トンネル湧水県外流出「影響なし断言できず」 リニア専門家会議
リニア中央新幹線工事に伴う大井川の流量減少問題を議論する国土交通省の専門家会議(座長・福岡捷二中央大教授)が7日、同省で開かれ、工事中に南アルプストンネル内に湧き出した水が県外に流出する問題を中心に議論した。JR東海は湧水を導水路トンネルで川に戻すことで中下流域の流量が維持されると説明。福岡座長は「計算結果としては流量が維持される」とまとめようとしたが、JRの条件設定などについて批判や注文が相次ぎ、同省の江口秀二技術審議官も会議後、「(流量に)影響がないと断言はできない」と現時点の見解を示した。
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JRはトンネルをコンクリートで覆わない「素掘り」で掘削するなど実際にはあり得ない条件設定で流量を予測。県外流出の減少分よりも導水路トンネル出口の椹島(さわらじま)の河川流量増加分が多くなるため影響がないとした。素掘りで掘削したと想定すると、導水路トンネルから下流側に流れるトンネル湧水量が過大に見積もられる。JRは上流域の自然環境保全の観点から湧水量を低減する方針も示している。
JRの説明に対し、一部の委員が「現実的ではない」などと反論。森下祐一委員(静岡大客員教授)は「トンネルを防水シートで覆えば湧水量は少なくなるかもしれない」と指摘した。
JRが静岡市の採用した予測方法で試算した予測値は年間を通して毎日、平均的な降水量があった場合を想定しており、渇水時に流量が減らないかどうか今回の予測では示さなかった。
会議を傍聴した難波喬司副知事は会議後の記者会見で、椹島から下流側に湧出する地下水が減るとして「中下流域で河川流量が維持されるというのは誤りだ」と批判した。
流域10市町の首長が「前提条件付きで誤解を招く」として改善を求めていた座長コメントは改善されなかった。