JR東海には、後ほどじっくりと丁寧に説明していただければと思う。


トンネル湧水の定量評価が議論の中心

 座長・福岡捷二中央大教授
本日の第8回会議では、この河川流量の維持に関して、山梨県側に流出するトンネル湧水の定量評価の結果が議論の中心になるかと思うが、その前に、前回会議でも指摘していた「大井川流域の水循環の概念図について」議事(1)として議論したいと思う。


深度化したモニタリングを説明

 (二村亨JR東海中央新幹線推進本部次長)※資料1、2の説明
資料1「第8回会議のご説明骨子」について説明する。議事(1)「大井川流域の水循環の概念図について」では、第7回会議を踏まえ、新たに水循環量を追記した水循環の概念図についてご説明する。議事(2)「工事期間中(先進坑貫通まで)の県外流出湧水の影響評価について」では、トンネル湧水量及び河川流量の予測値を用いてご説明する。議事(3)「モニタリング計画と管理体制について」では、第7回会議を踏まえ、深度化したモニタリングの目的や計画の内容についてご説明する。資料2「大井川水資源利用への影響回避・低減に向けた取組み(素案)」は取組みの全体を取りまとめるもの。表紙裏面の目次の通り、第8回会議の議事の内容が全体構成のどこに位置づけられるかを示ししている。


水利用の定量情報を追記

 (二村亨JR東海中央新幹線推進本部次長)※資料3の説明
資料3「大井川流域の水循環の概念図(素案)」についてご説明する。3枚目までは前回会議資料の再掲であり、1枚目は河川に沿った縦断面図、2枚目は井川ダム上流の鳥瞰図、3枚目は井川ダム下流の鳥瞰図。4枚目の表題は「大井川流域の水循環の概念図(現状の水循環量)」であり、前回会議における委員からのご指摘を踏まえて、大井川の水循環や水利用について定量的な情報を追記したもの。この資料は大井川流域を井川ダム上流、神座地点から井川ダムまで、神座下流の3つの区域に区分している。各区域における降雨量、蒸発散量、区域を跨ぐ河川流量、地下涵養量を算出した。
降雨量については、下向きの青い矢印で示しており、井川ダム上流区域は、井川観測所の年間合計雨量に井川ダム上流区域の流域面積を乗じて算出した。神座地点から井川ダムについては、川根本町の観測所の年間合計雨量に流域面積を乗じている。神座下流については、島田観測所の年間合計雨量に流域面積を乗じている。
蒸発散量については、上向きの矢印で示しており、ペンマン式を用いて算出した。河川流量については、黄色の大きな矢印で示しており、右側の黄色の矢印は井川ダム上流区域から下流側の区域への流量であるが、これは井川ダムの実績流入量である。左側の黄色の矢印は神座地点から井川ダムの区域からその下流側の神座下流区域への流量であるが、これは神座地点における大井川の観測流量である。オレンジ色の矢印で示す水利権水量については、各用水の期別水利権水量を足し合わせて年間の合計値を算出した。地下水涵養量については、右下の四角囲みに示すように、降雨量から蒸発散量、河川流量増加量を差し引いて算出した。水循環量はこのような算出方法であり、特に降雨量に関しては各区域において一つの代表点の降雨量から求めたという精度である。
各区域の計算結果を説明する。井川ダム上流の区域では、降雨降雪量が年約16億トン、蒸発散量が年約2億トン、井川ダムに流出する河川流量が年約12億トン、その他、発電の取水量があり、年約1億トンが地下水涵養量と算出した。神座地点から井川ダムの区域では、降雨量が年約24億トン、蒸発散量が年約3億トン、この区域の河川流量増加量が年約16億トンと算出した。河川流量増加量の年約16億トンについては、左側の黄色の矢印の横に記載した河川流量(神座)年約19億トンとその上に記載の水利権水量約9億トンを足し合わせた年約28トンから、右側の黄色の矢印の横に記載した河川流量(井川ダム)年約12億トンを引いた値であり、これをこの区域における河川流量増加量とした。降雨量年約24億トンから蒸発散量年約3億トン、河川流量増加量年約16億トンを引き、残りの年約5億トンが地下水涵養量であると算出した。なお、地下水涵養量には河川流量として計測できない伏流水の量を含んでいる。
神座下流の区域では、降雨量が年約3億トン、蒸発散量が年約0.5億トン、この区域の河川流量増加量が年約2億トン、残りの約0・5億トンが地下水涵養量と算出した。河川流量増加量の年約2億トンの算出方法については、神座より下流側には河川流量の常時計測地点がなく、上流側の神座地点の河川流量との差し引きによって算出することができなかった。そこで、大井川の西側を大井川と平行するように流れる大代川で計測された河川流量に、大代川とこの区域の大井川の流域面積比を乗じて、大井川の神座下流における河川流量増加量とした。なお、神座下流の地下水涵養量年約0.5億トンはこの流域内の降雨による涵養量であり、これ以外に上流側からの河川や地下水からの涵養が考えられる。また、水利権水量については、今後、実績水量に修正していく。説明は以上である。



 (座長・福岡捷二中央大教授)
ただいまの説明に関してまずはご意見をいただければと思う。


冬の渇水期の図も作成を

 (委員・森下祐一静岡大客員教授)
この図は包括的な基本図としては重要だと思うが、水が少ない冬期にどうなるかということも重要と考えている。現在の大井川水系では水が少ないため1月15日から取水制限をしている。渇水期には水系全体の水が不足するため、この時期の検討が最も重要。また、作成いただいた包括的な図も必要だが、冬の渇水期についての図も作成いただくことが必要と考えるがいかがか。



 (座長・福岡捷二中央大教授)
ただいまのご意見に対していかがか。


渇水期だけを捉えるのは難しい

 (沢田尚夫JR東海中央新幹線推進本部副本部長)
渇水期の循環図を作成いただきたいとの意見であったが、今回の循環図においても、これまでの過去何年間かの流量を使っているので、今、森下委員は包括的にとおっしゃったが、この流域全体で水がどのように流れているのかということにまず着目すべきでないかということであったので、今回、このような作り方をしている。渇水期だけを捉えて循環で表すのは今回の計算もなかなか難しいところがあったが、さらに渇水期だけ捉えることは難しいので、ご指導いただきながら作り方については考えたい。降雨が少なくなったり、多くなったりするところと、地下水の流れ、河川の流れは、ある程度、時間の流れやスパンが変わると思うので、短い期間に捉えることはなかなか難しいと思っている。その辺りもご指導いただきながら作り方は考えたい。



 (委員・森下祐一静岡大客員教授)
承知した。それではその検討よろしくお願いする。



 (座長・福岡捷二中央大教授)
ただいまの件も含めていかがか。


下流の地下水涵養量は改良を

 (委員・沖大幹東京大教授)
今の森下委員の発言についてだが、懸念はもっともだと思うが、表流水、川の水を使うという観点からすると、おっしゃる通り、冬の一番、川の水が少なくなった時期に、どういう水の流れがどのくらいになっているのかということを捉えることが非常に重要かと思う。ただ、今回のこの会議で主に議論をしている下流域の地下水の利用ということに関しては、そういう表流水の毎日あるいは1日のうちでも変動するような川の流れに対して、それらをいったんためてゆっくりと使うという、バッファーのような役目をしているというように認識しているため、まずはこうしたざっくりとした水循環図ということでいいのではないかという気がする。
ただ、いろいろ難点は、まだ未定稿ということであると思うが、例えば、今申し上げた神座よりも下流の地下水涵養量が約0.5億トンになっているが、実際、前回、前々回の同位体などの科学的な解析によって、表流水からの、つまり上流に降った雨に起因する川の流量からの下流域の地下水への涵養が非常に大きいだろうということが示唆されているので、この約0・5億トンというのはあまりにも少なく、実際に届けられている下流域の水の使用量に比べても非常に少ない値になってしまっていることから、まだまだ改良されるのだろうと考える。



 (座長・福岡捷二中央大教授)
ありがとうございます。他にはいかがか。


地下水の流れ全体についての認識は

 (委員・丸井敦尚産業技術総合研究所プロジェクトリーダー)
ありがとうございます。今の2人の委員の発言も含めてJR東海にうかがいたい。これは未定稿の図面だから、まだ決まってないというのは重々承知しているが、井川ダム上流と、神座地点から井川ダムで、それぞれ地下水の涵養量が年間約1億トンと約5億トンと書かれているが、過去の資料によれば、地質の構造を考えると上流と下流の地下水は連続していなかったというような資料があったかと思うが、この地下水が涵養された水の量というのはその地域のより深部へ地下水が流れ込んで浸透していくのか、それとも河川水になって下流側へ行くとか、あるいは地下水として連続している部分があるのかといったようなことについて水の流れ全体についてどのように認識されているか。


地下にたまっている水量を加えて改良する

 (沢田尚夫JR東海中央新幹線推進本部副本部長)
今回作らせていただいたこの循環図は先ほど説明したように、年間に供給される降雨量がどこにいくかということで描いた。この地下の涵養量も年間に降雨量であるとか、あるいは真ん中の地域、それから下流の地域では降雨量の他に上流から河川流として供給される水があるが、それが1年単位でどれくらい、どう動くかということを考えた。実際には、先ほど、沖委員もおっしゃったが、地下水として使われている水には、1年単位で動くのではなく、ストックされているというか、地下の中にたまっている水というのが実際あるのだと認識している。その部分というのがこういった年間の動き方の循環図とまた別で、ストックとしてあろうかという認識であるが、その部分が描かれていないので、もう少し書き加えて、改良すべきところだと思っている。そういう認識でいる。


水質調査の結果踏まえてブラッシュアップを

 (委員・丸井敦尚産業技術総合研究所プロジェクトリーダー)
ありがとうございました。同位体の結果や水質の結果も出つつあるので、ブラッシュアップしていただければと思う。よろしくお願いする。


田代ダムから山梨側へ流れる水量の追加を

 (委員・大東憲二大同大教授)
非常にわかりやすくなったと思う。ただ、1つ付け加えていただきたいのが、井川ダム上流部の田代ダムから山梨側に発電導水路という矢印が入っているが、ここに実際どれくらいの水が抜けているかという定量的な数値が入ってないので、水収支全体を考えている時には、ここの数値も結構重要になると思うので入れていただきたい。


