山梨から湧水戻し 時差に課題 JR案に指摘【大井川とリニア】

 リニア中央新幹線工事に伴う大井川の流量減少問題を巡り、JR東海が2月28日の国土交通省専門家会議で、トンネル湧水の県外流出対策として説明した山梨県内の湧水を大井川に戻す案は、戻す時期が中下流域の減水時期とずれたり、戻す湧水量の確保に長期間かかったりする課題が指摘されている。静岡県が求める「トンネル湧水の全量戻し」の代わりになるのかは不透明だ。

山梨県内で発生するトンネル湧水をポンプアップイメージ図
山梨県内で発生するトンネル湧水をポンプアップイメージ図

 静岡県内のトンネル区間から出る湧水は先進坑(本坑を掘る前に掘削する小さめのトンネル)が貫通するまでの間、山梨県の富士川水系と長野県の天竜川水系に流出する。
 このうち山梨県側への流出分の対策としてJRは、貫通後に山梨県内のトンネルで発生する湧水を静岡県内のトンネルを経由して大井川に戻す案を示した。静岡、山梨両県への説明や相談はこれからだという。
 国交省会議で大東憲二委員(大同大教授)は「時間差の問題がある」と指摘。地中の水を抜いてトンネル湧水が静岡県外に流出するのは貫通前で、湧水を大井川に戻すのは貫通後になる。このため、湧水を戻すのは流域に影響が出た後になる可能性がある。
 貫通後はトンネルをコンクリートや防水シートで覆うため、山梨県内で発生する湧水量が少なくなるとみられ、流出分と同じ湧水量の確保に時間がかかることも想定される。
 静岡県が「少なめに見積もられている」と指摘しているJRの試算によると、山梨側への流出量は300万トンで、小学校のプール約1万個分に相当する。JRは先進坑の途中にポンプアップする水を一時的にためる釜場(貯水場所)を整備するが、標準的な釜場の大きさはプール約2個分にすぎない。突発湧水で短期間に大量に流出する水の一部しかためられない。
 国交省会議で福岡捷二座長(中央大教授)は「よく考えてもらった」とJR案を評価したが、静岡県の担当者は1日の取材に「現実的かどうかはこれからの話だ」と述べ、対策の効果に懐疑的だ。山梨県リニア未来創造・推進課は「JRがどのようなことを考えているのか分からない。提案があれば聞いて検討する」とした。

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