水収支の100~1000倍の水が山体内に

 (委員・大東憲二大同大教授)
それから先ほどから議論になっているが、これはプラスマイナスの収支だけなので、降った雨がどれだけ蒸発して、あるいは流れて地下に浸透するかであるが、もう1つ水収支として大事なのは賦存量である。それぞれの山体の中にどれぐらいの水がたまっているのか、なかなか書きづらいと言われたが、これから議論になるのは、トンネルを掘って出てくる水というのは降雨で涵養されたものを直接抜くのではなくて、たまっている水を抜くということになるので、この賦存量というものを、正確には出ないかもしれないが、ざっくりオーダー的なスケールで示してほしい。この賦存量が水収支の中で出てくる数字の100倍なのか10 00倍なのか分からないが、それくらいの量の水がたぶん、南アルプスにはたまっているはずなので、そことの兼ね合いをこれから議論していけるように、そういう図もほしい。


地下の涵養分の流れを示して

 (委員・徳永朋祥東大教授)
このような数字が入った図を作っていただいたことは理解をするという意味では進んだと思う。一点、これは上流域、中流域、下流域と分けているが、上流域から中流域もしくは中流域から下流域まで、地下を通って動いている水の量っていうのが概念的にはあるわけであるが、それがあらわに描かれるようになると良いと思う。地下水涵養量と言われているものが、上流域、中流域、下流域で書かれているが、地下に涵養した水はどうなっているのかということは実はこの図では分からないところがあり、すなわち地下水涵養したやつがある所で表流水に戻っていって、表流水にカウントされるのか、それとも地下をそのまま通って下流側に行くのかということが分からないので、それを理解するためには先ほど申し上げた。この点線で書いている領域を越えて上流から下流に地下水としてどれだけ行っているかということを、現時点でどのように推定しているのか、ということを入れていただけると良いかなと思うので、検討いただければと思う。よろしくお願いする。


住民に理解できるようブラッシュアップを

 (座長・福岡捷二中央大教授)
ありがとうございました。たくさんの意見が出た。各委員からもう少しブラッシュアップせよと言うことであった。この図面を水利用の方々、市民の方々へご理解いただけるような説明資料としようとしているわけであるので、その辺もよく考えて、次回に向けて検討お願いしたい。さらに検討すると言うことでよろしいか。ありがとうございました。


湧水県外流出の議題は大変重要

 (座長・福岡捷二中央大教授)
それでは議題2「工事期間中の県外流出湧水の影響評価について」に入る。 JR東海より本資料の位置づけも含めて資料の説明をお願いする。 先ほど事務局からの説明があったように、この議題は大変重要な事項のため、分かりやすく丁寧に説明をお願いする。


工事中の湧水の県外流出の影響

 (二村亨JR東海中央新幹線推進本部次長)※資料4の説明
資料4「工事中(先進坑貫通まで)の県外流出湧水の影響評価(素案)について説明する本資料では一般論としてトンネル掘削に伴い、トンネル湧水量や河川流量がどのように変化していくかを水循環の考え方に基づき説明する。次に静岡工区におけるトンネル掘削に伴うトンネル湧水量や河川流量の変化を水収支解析(流量予測)の結果に基づいて説明する。水収支解析は従来のJR東海モデルに加えて、今回新たに静岡市モデルによる解析も実施した。解析は山梨県境付近を山梨県側から掘削することに伴い、工事期間中、先進坑が県境付近の断層帯を貫通するまで、トンネル湧水が県外に流出することも考慮して実施し、工事期間中の河川流量の変化を算出した。 最後に水収支解析の結果を踏まえ、山梨県側に流出するトンネル湧水の総量に着目した水資源量への影響評価について説明する。
「(2)トンネル湧水量や河川流量などの変化のイメージ」で、トンネル掘削に伴って山体内の地下水貯留量や河川流量等がどのように変化するかについて説明する。一般的にトンネル掘削によりトンネル周辺の地下水の一部がトンネル内に流出し、地下水位が徐々に低下し、地下水貯留量は減少する。地下水貯留量が減少している間、トンネル湧水量は河川流量の減少量より多くなるが、トンネル掘削完了後、定常状態となった時点で地下水貯留量の減少は収まり、トンネル湧水量と河川流量の減少量は一致するものと考えられる。南アルプストンネル静岡工区ではトンネル湧水は導水路トンネル等により河川に流す。トンネル掘削により河川流量などがどのように変化していくか次のページ以降で説明する。p2、「1)トンネル掘削前」の状態を図1に示す。降水は、河川を流れる①河川表流と、地下へ浸透する②地下浸透に分かれ、河川表流の一部は③蒸発散する。②地下浸透はいずれかの時期には最終的には④地表湧出するなどし、山体内の⑤地下水貯留量は一定となる。 図1の中で白いタンク内の水が山体内の地下水貯留を表しており、タンク内の水位が一定に保たれている。①河川表流と④地表湧出は中下流域に流れる河川となる。なお、ここでの前提として、左の四角の中に記載の通り、流域全体に常に一定の降水と蒸発散が生じているとする。また、他の流域からの水の出入りはないとしている。
続いてp3、「2)トンネル掘削完了時」について図2に示す。トンネル掘削によりトンネル周辺の地下水の一部がトンネル内に湧出し、山体内の⑤地下水貯留量が減少する。図2では白いタンク内の水位が低下していることを表している。また、赤い丸印で示している椹島の上流側では地下水位の低下に伴い、降水が①河川表流と②地下浸透に振り分けられる割合が変化し、①河川表流が減少し、②地下浸透が増える。その結果、椹島上流では①河川表流が減少すること、また、地下水位の低下に伴い、④地表湧出が減少することにより、河川流量は減少する。図2の中で椹島の上流側では図1と比べて河川流量が減少し、細くなっていることを表している。トンネル湧水は椹島上流側の⑤地下水貯留の減少分と①河川表流の減少分と④地表湧出の減少分を合わせた量となり、これをすべて導水路トンネルから吐出することにより⑤地下水貯留の減少分だけ、椹島下流側の河川流量は増加する。図2の中で椹島下流側では図1と比べて河川流量が増加し太くなっていることを表している。
次のp4の図3は、この変化をグラフで表したものである。横軸に時間、縦軸に流量を表している。グラフの下の四角の中の凡例に記載しているように、紫色のグラフは椹島下流側の河川流量を示している。その下の青い線は椹島上流側の河川流量、オレンジ色はトンネル湧水量を示している。このオレンジ色は導水路トンネル等から大井川に流す量でもある。オレンジ色のトンネル湧水量の構成は④地表湧出の減少分と①河川表流の減少分と⑤地下水貯留の減少分となっており、トンネル掘削が進むにつれ、その量は増加していく。青い線の椹島上流側の河川流量は、④地表湧出の減少分と①河川表流の減少分と合わせた量の分が工事前より減少する。トンネル掘削が進むにつれ、減少量が大きくなっていく。紫色の椹島下流側の河川流量は青色の椹島上流側の河川流量にオレンジ色のトンネル湧水量を足した量になるので、紫色で塗りつぶした⑤地下水貯留の減少分だけ、工事前より増加していく。
続いてp5「3)トンネル掘削完了後の恒常時」について図4に示す。トンネル掘削完了後も地下水位は低下するが、それに伴いトンネル内への湧水の湧き出しも弱まり、やがて地下水位の低下が止まり、安定する。図4の中 で白いタンク内の水位低下が止まった状態を表している。この時、白いタンク内に入っていく②地下浸透とタンクから出ていく④地表湧出と導水路トンネル吐出量を合わせた量が等しくなり、⑤地下水貯留は一定に保たれた状態となる。図4の中で椹島上流側では工事前と比べて河川流量が減少し、細くなっている。椹島下流側では導水路トンネルによりトンネル湧 水が吐出されるので河川流量は工事前と同じ状態となる。
次のp6、図5はトンネル掘削完 了後恒常時までの変化をグラフで表したものである。オレンジ色のトンネル湧水量、これは 導水路トンネル吐出量でもあるが、掘削完了後減少し、一定量となる。青色の椹島上流側の河 川流量減少量はトンネル掘削完了後も大きくなり、恒常時には一定量となる。オレンジ色の トンネル湧水量と椹島上流側の河川流量減少量は等しくなり、椹島下流側の河川流量は工事 前と同様となる。
続いてp7である。(3)水収支解析(流量予測)によるトンネル湧水量や河川流量の変 化の予測について説明する。まず1)予測の概要である。工事開始後のトンネル湧水量、河川 流量がどのように変化していくのかについて、JR東海モデルでの経時変化に加え、静岡市 モデルを用いて新たに解析を行った。河川流量の予測については、椹島より上流側である田 代ダム上流の地点と、椹島より下流側の2点で予測を行った。続いて2)予測条件である。JR東海モデルについては、第5回会議でお示ししたとおりである。静岡市モデルの条件の 概要については、第6回会議でご説明したようにこれまで実施された予測はトンネル掘削後 の変化が収束した状態での解析であったが、今回の検討では工事開始直後から工事完了後2 0年間の期間における変化について新たに解析を行った。また、静岡市モデルの解析に用いた降水量についてであるが、第6回会議でご説明したものは降水量が比較的少ない時期に相当する期間の日別のレーダー・アメダス解析雨量を用いて解析を実施していたが、今回の検討では降水量の季節変動による影響を除いて、工事による変化を把握するため、平均の日降 水量を継続的に与えた。
3)予測結果である。予測結果については、p9 図6で説明する。p9 図6上段がJR東海モデルによる予測結果、下段が静岡市モデルによる予測結果である。まず、グラフの見方について説明する。グラフの横軸はトンネル掘削開始後の経過月、縦軸は 流量である。上の四角の凡例に記載の通り、どちらのグラフも一番上の紫色の線が椹島下流側の河川流量、これは導水路トンネル等によりトンネル湧水を流す場合である。青色の点線 が椹島下流の河川流量、これは導水路トンネル等によりトンネル湧水を流さない場合である。オレンジ色が静岡工区全体のトンネル湧水量、緑色が静岡県と山梨県の県境から静岡県の県 内に設定している工区境までの間におけるトンネル湧水量である。なお、オレンジ色のトン ネル湧水量には、緑色のトンネル湧水量を含んでいない。黄色く色塗りした期間、これは約1 0カ月となるが、山梨県側から掘削することにより、この期間中は先進坑が貫通していないので、先進坑の湧水量が山梨県側に流出するということになる。紫色の椹島下流の河川流量は青い線の河川流量にオレンジ色のトンネル湧水量を足したものになる。また、黄色の流出期間が終了し、先進坑が繋がった時点からは緑色のトンネル湧水量も足されることとなる。
続いて予測結果について説明する。まず掘削前の河川流量については、JR東海モデルで毎秒約 10.9トン、静岡市モデルで毎秒約8.6トンと予測をした。予測に際して両モデルの間では数理乗数や気象条件によって異なった条件を与えているが、中でも降水量の条件が大きく異なっている。JR東海モデルではメッシュ平均値の降水量から田代ダム付近の年間総流量の実績値に合うように補正した降雨量を用いているが、静岡市ではメッシュ平均値をそのまま用いており、その分、流量の予測値はJR東海モデルの方が大きくなる。また、JR東海モデルでは、田代ダムや木賊堰堤などからの取水を考慮して予測しているので、その分、椹島下流の流量の予測値は小さくなる。このような異なった条件で予測を行っているため、掘削前の河川流量に差が生じている。掘削開始後は紫色のグラフに示す通り、両モデルともトンネル掘削前の河川流量に対して、掘削期間中、掘削完了後ともに、地下水貯留量の減少分を含むオレンジ色のトンネル湧水を河川に流すため、河川流量は維持される結果となる。また、 山梨県側へ流出する期間についても静岡県内の他の工事区間において、地下水貯留量の減少分を含むトンネル湧水を河川に流すため、河川流量は維持される結果となる。掘削完了後は 地下水位の低下が徐々に止まって安定し、トンネル湧水量や河川流量は一定となる。トンネル 掘削完了後の20年後の河川流量はどちらのモデルでもトンネル掘削前より多くなっている。
これについてはp10、図7をご覧いただきたい。この図は第6回会議資料の地下水位(計算上)予測値低下量図である。静岡市モデルでは、JR東海モデルに比べて県境付近の断層帯に沿って、地下水位が県境付近で大きく低下することにより大井川流域の外側からの地下水流入が生じ、これをトンネル湧水として大井川に流すものである。一方、JR東海モデルでは県境付近で地下水位はわずかではあるが減少するものの、主な要因は第2回会議で示したとおり、トンネルがある場合には河川維持流量を下回らないように発電のための取水量に制限を与えているためである。
続いてp11である。ここからは工事期間中、工事完了後の各段階におけるトンネル掘削状況、トンネル湧水の流し方、トンネル湧水量や河川流量の予測結果について示している。図8に示す①~⑥の各段階について、次のp12から順に記載している。いくつかの時点について説明する。p12 図9は①トンネル掘削前の状態である。上段がJR東海モデル、下段が静岡市モデルによる解析結果である。ご覧いただきたいのは、赤い点で示した田代ダム上流と椹島下流側の2地点における河川流量予測値である。JR東海モデル予測値は田代ダム上流で毎秒約12.1トン、椹島下流で毎秒約10.9トン、静岡市モデ ル予測値は田代ダム上流で毎秒約5.7トン、椹島下流で毎秒約8.6トンである。
続いてp14をご覧ください。図11は山梨県側から先進坑が県境付近の断層帯を貫通する時期である。赤く塗りつぶした箇所はトンネル工事の進捗を示している。田代ダム上流の河川流量は、JR東海モデルでは、トンネル掘削前の毎秒約12.1トンが毎秒約11.4トンに、静岡市モデルでは毎秒約5.7トンが毎秒約5.3トンと、両モデルとも工事前と比べて減少している。椹島下流の河川流量は、JR東海モデルでは、トンネル掘削前の毎秒約10.9トンが毎秒約11.2トンに、静岡市モデルでは毎秒約8.6トンが毎秒約8.7トンと、両モデルとも工事前より増加するとの結果である。
続いてp16である。図13はトンネル掘削完了時である。静岡県内に発生するトンネル 湧水は、導水路トンネルを経由して、大井川に流れる。JR東海モデル、静岡市モデルとも、 田代ダム上流の河川流量は工事前よりも減少し、椹島下流では、工事前よりも増加するという結果である。
続いてp17になる。図14はトンネル掘削完了後の恒常時である。JR東海モデルにおいて田代ダム上流ではトンネル掘削前の毎秒約12.1トンが、毎秒約10.0トンとなる。 この差から環境影響評価において、大井川の河川流量は毎秒約2トン減少すると述べたもので ある。これに対し、導水路トンネルによりトンネル湧水を大井川に流すことにより、椹島の河 川流量は、トンネル掘削前の毎秒約10.9トンから、トンネルの掘削とともに増加し、トン ネル掘削完了後には毎秒約11.9トンに、そして、この図に示しているように、恒常時では 毎秒約11.4トンとトンネル掘削前から増加すると予測されている。一方、静岡市モデルに おいては田代ダム上流ではトンネル掘削前の毎秒約5.7トンが、トンネル掘削完了後の恒 常時においては、毎秒約4.7トンと毎秒約1トンの減少となる。椹島の河川流量はトンネル掘削前の毎秒約8.6トンからトンネルの掘削とともに増加し、トンネル掘削完了後の恒常時状態では毎秒約8.9トンと、トンネル掘削前から増加すると予想され、JR東海モデルと同様の傾向となっている。
続いてp19をご覧いただきたい。4、工事期間中(先進坑貫通まで)の県外流出湧水の影 響評価である。二つ目の文で記載の通り、県外流出する湧水量の平均値は、JR東海モデルで は毎秒0.12トン、静岡市モデルでは毎秒0.21トンとなった。静岡市モデルの湧水量の方が大きいのは、県境付近の断層帯等の主要な断層部の透水係数がJR東海モデルよりも大きく設定されることによるものと考えられる。
ここからはp21をご覧いただきながら説明をさせていただく。p21図6、これは先程 示したグラフの再掲である。県外流出する湧水量の平均値は、JR東海モデル、毎秒0.12トン、静岡市モデル、毎秒0.21トンと先ほど申し上げたが、これはグラフの中で緑色の線で示した、トンネル湧水量の黄色部分で示した区間における湧水流出量を平均したものである。 また、山梨県側へ流出する湧水量の総量は、JR東海モデルでは毎秒約0.03億トン、静岡市モデルでは毎秒約0.05億トンとなっている。グラフの中で水色の斜線で囲ったところは、県外流出している期間における静岡県内の工区におけるトンネル湧水の総量で、これを大井川に流すことで、紫色の線の椹島下流の河川流量は工事前よりも増えている。水色の斜線のトンネル湧水量は(2)トンネル湧水量や河川流量の変化のイメージの時に説明したように、静岡 工区における①河川表流の減少分、④地表湧出の減少分、⑤地下水貯留の減少分を合わせたものになる。一方、青い点線の河川流量の減少分は静岡工区及び山梨工区の河川表流の減少 分、地表湧出の減少分を合わせたものになる。山梨県側へ流出する期間において、椹島下流側 の河川流量を維持するためには、水色の斜線で示した静岡工区における①河川表流の減少分、 ④地表湧出の減少分、⑤地下水貯留の減少分を合わせた量が、青い点線の河川流量の減少分 である静岡工区及び山梨工区の①河川表流の減少分と④地表湧出の減少分を合わせた量より も大きい必要がある。解析の結果として、椹島下流側の河川流量の増加分はJR東海モデル で約0.02億トン、静岡市モデルでは約0.04億トンとなり、椹島下流側の河川流量は維持される。
続いてp22である。突発的な湧水に関する内容である。解析において、突発的な湧水の現 象は表現できないものと考えているが、解析の条件として、県境付近の断層帯等においては、 一括りで大きい透水係数を設定していることから、トンネル湧水は大きめに算出されるもの と考えており、解析でのトンネル湧水量には突発的な湧水の量も含まれているものと考えて いる。図16は青い線が解析におけるトンネル湧水、赤い点線が実際の施工時に発生する湧 水のイメージである。左側のイメージ図は時間当たりの湧水量、右側は湧水の積算量を表している。
続いてp23である。今後工事期間中及び工事完了後に河川流量を確認していくためのモ ニタリング計画について検討していく。また、河川流量への影響をよりいっそう低減するため、トンネルの掘り方等についても検討していく。なお、トンネル湧水が山梨県側に流出しなかったと想定した場合の河川流量について、静岡市モデルによる解析結果を図17に示している。 図において、赤丸で囲んだ範囲の中で、緑色の線が県外流出しなかった場合の椹島の河川流 量である。緑色の線と紫色の線で囲んだ面積が県外流出する約0.05億トンということになる。 その後のページだが、JR東海モデルによる河川流出について、これまでの静岡県の専門部会では平均毎秒0.08トンで、流出する総量を200万トンと説明していたが、今回、静岡市モデルと比較する上で、先進坑貫通までの経時変化を把握し、毎秒0.12トンで流出総量約300万トンと算定した。また、静岡市モデルの透水係数について、第6回会議資料では 静岡市がまとめた報告書から引用して、主要な断層の透水係数を1×10-4m/秒としていたが、内容に誤りがあった。解析は1×10-5m/秒に設定して実施していたので訂正をする。資料4の説明は以上である。


非常に重要な資料

 (座長・福岡捷二中央大教授)
ただいまの資料は大井川の水資源の問題を検証するに当たり、トンネル湧水と河川流量の関係を示した非常に重要な資料であると理解している。ここまでの説明に関して、委員の皆様から自由にご質問・ご意見をいただきたい。


実際の河川流量の観測値は

 (委員・丸井敦尚産業技術総合研究所プロジェクトリーダー)
解析の議論を始める前に一つ教えていただきたい。いくつかのポイントでJR東海モデルと静岡市モデルを検討しているが、実際の河川水量の観測値はあるか。


JR東海モデルは再現で観測値使用

 (沢田尚夫JR東海中央新幹線推進本部副本部長)
JR東海モデルの方は、実際の観測値も使っている。使っているというのは、現状を再現するときに実際の観測値を使用しているということである。静岡市モデルの方は、現状再現をしておらず、解析のみである。


椹島での流量は把握しているか

 (委員・丸井敦尚産業技術総合研究所プロジェクトリーダー)
例えば椹島の1年間の平均の水量が把握できているのか。豊水期や渇水期の水量が把握できているのか示していただけないか。


月1回観測している

 (二村亨JR東海中央新幹線推進本部次長)
河川流量は常時計測を行っているところと月1回計測を行っているところがあり、常時計測は3箇所で行っている。椹島では月1回計測を行っているので、その量については示すことが可能である。


次回に示して

 (委員・丸井敦尚産業技術総合研究所プロジェクトリーダー)
次回にでもその量を示していただけないか。



 (座長・福岡捷二中央大教授)
それでは、次回に用意していただきたいと思う。


渇水期の予測を

 (委員・沖大幹東大教授)
今の丸井委員の質問の含意は、先ほど地下水の話で森下委員から渇水期という話があったが、地下水に関しては時間変動を抑えられるので年間で良いと思うが、河川流量の場合には季節変化が大きいところ、今回は平均値として示されている。やはり瀬切れということを考えると冬期の一番渇水になった時に何が起こるのかということを示していただいた方が安心感は上がるのではないかと思う。 また資料4の図6では360ヶ月の流量をずっと示しているが、右の方はある意味不要なので、最初の120ヶ月分を詳細に示していただく、また河川流量と湧水を同じ軸で示すのも1つのやり方ではあるが、JRモデルの毎秒10~12トンあるいは、静岡市モデルの毎秒8~10トンの辺りについて、詳細にどんなふうに時間変化していくかを示した方がよく見えるのではないかというふうに思うので、検討いただきたい。


透水係数の値を変えたらどうなるか

 (委員・森下祐一静岡大客員教授)
委員が指摘したとおり資料4の図6にある流量の変化率が小さくて、本当に知りたいところがよく分からないことになっている。JR東海モデルと静岡市モデルが2つあって、形が異なっているところで、実際この図からは水が減らないことを言いたいと思うのだが、山梨県側へ流出する期間においての流量の形はJR東海モデルと静岡市モデルで違う。そうすると、今はJR東海モデルと静岡市モデルの2つのモデルしかないため、2つを比べているのだが、例えばもう少し透水係数の値を変えたらどうなるか、カーブがどうなるのか、あるいは元々の流量よりも減ることもあり得るのではないか、その辺りを教えていただきたい。 もう1つ、p22について突発湧水の説明をいただいたが、突発的な湧水は解析に乗らないわけであるが、ここに書いている中で気になる表現は、実際よりも大きな透水係数を設定しているかのような書き方をしているが、その根拠を教えていただきたい。


設定がこれでない場合か

 (二村亨JR東海中央新幹線推進本部次長)
透水係数の設定がこれでなかった場合、という意味か。


もう一けた大きな値を入れる

 (委員・森下祐一静岡大客員教授)
例えば、県境付近の断層に、もう一けた大きな値を入れる場合である。


透水係数を上げると結果は変わる

 (二村亨JR東海中央新幹線推進本部次長)
いろいろなシミュレーションの仕方があると思っているが、今回静岡市モデルにしても、主要な断層帯の透水係数は1×10-5m/秒でやっている。これを仮にもう少し上げたらということになると、それは県境付近の断層帯で発生するトンネル湧水も増えるし、逆に他のところの断層帯もあるので、そこのトンネル湧水も増えるということになり、トータルとしてどうなるのかというのは、それは示さなければならないかもしれないとは思うが、この結果とは変わる可能性がある。


県境付近の透水係数は過小評価の可能性

 (委員・森下祐一静岡大客員教授)
今申し上げたのは、全体に透水係数を上げたらどうなるか、ということではなく、県境付近の断層というのは、実は過小評価をしていて、透水係数が他の地域ではこの仮定で良いとしても、県境付近の断層については、断層帯の幅がかなり広いことから、1つのブロックの中に一部分断層があるというイメージではないため、透水係数がもう少し高い可能性がある。そうなった時にどうなるかという質問である。


透水係数を高くすれば湧水量は増える

 (二村亨JR東海中央新幹線推進本部次長)
シミュレーションで、県境付近の断層の部分だけ透水係数を高くすれば、図6の緑色の線で示した湧水量が多くなるので、結果は変わってくると思う。


静岡市モデルで突発湧水が含まれる根拠は

 (委員・森下祐一静岡大客員教授)
今の質問と関係あるが、p22の書き方だと静岡市モデルでは突発湧水を含んだ大きな透水係数になっているとしているが、根拠はあるのか。


ブロックひとくくりで大きく設定

 (二村亨JR東海中央新幹線推進本部次長)
実際の透水係数については承知できていないが、p22で申し上げているのは、ブロックとしてひとくくりで大きい透水係数を設定しているので、そういう意味では大きめの湧水量が出ているのではないかと考えている。


大きいと思う理由は

 (委員・森下祐一静岡大客員教授)
大きいとなぜ思うのか。実際よりも大きいというニュアンスで書いたものと思うが。


河川流量と整合するように設定している

 (二村亨JR東海中央新幹線推進本部次長)
そこは解析を行った上で、実際の河川の流量と整合が合うようにやっているので、一番良い組合せということで適切だと考えている。透水係数を大きくしてしまうと河川流量との整合が取れなくなってしまうので、そういう意味では合わなくなってくるのではないか。


吹き付けコンクリートがないのは予測全体に該当

 (委員・森下祐一静岡大客員教授)
p22に「吹き付けコンクリート、防水シート、覆工コンクリート等がない状態で仮定した」とあるが、これはこれまで議論してきた水収支解析(流量予測)全体に当てはまることであり、この場所だけに当てはまることではないのに、それを理由にして水がその分減らないのではないかという言い方するのは論理的におかしいのではないか。


素掘り状態の解析のため多く出る

 (二村亨JR東海中央新幹線推進本部次長)
これは素掘りの状態で解析をしているので、傾向としては覆工がある場合よりもトンネル湧水量は多く出るであろうということであるが、それがどのくらいであるかについてはなかなか示すことができない状態であり、書き方については考えたい。


それでは定量的議論できない

 (委員・森下祐一静岡大客員教授)
この書き方はトリッキーである。なぜならば、先進坑が貫通する直前に山梨県側に水が流れるが、それは他の部分からの湧水を川に流すことで補うという書き方になっている。もし、吹き付けコンクリート、防水シートというような言い方をするのであれば、他の所でも同じことをしているので、逆に湧水をくみ上げる量がその場所での想定よりも少ない可能性がある。場所によって、吹付けコンクリートや薬液の注入では対処できない場所もあるため、まだら模様になって一様にポンプアップできる所と、ポンプアップするが、それが予想よりも少ない所と、ほとんどそれができなくて流れてしまう所があると思うので、今このような議論を始めてしまうと、定量的な議論はできないのではないかと思う。いかがであるか。


誤解を招く表現は改める

 (沢田尚夫JR東海中央新幹線推進本部副本部長)
今の解析の条件は、山梨側も静岡側も全て吹き付け等あるいは注入等がない状態で行っており、条件は合わせている。山梨側だけ水が出て、静岡側だけ水を止めることはしないが、表現が少し誤解を招くことがあればそこは改めたいと思う。
透水係数のことで補足させていただくと、山梨県側で行ったボーリング調査の中でも、透水係数の分布を見ている。私ども(JR東海モデル)は断層帯では10-6m/秒という数字を使っているが、これは想定している(断層帯の)幅である大体1キロ全部にこの数字を与えている。一方、静岡県側から斜めのボーリングをやって県境の断層付近を探っているが、悪いところが何百メートルにわたって全て続くということではなく、いい所もありながら悪い所もある。そこを一律悪いという条件で、10-6m/秒という値を設定した。
静岡市のモデルでは、断層のところ(の透水係数)はさらに大きい10-5m/秒という数字を適用しているが、この値を(断層帯の)幅全体に適用するには、かなり大きい透水係数だと考えている。
従って、これをまた(さらに大きな値に)変えるというのは(解析すれば)数字としては出てくると思うが、現状を考えた時の評価は難しいと思う。感度を見るという意味ではあるかと思うが。我々が設定した(JR東海モデルの)透水係数も、静岡市モデル(で設定されている透水係数)も、水がどちらとも出やすいという条件になっていると我々は考えている。そういう意味で、突発湧水のグラフも含めて、今回は記載をさせていただいた。


グラフを詳細に作り変えて

 (委員・森下祐一静岡大客員教授)
それでは、先ほど、委員からもご指摘があったようにグラフをもう少し詳細に分かるような形に作り変えていただきたい。


現地の状況に合わせて解析をどう使うか丁寧に

 (委員・徳永朋祥東京大教授)
先ほどの透水係数の議論は、なかなか簡単に値が決められないというのはあるとは思う。透水係数を非常に高くしていくと、山は水を持てなくなってしまうので、地下水位が下がり、河川に水が流出してくる標高も下がる。そういう議論をどこまでやるかというのは難しいところがあるが、現状対象としている断層において、どこに想定される地下水面の高さがあるのかというようなことを、現地を見て、それに対して変化の幅を想定した上で、(影響を)受ける可能性がある水の量を想定しておかないと、JR東海の言うように透水係数を上げれば、当然出てくる量は増えるという計算になるため、議論が逆にしにくくなる。現地の状況がどうなっているのかということと合わせながら、解析をどう使っていくかということは、丁寧にやっていただければいいと思う。


工期が延びた場合の想定は

 (委員・徳永朋祥東京大教授)
今回の解析の結果として、地下に貯留されているものが出ていくことの貢献があるので、表流水が地下に浸透していくことが増えることによって(流量が)減少する分が補償されるという、水の循環もしくは挙動をするということは、概念的には理解できる。解析された結果として、今考えている、山梨県側に流出する期間を想定すると、減るということにはならないというのが結論だと思うが、これはそういうふうに工事が進んだとすればそういう結果になるということであって、リスクはある。例えば工事期間が延びて、山梨から静岡につながるということが遅れた場合には、今考えている想定がどう変わるのか、それに対してはどういう準備をしておくのか、もしくはそういうことを避けるためにどういう工事をするのかというようなあたりを、この結果に基づいて議論していただくことが大事。


工期遅れの想定はリスク議論で行う

 (座長・福岡捷二中央大教授)
ただいまの前段のご意見については、これまでも何度も議論されてきた。地下水の専門家のご意見をとりまとめに活かしたいと思う。後段について、今回の結果をトンネル掘削に伴うリスクにおいても議論をしなければならないとのご意見があったがいかがか。では、次回の議題のリスクの中で議論をさせていただく。ありがとうございました。


いろいろな条件を考えてリスクを説明したい

 (沢田尚夫JR東海中央新幹線推進本部副本部長)
今回の解析の結果、2つのモデルでやった結果、こうですということであるが、今先生方からいただいたご意見というのは、解析において前提条件が変わったり、違う結果もあるだろうということであり、それは考えなければならないと思っている。工事のやり方も含めて、リスクという言葉になると思うが、もう少し色々な条件・バリエーションを考えてご説明できるようにしていきたい。



 (座長・福岡捷二中央大教授)
丸井委員、先ほどご質問された解析結果についてのご議論、私には理解できなかった部分もあったので、今一度追加の説明をお願いしたい。


流量減少時期を避けた工事は可能か

 (委員・丸井敦尚産業技術総合研究所プロジェクトリーダー)
この解析の結果は結果として受け止めており、今ここで解析の精度について議論しても仕方ないと思う。今の段階ではわからないこともある。例えば委員がおっしゃるようにスパンを細かく見て、この解析をした場合に、例えば河川流量が減少するような時期をなるべく避けるような工事のスタート時期を考えるとか、あるいは河川流量の減り方と県外への流出の割合とかいろいろなものを比較しながら、工事をなるべく集中的に行う、あるいはタイミングを見て行うということをコントロールすることによって、リスクを回避することができるかできないかを、まずJR東海の方々に伺いたい。 例えば、工事をしながら、その結果やモニタリングの数値を見ながらコントロールするのに、十分な解析精度になっているかどうかということを含めて、もしかしたら部分的にもっと細かい解析をしなければならないが、そこをどう考えているか、工事のスタートのタイミングも含めて教えていただけるとありがたい。なるべくリスクを回避していただけるようお願いしたい。



 (座長・福岡捷二中央大教授)
ただいまの委員の後半部分のご意見、ご質問について、JR東海としてはどのように考えているか。


工事中に地質や湧水のデータを取りフィードバック

 (沢田尚夫JR東海中央新幹線推進本部副本部長)
いろいろいただいたご意見について、総論的な答えとしては、しっかりと考えていきたい。工事のスタート時期はコントロールしづらい部分があるが、工事を進めていく中で、出てくる水の量を測ることや、地質や湧水のデータを取りながら、細かい解析を行ってフィードバックしていくことを行っていきたい。また、掘り方そのものでなく、補助的な工法を使って、なるべく水を出さないようにすることや、次の議論かもしれないが、山梨側から掘っている時に静岡側から県外流出してしまう水を少しでも減らす工夫を含めて、工事中は湧水量や地質の状況をきちんと把握し、それをフィードバックして取り組んでいきたい。


工事中に問題が起きた場合の工程必要

 (委員・西村和夫都立大理事)
今、丸井委員もおっしゃっていたが、解析はモデルを変えれば変わるし、物性もはっきりしない状況で、メッシュも粗いため、あくまでも参考値として、私も捉えている。ただし、トンネル掘削する側から見た場合、どのような条件で、どのような水の問題がでてくるのか、その情報が大事である。これは、水の量の絶対値だけを問題にしているのではなく、変化やトレンドも大事ということである。通常、トンネルを施工する場合には、工事を着工する前に、標準的な堀り方の他に、問題が出てきた場合に、どういった対策をするか十分考えて、例えば、どのような時に補助工法を使うのか等、切り替える時の判断の閾値(しきいち)を考える。普通はこれらのフローを作って管理していくことになる。そのような意味では、いろいろな考え方や数値が出てきているが、これら閾値の基になる数値は幅があり、あくまでも代表値であることを認識しているが、この場合はパラメータを大きく動かした数値、この場合はざっくりした数値と都度、都度、感度が異なるのではなく、一貫したレベル感での数値として算出した方が施工に反映しやすい。


トンネル位置より高い部分の水は枯れる

 (委員・大東憲二大同大教授)
今回の水収支シミュレーションの計算の図1、2、4についてだが、概念図として山体に溜まっている水がトンネルまたは導水路によって抜けることで貯留量が変化し、その結果、河川に出てくる水の量も減ることが分かった。ただし、山体にあった水を椹島に供給するため、下流側は増えぎみである傾向について、JRモデルと静岡モデルで共通の結果であることは理解した。また、山体貯留のイメージ図についてだが、トンネルの影響で、どこまでたまっている水が減っていくかはトンネルの位置によって変わるので、標高の高いところで水を抜いた場合は、それより上の部分では水が大きく減って、それより下の部分で湧き出している水は大きな影響を受けない。また、トンネルより高い部分での湧水は枯れてしまう。トンネルの位置によってどこの水が一番影響を受けるかは、シミュレーション結果に出ていると思うが、概念図として、トンネルの位置と穴の開いている高さの位置関係がつかめると良いかと思う。


予測結果は生態系の影響検討でも使用

 (委員・大東憲二大同大教授)
もう1つは、トンネル掘削の前と後で、椹島下流については、ほとんど影響がない結論であるが、上流については、大きく河川流量が減ることがシミュレーションの結果として出ている。河川水の減少量が生態系へどのような影響を及ぼすのか、次の議論になる。今のところは、下流側の水利用の話で限定しているが、今回のシミュレーションの結果が、次の生態系への影響の検討に使われることを認識していただきたい。


個々に課題は少し残っている

 (座長・福岡捷二中央大教授)
ありがとうございました。他にはあるか。ただいま、いろいろな角度から議論があった。要するに、表現の仕方を理解するために、もう少し図面の表現を、ちゃんと何をどう知りたいということがちゃんと見えるような、具体的な時間指定の図面の中での時間スケールをもう少ししっかり書いて分かるようにしてほしいということを含めて議論が過ぎたし、それから、流量の問題についても県境に達するものの区間の実態がどうなっているのかについて、もう少し知っておきたいと。これは必要なことであるということだが、全体としては委員からいただいた意見は、個々にまだ課題は少しは残っているのかも分からないが、全体として私が伺って抱いたものは、JR東海から出されたモデルについては概ねこういうことだということで、私としてこれをどう捉えるのかということを少しまとめたいと思う。


導水路トンネルで戻せば椹島より下流で河川流量維持される

 (座長・福岡捷二中央大教授)
今回はトンネル湧水と河川流量との関係を分かりやすく示すために、はじめに、降水量、河川流量、地下水とトンネル掘削による湧水量の全体的な構造が示された。そして、トンネル掘削により、椹島より上流側においては、河川流量が減るが、トンネル湧水を導水路トンネル等により大井川へ戻すことにより、椹島より下流域においては、河川流量が維持されることが示された。また、この考え方に基づき、静岡市モデルやJR東海モデルにおいて、山梨県側へ県外流出した場合を含めて分析した結果、導水路トンネル等で大井川へ戻される量を考慮すると、椹島より下流側の河川流量はトンネル掘削前の河川流量を下回らないことが計算結果として示されたと思う。ここまでの、トンネル湧水と河川流量との関係について、本専門家会議で確認できたということでいかがか。


不確実なモデルのまま是認は難しい

 (委員・森下祐一静岡大客員教授)
本日提出された水循環モデルについて、降水量や工期などについて委員から意見が出された。また、突発湧水に関する定量的な議論もこれからである。従って、不確実性があるこの段階でのモデルをそのまま是認することは難しいので、そういった問題についても更に検討していただき、本日出された意見を踏まえて修正いただくことが前提だと思うが、いかがか。


不確実性の議論は次回に行う

 (座長・福岡捷二中央大教授)
この後、すぐに申し上げようと思っていた。今回示されたトンネル湧水には、突発湧水も含まれているとの説明もあったが、トンネル湧水を大井川へ戻すに当たっては、想定されているトンネル湧水や突発湧水等が、不確実性を伴うことになるかと思う。委員をはじめとして、多くの委員が言われたトンネル掘削に伴う不確実性については、引き続きリスク管理の中で、しっかり議論していただきたいと思う。よって、JR東海に対しては、利水者が安心できるようトンネルの掘削工事や、不測の事態が生じた場合のリスク対策の考え方等を次回提示するよう指示したいと思う。委員の皆様としてはいかがか。


平均的な条件で減らないと結論付けるのは難しい

 (委員・沖大幹東京大教授)
今のまとめは若干、誤解を生むなと思うのは、静岡市モデルでは同じ雨が毎日降るという非常に単純化した条件で減らないと言っているが、先ほど来、話が出ているように年間の変動がある中で、減らないことだけを強調するのは、非常に非現実的なシミュレーションをして、JR 東海の計算でも平均的には減らないという話をしているわけで、実際には分からない。逆に言うと、1日たりとも本来なかった時に比べて減ってはいけないのかというと、例えば0.1トン、もしなかった時に比べて減ったという日があったから、何か深刻な影響が出るかというと それも非常に考えにくいので、今回のこの計算だけで決して減らないというような結論を導くのは大きな間違いでないかという気がする。平均的には減らないだろうということが示されたということ。しかも、水収支の計算を考えると、これはペンマン・モンティースで蒸発散やっているので、植生の影響も考えてないので影響が出ないかもしれない。まじめに計算すると一定量の雨でやった時には、本来よりも蒸発散が大きくなる。さらに表面流出が小さくなるので蒸発散が増えるが、非常にある意味で言うと現実的ではない、平均的な条件で計算し てみるとこうなったというだけなので、一般解のような言い方をするのは間違いではないか。


どう表現すべきか

 (座長・福岡捷二中央大教授)
沖委員としては、どういうふうに表現するべきだとお考えか。


一定量の雨が降った場合の計算と表記を

 (委員・沖大幹東大教授)
ここに書いてある通り、一定量の雨が降った場合にはこういう計算になるという。これ以上でも以下でもないのではないかと思う。


平均的な条件の計算という表記でいいか

 (座長・福岡捷二中央大教授)
沖委員のご意見は、雨の降り方について平均的な条件での計算であることを書くようにということと解釈してよろしいか。


結構だ

 (委員・沖大幹東大教授)
それで結構である。


柔軟な管理値で施工計画を

 (委員・西村和夫都立大理事)
最終的には、例えば施工する段階になれば、周りの環境をモニタリングしながら施工することになるが、その影響に対する管理基準を作ることになる。そうなると今、沖委員がおっしゃったように、非常にリジッドな(硬直した)数値ということで数値解析の結果が捉えられると多分、何もできない。だから、先ほど数値解析は一つの参考値と考えていると申し上げたが、ある程度の許容の中でどのように環境に影響があるのか、そのグレーゾーンを決めないと、モニタリング等にいろいろ条件が入ったとしても施工の融通性がなくなるのと、実際にトンネルで施工していて、周りに影響が出てくるのはタイムラグがあるから、やはり柔軟な考え方もしくは数値の取り扱いを前提にしないと施工計画は多分、立てられないと考える。


湧水県外流出はリスク管理として次回検討

 (座長・福岡捷二中央大教授)
先ほどの私のまとめのコメントに加えて、ただいまの西村委員のご意見を座長コメントの中に書き込むようにしたい。県外湧出水の影響評価の不確実性にかかわる点については、リスク管理の問題として次回の会議で検討していきたい。以上、県外湧出水の評価については専門家会議で確認したということにさせていただきたい。委員の皆様、よろしいか。ありがとうございました。宇野副社長として、何かこの件についてコメントいただけるか。


次回に向けて検討続ける

 (宇野護JR東海副社長)
今日いろいろご意見いただいて、それぞれに私も受け止めさせていただくものばかりである。委員の話もぜひ、くみ取って次回に向けて検討を続けて行きたい。



 (座長・福岡捷二中央大教授)
それでは、議題(3)モニタリング計画と管理体制について進みたい。JR東海より資料の説明をお願いする。


モニタリングの目的などを追加

 (二村亨JR東海中央新幹線推進本部次長)※資料5の説明
資料5モニタリング計画と管理体制(素案)について説明する。モニタリングに関しては前回会議で説明した際に委員の皆様から様々な意見をいただいたところであり、今回モニタリングの考え方や計画の内容について深度化したので前回からの追加・修正点について説明する。
p1をご覧いただきたい。資料の中で追加・修正点については、赤い文字で記している。モニタリングの考え方について。トンネル掘削中は地質や湧水等の状況を確認するほか、工事中、工事完了後の将来にわたって大井川の上流域から中下流域にかけての河川流量、地下水位、水質等についてモニタリングを実施し、バックグラウンドデータとの変化を視覚的に確認できるような形で整理をする。モニタリングの地点や頻度等については、今後、静岡県等とも調整を行い、必要な場合は追加、変更等を行っていく。また、生態系の観点も考慮の上、決定する。工事開始後は測定の結果を反映し、専門家のご助言をいただきながら必要に応じ地点や頻度等を変更する。
続いて「(2)モニタリングの目的」を追加した。トンネル掘削に伴う、地下水位、河川や沢の流量、水質、水温及び水質組成に生じる変化の有無や程度を確認する一方、トンネル湧水量や降水量等の計測を行い、これらの情報を基に大井川の水資源利用への影響について検証する。2)解析結果から想定される現象の確認。水収支解析の結果から現象として想定される掘削の進捗に伴うトンネル湧水量、河川・沢流量の変化、掘削完了後の湧水量、河川・沢流量の変化、地下水位の低下量及び低下範囲について、降水量等の計測を行いつつ、変動の状況を確認し、解析結果から想定される現象を実測結果において確認し、差異があればその内容について把握する。3)環境保全の対策への反映。トンネル湧水量や河川・沢の流量等から、湧水量低減のための補助工法、濁水処理設備の追加、動植物の代償措置等、環境保全の対策の実施について判断する。4)住民の方々へのデータ公開。河川流量や地下水位のモニタリングの結果や解析結果から想定される現象の確認結果等を公表し、住民の方々がご確認いただける仕組みとすることで、住民の方々のご安心につなげる。
(3)モニタリングの計画について。地質の状況確認やトンネル湧水量、水質等の把握のほか、工事中及び工事 完了後の将来にわたり、河川や地下水の水量、水質、水位、水温についてのモニタリングを実施する他、地下水等の化学的な成分分析を行う。
次に具体的な内容に関する追加・修正内容について、高速長尺先進ボーリング (以下、「先進ボーリング」という。) の実施については、前回資料に記載していたが、今回3番目や4番目の分に記載しているように、先進ボーリング結果による濁水処理設備の追加検討、湧水の水温や水質の計測、化学的な成分分析の実施ついて追記を行った。
続いてp4について、前回会議における委員からのご指摘を踏まえ、破砕帯等や地質が変化する箇所においてはコアボーリングを実施し、コアをよく観察のうえ、地質の状況を把握すると共に、さらに、各種試験結果に基づいてトンネル掘削の設計を行うことを追記した。また、トンネル掘削時に得られたデータを施工計画にフィードバックしていくことを追記した。
p5について、切羽の観察等から地質状況を把握し、こうしたデータを施工計画にフィードバックしながらトンネル掘削を進めていくことを追加した。また、p5の最後には、工事完了後も測定を継続し、工事完了後に継続して設置する処理設備の仕様等に反映することを追加した。p6の図4にデータの施工計画へのフィードバックのフローを追加した。A3資料を縦にご覧いただいて、オレンジ色で塗ったところが観測や計測項目の一例である。一番上の斜坑掘削段階のところで申し上げると、①先進ボーリングの結果に基づいて。②斜坑掘削計画を策定、③斜坑掘削工事中の計測により、④チェックに記載しているように想定を著しく上回る水位流量変化がある等を確認し必要な場合には②の斜坑掘削計画に戻って計画の見直しを行う。こうした①~④を繰り返しながら、掘削を進める。
続いてp7について、表1は河川等の流量調査地点の概要を示したものだが、常時計測地点 に椹島を追加した。この調査目的は、トンネル湧水を河川に戻す椹島でトンネル掘削による流量変化を確認するためである。また、椹島での計測は水位計による連続計測を基本に考えている。
また、表の3番目の分類にあるトンネル周辺の沢等の計測について、切羽が近づいてきたときの計測や工事後の計測について追加した。
次にp8について、導水路トンネルによる、トンネル湧水の河川放流箇所である椹島においてトンネル工事の進捗に伴う河川流量変化をどのように把握するかについて追加した。次のp9の図5に椹島下流における流量変化についての把握イメージを示した。左上のカッコに記載のとおり、工事前から、各調査地点における降水量等と流量の関係性を把握する。各調査地点には図5の右上に記載しているトンネル工事の影響を受けないと考える不動点を含める。不動点と影響範囲内の各地点の流量の関係性を把握する。工事中においては不動点の流量から影響範囲内の各地点の流量を推定する。各地点の流量の推定値と実測値を比較し工事による流量変化、特に椹島下流における流量変化を把握することを考えている。
続いてp10については、図6は上流域の調査地点を示したものである。左の下図はJR 東海モデルの予測結果、右の下図は静岡市モデルの予測結果である。調査地点は左右のどちらも一緒である。赤い文字で記している箇所が今回の追記や変更で、西俣ヤード内の観測井設置、椹島付近の流量確認、椹島付近の観測井設置が追加事項である。また、青色の四角が西俣ヤード、千石ヤード、椹島の3箇所にあるが、これらは降水量の常時計測地点として追加したものである。
続いてp11について、南アルプストンネルは大半が、土被りが大きく地下深くを掘削することから、浅層地下水位は基本的に掘削の影響は小さく、季節や降水量に伴う変動が見られると考えられ、深層地下水位は、掘削に伴って変動が見られると考えられる。また、地下水位低下の範囲は赤石沢付近及び椹島付近で小さくなる結果となっており、地下水位の変動範囲は、椹島付近までと考えられる。地下水位のモニタリングはこれらの傾向を確認するために計画することとし、表2に具体的な計画地点の概要を整理した。今回追加したのは観測井4-2、西俣付近の浅井戸、観測井5、椹島付近の深井戸である。
p12の図7は、2本の深井戸の本坑との位置関係を表したものである。下の縦断図をご覧いただくと、西俣ヤード付近で設置を進めている観測井4-1では、本坑の深さ付近の地下水位の挙動を確認する。
続いてp13の上から二つ目の文章について、椹島より更に下流の測定地点として井川西山平地区に新たに設置した観測井について記載をした。トンネル掘削による地下水位の変動範囲は椹島付近までと考えているが、椹島の観測井で地下水位に大きな変動がみられた場合には想定よりも広い範囲に影響が及んでいる可能性があるので、さらに下流側にある井川地区の観測井の地下水位を確認する。工事完了後も測定値が恒常的な値を示すまで、観測井での測定を継続する。
p14について、トンネル工事湧水等は水質・水温を監視しながら河川に放流する。今回、調査項目に電気伝導度(EC)を追加した。また、重金属等に関し、トンネル掘削土については、1回/日確認することを説明したが、発生土に基準値を超過する重金属等が確認された場合には、トンネル湧水についても、1回/日とすることを追加した。p14の下2つの文にて放流先河川における、水質・水温の計測について追加した。水質の測定値が管理値を超えた場合には原因究明を行い、対策を講じると共に、水生生物の状況を確認することを追加した。水温については、放流箇所の下流地点で計測を行い水温の分布状況を把握し、変動の傾向がみられた場合には水生生物の状況を確認し、トンネル湧水を出来る限り外気に曝した上で河川へ放流することや分散放流等の対策をとることを追加した。
p15の表3はトンネル湧水放流先の河川の水質水温に関する調査時期と頻度について表したものである。SS、pH、EC、水温は常時計測、重金属等は1回/月を基本に計測する。
p17について、表4は放流先河川における水質調査をまとめたものである。表の中で赤字になっている箇所は変更点であり、ECを項目に追加し、工事前、工事中の調査頻度を1回/月に増やした。
p20について、中下流域の河川流量や地下水位等についても、継続的に調査することを追加した。4つ目の文章で工事前の計測結果をバックグラウンドデータとして整理し、工事後の結果がこれまでに計測された範囲を超えた場合や、見られなかった変動の傾向を示した場合には、その要因について、専門家のご助言をいただきながら確認し、その結果を公表することを追加した。また工事完了後の継続的な確認についても追加した。
p22について、中下流域の地下水位は、静岡県等が継続的に計測している井戸15か所のデータを使用する。また、井川西山平地区では、JR東海が常時計測を実施する。さらに、観測密度を高める必要がある場合には測定地点を追加し、JR東海が常時計測することを追加した。地下水位についても、河川流量と同様、バックグラウンドデータとして整理や、工事後の結果がこれまでに計測された範囲を超えた場合の対応、工事完了後の継続測定について追加した。大井川流域の地下水等の化学的な成分分析については、水質組成の変化等を確認することや、井川西山平の深層地下水の変化の有無の確認について追加した。
p23について、トンネル掘削前の段階から専門家のご意見を聴き、モニタリングの着眼点を整理すること、工事中、工事完了後のモニタリング結果や工事に伴う影響評価について追加した。
p26について、最後の文にモニタリングで得られた大井川流域に関する各種の情報について、JR東海から発信に努め、地元の大学や地域の公的機関、地域の研究者の方々等と共有して、様々な形でご活用いただけるよう、静岡県等の関係者の皆様と調整することを追加した。資料5の説明は以上である。



 (座長・福岡捷二中央大教授)
それではここまでのご説明に関して委員皆様から自由にご質問、ご意見をいただきたい。


残土の現地処理の検討は

 (委員・森下祐一静岡大客員教授)
資料のp17をご覧いただきたい。p17の一番下だが、このページは発生土置き場についてのページだが、一番下のところに、重金属を含んでいる掘削土について4行ほど書いてある。前回の会議でオンサイト(現地)処理システムを使うことを提案したが、これについては検討されたか。


まとまったら説明する

 (二村亨JR東海中央新幹線推進本部次長)
前回、委員からご意見いただき、現在検討中である。またまとまった時点で、やり方もいくつかあるようなので、まず、我々が今考えている内容についてまたご説明させていただければと思っている。


ヒ素処理だけでも対策土の量減らせる

 (委員・森下祐一静岡大客員教授)
 仮に山元で全ての重金属を処理できなかったとしても、ヒ素を処理するだけでも対策土の量はかなり減ると思う。その分、懸念が大きく減ると考えているので、検討をよろしくお願いする。


トンネル直上の河川流量減少は同意

 (委員・大東憲二大同大教授)
 今回のモニタリングの計画は、大井川の下流部の地下水利用を前提として川の水量が減るか減らないかということをきちんとモニタリングしていくことである。この計画はそれでよろしいかと思うが、先ほど、私、発言したように、このトンネル直上部辺りの河川流量が減るというシミュレーション結果が出て、先ほど、このシミュレーションで大体の傾向を表しているでしょうという会議の同意が一応得られたという前提でお話しするが、そうすると、ここの部分は水量が減ることが同意されたことになる。それはどうしますかということが次の課題である。また、この減っていく量を本当にきちんと確認する体制が取れていることを確認する必要がある。モニタリングというのは、この地域の植生、生態系も含めての影響を評価するためのモニタリングだと思う。そのためには、例えば、このp10に、河川流量と地下水位、その観測体制の候補地点が図として載っているが、本当にこれでいいのでしょうか。その辺の詰めがまだ十分できてないのかなというふうに思う。特にこの赤い丸とピンクの丸、大きな丸との違いがよく見えない。常時観測する所と常時観測候補地が示されているが、候補地はすべてやるのか、この中から抜粋して何か所か選別するのか、その辺もよくわからない。その辺の詰めをもう少しモニタリング計画の中に組み込んでいただくのがいいと思う。


生態系の議論も専門家会議で

 (座長・福岡捷二中央大教授)
ただ今の大東委員のご意見に私は賛成である。実は、生態系の関連のモニタリングも含めて専門家会議でも議論の場を持つことを提案しようと思っていた。議論を広げて検討することをお願いしたいと思う。


モニタリングと影響の最小化を関連付けて

 (委員・徳永朋祥東大教授)
モニタリングをこういうふうに整理していくことは極めて意味があることだと思うが、先ほど、沖委員がおっしゃられたように、モデルは相当な単純化をしてやっている中で、その中から我々は何か必要な情報を得ようとやっているわけだと思う。そういうことからJR東海がこういうことであろうと考えていることを、どういうふうにモニタリングをしながら確認をしていき、今想定していることと違っていることになり得ているか、どうかっていうことを、事前に知る努力をするかという意味で、今日、資料4でご提示していただいたものと、モニタリングの計画というものがどう関連していて、どこをどうJR東海として現象を追っかけて行って、地域の方々に対する影響を最小化するのかということを実践しようとされているのかという辺りが説明できるように作っていただけるとより良いかなと思う。今、モニタリングはモニタリングになっていて、現象予測と考える対応というのはこういうことになっているというのは切れているように見えるので、そこはしっかりつないでおいていただけるといいと思う。


気候変動を踏まえた長期観測を

 (委員・丸井敦尚産業技術総合研究所プロジェクトリーダー)
今回の資料には赤字(修正部分)がたくさんあって、それだけご苦労されたんだろうなと思い、資料が充実したと感じつつ拝見していた。私のコメントとしていくつか申し上げたいが、まず一つ目は東俣の所でモニタリングをすると。これをバックグラウンドのデータと合わせつつ、トンネル工事の影響が出たかどうかという話をされていたが、そこで二つほど申したい。私の記憶によれば、東俣というのは南に開いた谷である。それと今回ターゲットとなっている西俣から上流側の方の谷というのは、どちらかというと東に開いている谷であり、季節風の影響とか、降水、降雪の影響が若干違うと思う。それからJR東海は20年くらいかけて影響がなくなるだろうという予測をされているが、地球の環境の変化を考えると、IPCC等によれば、20年後には0.7度くらい地球全体の気温も上がると言われている。正確には30年で1度くらいということだが、そういったことを考えると、地球の環境の変化を考えながら、長期のモニタリングのポイントを置くというような観点から、東俣だけではない、全体のことをお考えいただけるとよいかと思う。


重金属を含む残土の分離スピーディーさ求められる

 (委員・丸井敦尚産業技術総合研究所プロジェクトリーダー)
それから、住民の皆さんが心配される点としては、発生土のところで通常土のことはここに書いてあるが、(重金属などを含む)処理を必要とする土が出てきたときに、どういうふうに、どのくらいのタイミングで切り分けられるのかというスピーディーさが求められることもあるし、あるいは細かいことで恐縮だが、p22になるが、③の赤字の中に、水質組成の変化を確認することというふうに書いている。組成が変化しなければ全体のボリュームが増えてもいいのかとかいう茶々を入れる人もいるかと思うため、そこら辺のことも含めて、組成の変化だけではなく、全体量も含めて溶存量が変化した時には適切な対策を打つというようなことをお考えいただけるとありがたい


閾値の見直しがその都度必要

 (委員・西村和夫都立大理事)
施工に関連してだが、p6でフローが書いてある。そのフィードバックについてだが、バー ジョン1としてはいいと思うが、いくつかお聞きしたいのは、ここで閾値(しきいち)として湧水量毎秒3トン。これ前から出ていることである。あと、確か導水路の時は毎秒1トンだったと思うが、これは確定的な形で書かれているわけか。というのは、地質の調査というのは100%というのはあり得ないが、かなりの不確定要素を持って設定している。余裕を持った数値で設定しているのは理解しているが、そういう意味でやはり見直しというか、そういうフェーズをきちっと入れておく必要があると思う。普通、事前調査をお金かけてやれば精度が上がるかと言ったら上がらない。これは土木学会の本にも書いてある。やはり、程々でやって、施工しながらきちっと確認していくという、そういう位置付けが見えるような形で、ちゃんと精度を正しながら、できるだけ向上するようにやっていきますよというようなことが、普通の方にも見えるような形にしとく方がいいだろうというのがまず第一点である。 今、毎秒3トンもこれは余裕がある数字だったら、これはこれでいいのかもわからないが、全体としていろんな判断における閾値の見直しというのは、その都度必要になってくるだろうというのがまず一つである。


斜坑掘削後に地元に説明する機会必要

 (委員・西村和夫都立大理事)
それから、今この縦長のフロー図になっているが、斜坑があって先進坑があって、これは直列でいいと思う。この間に、やはり斜坑が終わった段階できちっと一度まとめて確認してっていうようなフェーズであるとか、地元の方に対しての説明の機会を作るとか、そういうそれぞれでレベルアップを考えているということが必要ではないか。それから環境に対して、もしくは施工における後々のフィードバックにも配慮しているというのが見えるような書き 方があった方がいいなというのが一つである。 それから先進坑と本坑というのは時間差があっても並行作業だと思う。そういう意味では、そういうのも斜坑と先進坑の直列と違って、ちょっとずれた並行作業になっているはずだが、そういうのもこれに全部書き込むわけじゃないが、そういう場合にはこういう対応をしますよというのが、解説書みたいなものがやはりなんか必要かなと思う。


観測の欠測率を入れて

 (委員・沖大幹東京大教授)
工事完了後の観測に関しては、継続していくということに書かれていて、頻度は述べられていないが、そこは原則として、関係者、流域の住民の皆さま、首長の方々が納得される範囲でということだと理解するので、それはもう私たちが申し上げるよりも、まさにそこのとこ ろをコミュニケートしていただくのがいいのかなと感じた。ただし、工事中なんかの常時観測というのが、常時という言葉が欠測なく観測するというのは実は難しいことから、欠測率は何%以下であるとか、内部的にやるのか外部に発注されるのかわからないが、そういう欠測はどのくらいに抑えるということも入れられるとより信頼性も上がるのではないかと思う。


水資源への影響の見解聞く仕組みの事例は

 (委員・森下祐一静岡大客員教授)
最後のページだが、水資源利用に影響が確認された場合には、公的な研究機関や専門家の方の見解をいただく仕組みを整えますと書いてあるが、このような方式を取って、うまく機能したという例をご存じであったら教えていただきたい。


北陸新幹線の例がある

 (沢田尚夫JR東海中央新幹線推進本部副本部長)
いくつかあると思っているが、受け売りで申し訳ないが、大東委員も参加されている北陸新幹線の例などがあるかと思う。(中池見湿地の)北陸新幹線のトンネルの水資源、生態系に与える影響についての委員会を作られていたので、そういう例が参考になるかと思っている。


事前に仕組みつくるべき

 (委員・森下祐一静岡大客員教授)
それで、これが工事後のところに書き込まれているのが、私はどうかなと思う。事前にそういう仕組みを作っておくということが必要ではないかと思っている。先ほど、モニタリングに方法論が必要だということも出ていたが、モニタリングで得られる個々のデータというのはあくまで事実としてのデータであるため、それを的確に評価できるような方法論が必要だと思う。第6回の会議では、中下流域で行った地下水や河川水の化学分析、酸素・水素同位体比分析、そして、不活性ガス分析など多くの有益なデータも集まった。それを束ねるように、中下流域でのある意味での地下水流動モデルのようなものにこれを当てはめて、有機的に結びつけるというか、作るということを私は前回の会議でも申し上げた。私の論点は工事後ではなく、事前のそれを作成しておくことが重要だと思っているが、いかがか。


事前の相談体制は流域と話し合う

 (沢田尚夫JR東海中央新幹線推進本部副本部長)
事前に検討の方法を整えていくというのはそうだと思っている。なかなか、出てから何か相談するとか、出てから対応するということではなく、事前に相談する体制などをある程度決めておくというのはそうかなと思っている。今、なかなかそういう状況ではないが、これから県の方であるとか、あるいは流域の方とその辺もきちんと話し合いできればと思っている。


工事前に具体策の記載を

 (委員・森下祐一静岡大客員教授)
分かった。そうであれば、工事後のところにこれを書くのではなく、工事前のところにもう少し具体的に書き込まれたら、工事に関する心配、あるいはちょっと言い方が悪いが、不信感というものが払拭されるのではないかと思う。ぜひ工事前に行うというふうにしていただけたらと思うが、いかがか。この書類では工事前のところには具体的なことは書いておらず、工事後のところに書き込まれているので、質問している。



 (座長・福岡捷二中央大教授)
ご検討していただきたい。


しっかり検討したい

 (沢田尚夫JR東海中央新幹線推進本部副本部長)
はい、それはモニタリングの大きな目的の一つが住民の方へのご不安の解消ということだと思っているのでそこはしっかり検討したいと思う。



 (委員・森下祐一静岡大客員教授)
分かった。


生態系の視点からの検討を指示

 (座長・福岡捷二中央大教授)
モニタリングについては、これまでも何回も議論してきて、足りないところも出てきたが、方向性としては、良いものができてきたというのは、皆さんお認めだと思う。ただ今日、このまとめ方とか、捉え方、それから地域との関連も含めていろいろまだまだ足りないところがあるため、引き続き検討していって、充実したものにしていただきたいと。その他に、ただ今の委員からお話があったように、地元と一緒に調査するとなると、静岡県との関係ももっと深化しておいて、そしてモニタリングをどうするかということも、一緒に検討していただきたい。また、先ほど、森下委員からお話しがあった、生態系の視点のモニタリングは、水資源だけでなく両方に関係しているので、そちらも考えていかなければならない。引き続き、生態系の視点のモニタリングを検討していただきたいと思うが、このことをJR東海に指示してよろしいか。


生態系への影響は国の専門家会議でも議論

 (座長・福岡捷二中央大教授)
では、そのようにさせていただく。生態系の観点からのモニタリングについては、今申し上げた通りだが、椹島より上流については、トンネル掘削による地下水の低下や河川流量の減少が生じ、生態系等への影響が想定されることになっている。モニタリングもそうだが、その影響の回避・軽減策等については、静岡県で行われている専門部会での議論を踏まえ、今後、専門家会議の場でも議論をしていく必要があるのではないかと思うが、皆さんどうお考えか。そういう方向でここの場でも、生態系に対する影響の回避・軽減策等についても議論をすることについて、やらせていただきたいと思うが、よろしいか。では、そういうことで進めさせていただきたいと思う。ありがとうございました。事務局は今の提案でよろしいか。


しっかりやる

 (江口秀二国土交通省鉄道局技術審議官)
今のご指摘の通りで、我々もそのように考えている。しっかりやる。


水資源の二つの論点総合的なまとめ必要

 (座長・福岡捷二中央大教授)
ありがとうございました。生態系の今後の進め方に関しては、事務局にて検討を進めていただきたいと思う。本専門家会議では、これまでに水資源に関する二つの論点であるトンネルによる大井川中流域の地下水への影響。そして、トンネル湧水の大井川への全量戻すための戻し方。この二つについて議論を行ってきた。今日もいろいろ議論があったが、それを含めて、今後、これまで議論してきた水資源に関する二つの論点を取りまとめていくに当たって、水収支モデルによる検討結果のみならず、河川流量や地下水などの実測データや、成分分析結果、ダムを含めた大井川での水利用の状況とこれまでの専門家会議で議論してきた事項を総括した上で、次回議論するリスクへの対応を含めて、利水者等に対してわかりやすい説明になることが、重要であると思う。
先ほど沖委員から比較的単純化されたモデルで評価をやっているということはその通りだと思うので、そこはしっかりと理解して、まとめる必要はあるが、同時に私が思っているのは、現地で今まで測られている地下水や河川表流水、その他のデータの持っている意味、それからこの大井川の安定した水システム、ダムや配水システムを含む水のコントロールのやり方。そういったものも今日の解析結果の非常に強いサポート役になると思っているので、それを含めて総合的にまとめるということが、すごく大事になってくると思うがいかがか。


河川管理者は水資源の安定供給に努めているか

 (委員・沖大幹東京大教授)
ありがとうございます。今委員おっしゃった通りだと思うが、改めて資料3の未定稿の概念図を拝見すると、神座地点における年19億トンの水が流れるのに対して、変動幅が年9億トン。つまり平均値の5割の変動というのは非常に大きい。もちろん、それは水利権量として並行して人間が取る方を優先しているので、川に残るのが逆に減ってしまうということかと思うが、これは先ほど、委員からご紹介があった通り、現在日本で4水系だけ渇水に伴う取水制限をしている中で、その一つが大井川であるというのも基本的にリスクが高いことを示している。
そういったこともあって、流域の住民の皆さんが心配されるのはよくわかるが、逆に言うと、トンネルを掘るのに、まだ手を着けていない段階で、既に頻繁に渇水が起こっているこの大井川について、住民の皆さんが非常に心配されているのに、将来、また起こった時に、かなり厳密な計算ができないとそれがトンネルの影響かどうかこれわからない。逆に言うと、今まで全然取水制限なんか水で困ったことないのにトンネル掘ったから増えました、これは分かりやすいが、そうではない時に、どうするんだという懸念がある。
これは、実はJR東海ではなく、国土交通省側の事務局にお願いがあるが、こういう非常に今、県が水資源に対して脆弱な状況にあるのに対して、県、あるいは河川管理者はどういうふうに水資源の安定供給をしようと試みようとしているのか、計画があるのかないのかといったことを少しおっしゃっていただかないと、トンネル以外にトンネルのリスク、ここで見ると、例えば年間の神座地点の変動が標準偏差1で年9億トンあるわけである。それに対して、先ほど、県外流出は年0.05億トンとか年0.03億トンとか、もう非常に微々たる値である。それを問題視するのであれば、年によって何億トンも変動するようなこの状況をいかに治めて、住民が安定して水を使えるようにするという努力を静岡県はしているのかということに関して情報を集めていただけると、リスクの議論というのはまっとうにできるのではないかと考える。


水利用の仕組みも含め中間取りまとめを

 (座長・福岡捷二中央大教授)
沖委員の言われたのは静岡県の中で水資源の安全性がどのように確保されているのか、安定した水資源量になっているのかについて調べておく必要があると述べられたと私は解釈した。事務局は、沖委員の提起した論点を調べ、整理していただきたい。ただいまの議論を踏まえ、現在の水資源利用の仕組みを含めて、本専門家会議の検討結果を中間取りまとめとして作成するように事務局に指示したいと思うが、いかがか。それでは事務局よろしいでしょうか。ありがとうございました。最後に議事(4)今後の進め方に入りたい。


利水者に分かりやすい説明が重要

 (江口秀二国土交通省鉄道局技術審議官)※資料6の説明
今後の進め方であるが、資料6をご覧いただきたい。これまで第1回会議からどんなことを議論してきたかを記述している。p2の次回の第9回であるが、今日議論があったリスク対策と他にもいろいろ宿題もあったので、そういったものへの回答も含めて議論を行っていきたいと思っている。それから、先ほど座長からご指示いただいたように、これまで議論してきた水資源に関する二つの論点をこれから取りまとめていくわけであるが、専門家会議では本日議論いただいたイメージ図や水収支モデルによる検討結果のみならず、河川流量や地下水などの実測データ等も示されており、また地下水の成分分析結果なども示されている。さらには、今、沖委員からお話があったダムを含めた大井川水利用の状況等も示されている。このような、これまでの専門家会議で議論されたことを総括した上で、次回議論するリスクへの対応も含めて利水者等に対して、分かりやすい説明ができるようにすることが我々事務局としても重要と思っているので、そういった観点から今後、取りまとめさせていただきたいと思っている。
最後に沖委員からもあったが、そもそも大井川全体の水がどうなっているのか、水資源政策、この辺についても静岡県に確認しながらこの資料の取りまとめの中でも触れられればと思っている。次回の開催日については、今後の資料作成の状況や委員の皆様のご都合も踏まえて決めさせていただきたいと思うので、詳細は追って事務局よりお知らせしたいと思う。


いい茶0
あなたの静岡新聞 アプリ
地域再生大賞